この記事の途中に、以下の記事の引用を含んでいます。
ACX 2025 prediction contest retrospective
あの予測大会の結果が明らかに!何が予測を分けたのか
予測市場やファクトフルネス、AIサイエンスがブームとなるなか、2025年も大規模な予測コンテストが世界中で開催されました。
この記事は、「ACX 2025 prediction contest」の参加者が、自らのスコア・失敗例・成功例を冷静に検証した内容になっています。
専門的な予測技術や“勝つ”ための思考回路。
なぜ一部の予測は大はずれし、なぜ別の予測は的中したのか。
予測という活動の奥深さが、具体的なデータとともに明かされています。
本稿では単なる結果報告に留まらず、その意味や、読者が活用できる教訓まで論じてみます。
「Brier score」「コミュニティの知恵」…プロ予測屋の目を通して
まず、筆者が予測精度の指標として用いたのが「average blind Brier score」。
これは二値予測問題でよく使われる精度指標であり、数値が0に近いほど優秀な予測とされます。
“My preferred metric of forecasting performance is the average blind Brier score, since this is what’s popularly used as a reference for comparison across forecasting contexts.”
“In the acx 2025 contest, I achieved a Brier score of 0.21 – the same as in the 2024 edition!”
つまり、筆者のBrierスコアは0.21で、前年と同じ水準でした。
表を読む限り、Vox 2025コンテストではさらに優秀な0.12という実績もおさめています。
特筆すべきは、ACX 2025の「コミュニティ集計予測」(つまり多人数の平均予測)が0.17という、筆者自身をも上回る好成績だった点です。
“The community aggregate got a very impressive Brier score of 0.17.”
この事実が意味するのは、個々人の直感や知識が集まったとき、時にプロ個人をも凌駕する“集合知”が成立しうるということです。
この現象は、予測市場や「賢い群衆の力」の現代的証左といえるでしょう。
どこで外し、どこで当てた?鍵となる思考パターン
予測で「外した」例を筆者は四つ挙げています。なぜ間違うのか、分析は刺激的です。
たとえば:
“Will the poverty rate in Argentina be lower in the first half of 2025 compared to the second half of 2023? I forecast on the wrong thing. … But this question was really about ‘is it possible for the poverty index to move quickly from one reading to the next?’ and that both is possible and happened.”
ここで筆者は、「一年で人々の生活水準が劇的に変わることは稀」という自分の前提が、実は問われている問い(短期間の指数の急変はあるか)とはズレていた、と自己反省しています。
また、
“Will Elon Musk cease to be an advisor to Donald Trump and face public criticism from Donald Trump before 2026? I knew Trump was volatile. I did not know he was that volatile.”
このように、対象人物の反復的な行動パターンを見誤った点も挙げられます。
逆に「当てた」問題については、むしろ自分の冷静な論理(一年で急激な変化は稀/テクノロジー採用は過大評価されがち)が功を奏しています。
“On December 31, 2025, will Google, Meta, Amazon, Tesla, or X accept crypto as a payment? This seemed like a ridiculous idea to me, and I’m not sure why the community was so bullish on it. … That does not happen in just a year.”
つまり、世間のトレンド感や期待先行のバイアスを疑い、「具体的な確率計算」を持ち込むことが、場合によってはコミュニティを上回る判断につながる、という教訓が読み取れます。
予測精度と“問題理解力”の関係――データを超えた勝負
これらの反省や成功例から、予測分野の難しさと奥深さが浮かび上がります。
まず、Brierスコア上は「当てた・外した」が一目でわかるものの、「なぜその予測を外したのか?」には複数のレイヤーが存在することが示唆されています。
たとえば、
– 問いの本質や背景を読み違える(アルゼンチンの例)
– 予測対象の性質(トランプの行動、労働官庁の制度変化等)におけるヒューリスティクスの有効性
– 集合知バイアス(仮想通貨期待等)に自分は取り込まれなかった点
「予測がうまい」とされる人でも、問いそのものの意味、前提の理解、さらに現実世界の偶発性を正しく見積もる技術――これら全てが揃わなければ、高精度の予測はできないという現実があります。
この点は、AIによる定量予測やオープンな予測市場の盛り上がりと同様に、人間が「問いの意図」や現実的な“実行可能性”を見失いやすいことの証左と言えるでしょう。
また、集合知は基本的にはパワフルですが、それが「楽観/悲観バイアス」「新奇性バイアス」に飲み込まれると集団で誤る場合もしばしば見られます。
自分なりの考察——予測勝者となるために
著者の分析には多く学びが詰まっていますが、私が特に重要だと考えるのは以下のポイントです。
1. 問題を正しく理解・定義する力
正確なデータや前例があっても、そもそも「問われていること」が何かを取り違えれば、導く結論は誤ったものになります。
これはAIやプログラムによる自動予測が“なぜ難しいか”にも直結します。
背景知識の量よりも、「どこまで問題の文脈や意図を正確に把握できるか」が分水嶺です。
2. 集団の意見と自分の見通しをどう扱うか
コミュニティの平均値に流されがちですが、場合によっては冷静な論理と確率論的推論が重要になるケースもあります。
筆者のように「仮想通貨の導入はそんなに急で起きない」と冷静に予測できた背景には、「一般的なトレンド過信」を自覚的に避けていることが大きいでしょう。
一方、自分の偏見や知らずうちのバイアスに気づけないと、外れやすくもなります(例:Joe Roganの番組出演者を過小評価した件)。
3. 予測を“自分ごと”として反省し続ける姿勢
ACXコンテストの筆者のように、毎回自分のミスを公開・分析し、なぜ外したかを問い続ける態度は極めて実践的です。
「なぜこの問いを外したのか?」を恥じずに反省することで、次の予測が“運任せ”ではなくなっていくでしょう。
まとめ —— 予測とは「問いを読む」総合知
結局、「予測精度」と聞くとデータや技術の差に目が行きがちですが、実は“問いの意味解釈力”が思いのほか重要であることが見えてきます。
専門家であっても取り違える場合がある。
逆に、多人数の集合知にも限界や盲点は存在する。
予測という営みは「未来を当てる」ことだけでなく、「今の自分の思い込み・論理の限界」を洗い出す絶好のトレーニングの場といえるでしょう。
「プロの予測屋」も、はずれたら徹底的に問い直す。
皆さんも、友人同士で社会問題や時事の動向を「どうなる?」と予測し合ってみてはいかがでしょうか。
それは“勘”の向上だけでなく、より良い意思決定やクリティカルシンキング能力の向上にも通じているはずです。
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