この記事の途中に、以下の記事の引用を含んでいます。
What the US TikTok takeover is revealing about new forms of censorship
静かなる検閲の時代へ——TikTokアメリカ体制の変化が告げるもの
昨今のテクノロジーと社会政治の接点で、必ず話題にのぼるのがSNSにおける「言論の自由」とその限界です。
TikTokのアメリカ部門、新アルゴリズム導入をめぐる動きは、これまでの「検閲」観に根本的な問いを突き付けています。
「この記事では、言葉そのものを禁じる従来型の検閲ではなく、『可視性=リーチ』のコントロールこそが今後の言論統制の主戦場となること」が示されています。
情報時代の「検閲」は、かつての本や映画の差し押さえ、活動家の拘束といった直接的なものだけに留まりません。
アルゴリズムが目にするコンテンツをさりげなく選別し、「見える/見えない」を仕分けている——本稿が最も警鐘を鳴らすのはまさにその点です。
アメリカ版TikTok、新体制の本質と疑念——引用と要点紹介
記事によれば、米国におけるTikTokの運営権は、オラクルなど米大手IT企業主導の合弁会社(TikTok USDS)へと移りました。
バイトダンス(中国本社)は19.9%のシェアのみを保持し、「米国ユーザーデータ保護」「中国からの政治干渉防止」を名目とした一大再編です。
しかし、早くもユーザーらは
“US TikTok users have reported a number of suspicious malfunctions: videos covering controversial topics, such as the killing of Alex Pretti by a federal agent remaining under review; newly posted videos recording surprisingly low-view metrics; and allegations that it is impossible to post messages containing keywords such as “Epstein”.”
と、特定トピックを含む動画が審査中のまま停滞、投稿したはずの動画が妙に閲覧数が伸びない、「Epstein」といった言葉での投稿ができないなど不自然な現象が多発。
カリフォルニア州知事もアルゴリズム調査を求める事態となっています。
一方でTikTok USDS側は「オラクルのデータセンター障害がシステム全体に波及した」と申し開きをしていますが、疑念が完全に消えたわけではありません。
さらに記事は、米国現政権や保守タブロイド勢、オラクルのラリー・エリソン氏らの政治的人脈を指摘しつつ、その影響範囲の拡大に警鐘を鳴らします。
“Trump has desired influence over the platform which, in recent years, has become a key conduit for political propaganda, and which Trump himself credited for helping his surprising 2024 election victory.”
“rightwing billionaires…have established a pervasive grip over both traditional and online media, effectively curtailing the public’s freedom of speech in ways that are often invisible, hence all the more insidious.”
トランプ前大統領をはじめとする保守系資本のメディア支配が、もはやテレビや新聞だけでなくSNSアルゴリズム経由でも「見えづらい検閲」=リーチ統制に波及している点に注目が集まっています。
アルゴリズム=新しい検閲権力——なぜこの問題が深刻なのか?
従来型の「言論弾圧」は、政府や事業者が直接「これを言ってはいけない」「出版不可」と指示するものでした。
SNS時代の「アルゴリズム検閲」は、それとは異なり「何を投稿できるか」ではなく「誰が、どのコンテンツを、どのくらい目にするか」をほとんどブラックボックスの「重み付け」や「表示優先度」の中でサイレントにコントロールします。
例えば記事では、Facebookが2018年頃から導入した「meaningful social interaction framework」——すなわち「怒りのリアクションに高いウェイトを置き、ニュースや公共性の高い発信を逆に下位表示」した実験を紹介しています。
この小さなアルゴリズムの変更が、社会全体に「怒り偏重」「分断促進」を呼び寄せたことは、多くの研究でも指摘されており、結果的に「表現の自由はあるが、発信者の可視性はない」というねじれた現実を生みました。
さらにTikTokの場合、ローカルな米国データだけでアルゴリズムを再学習することになれば、世界の他地域で共有されていた多様な文脈が排除され、「米国内の政治や価値観に最適化」された表示傾向が肥大化するリスクがあります。
これは同時に、「マイノリティの視点」「国際的な連帯」などがますます『見えなくなる』ことを意味します。
実際、パレスチナ人ジャーナリストBisan Owda氏は、今回の体制移行でTikTokから永久追放されたと報告しており、“個々のアカウント締め出し”が現実に起こっています。
私の考察:アルゴリズムによる「パブリック・スフィア分断」の危うさ
この動向をどう受け止めればよいのでしょうか。
私自身は、SNSアルゴリズムが社会的な合意形成や少数派の声を可視化する力を持つ一方、その「プラットフォーム・ベクトル」が政治的・資本的統制下に置かれる場合、「情報の生態系」は急速に偏ると懸念します。
特に「可視性」こそが新たな公共圏での発言力である時代、いかなる演算ロジックが用いられているか、どのパラメータがどんな影響を及ぼすかは、本来透明性と説明責任のもとで社会的監視・議論されるべきです。
現実には、多国籍巨大資本がブラックボックス化したアルゴリズムに全情報流通を委ね、一般ユーザーは「バズる/消える」現象を原因不明のまま受け入れるしかない——この状況は民主主義の基盤そのものへの静かな侵食ではないでしょうか。
さらに、SNSプラットフォームが政治プロパガンダや選挙工作の新たな前線となったことを考えると、「どの意見・どの運動がどこまで波及するか」を握る主体の顔触れ・バランスは社会全体の方向性をまで左右しかねません。
個別の投稿審査やバン以上に、日々「何が目に留まるか」その積み重ねによる認識誘導——まさに”insidious(陰湿)”な検閲の時代なのです。
読者への示唆:「何が見え、何が消されているのか?」デジタル時代のリテラシーを考え直す
本記事を通じて最も重要なのは、「情報の自由市場」はもはや自律的に成り立っているのではなく、アルゴリズムという『見えない手』によって常に再編され続けている現実を自覚することです。
単に「好きなものを好きなように発信できる」ことと、「その発信が社会的インパクトを持ちうる回路が開かれていること」は全く異質の問題になりました。
私たちができることとして
– アルゴリズムの透明性や説明責任を求める市民的対話の重視
– ソーシャルメディア運用企業の構造的利益相反や政治的関与に注視する習慣
– 一つの情報源やプラットフォームに依存しない多様な情報摂取ルートの確保
を心がけたいと思います。
「言論統制」という言葉の時代遅れともとれるイメージの陰で、”可視性のコントロール”こそが、2020年代後半の真に警戒すべき自由侵害のテーマである――この警句を胸に刻むべきタイミングに私たちは立たされています。
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