この記事の途中に、以下の記事の引用を含んでいます。
Teen gamer who ‘performed miracles’ set to become first millennial saint
斬新すぎる聖人!ゲーム好きな普通の少年がカトリック史を変えた理由とは
話題の中心は、ロンドン生まれの青年・カルロ・アクティスが「史上初のミレニアル世代の聖人」として2025年に認定されたニュースです。
この出来事は伝統的なカトリックの枠組みを揺るがすばかりでなく、ネット時代における信仰の意義そのものを問い直す“事件”でもあります。
記事によれば、彼は幼児期にロンドンのチェルシー地区で洗礼を受けた後、イタリアに移住。
若くして白血病で他界するまでの短い生涯ながら、インターネットを通じて“奇跡”を公表し、カトリック教義を広めてきたそうです。
掲げられた称号は「God’s influencer(神のインフルエンサー)」――まさに現代ならではのネーミングと言えるでしょう。
「神のインフルエンサー」誕生の背景を紐解く
記事の中でも際立つのは、「Carlo Acutis created websites documenting ‘miracles’ as a means of spreading Catholic teaching, leading some to nickname him God’s influencer.」
つまり、カルロは“奇跡”を丁寧にまとめたウェブサイトを作成し、自分なりの形でカトリック信仰を発信し続けたことが記されています。
また、「While some who knew Carlo Acutis say he did not appear to be especially devout, as a teenager he did create a website – pages of which are now framed at the church in Chelsea – in which miracles were documented.」という指摘も興味深いものです。
要するに、周囲の人からは特別に信仰熱心な性格とは見られていなかったが、「ウェブサイト制作」という行動で新時代の聖人像を体現したのです。
彼の死後、母親であるアントニア・サルザーノ氏が息子の聖人認定のため世界中の教会を回ったこと、また『The first miracle, he did the day of the funeral』などの証言も強い印象を残します。
初めての奇跡は「自身の葬儀の日。乳がんの女性がカルロに祈り、予定されていた化学療法を受ける前にがんが消失した」というものです。
“奇跡”のデジタルアーカイブとミレニアル聖人の意義
「ゲーム好きな普通のティーンエイジャー」だったカルロが、なぜわれわれの時代の信仰リーダーとなり得たのでしょうか。
最大のポイントは、インターネット世代特有の“発信力”と“ネットワーク形成”にあります。
20世紀マンガ『聖☆おにいさん』で描かれるような、“現代にも身近な宗教キャラクター”が現実世界にも登場した――と想像すると、従来の“聖人=厳しい苦行僧”というイメージが刷新されます。
記事では「More than a million people are estimated to have made a pilgrimage to the Italian hilltop town of Assisi where Carlo’s body lies, preserved in wax.」とあり、カルロの保存された遺体がイタリア・アッシジで聖地巡礼の対象となっていることも触れられています。
さらに、ロンドンの教会でも「To the side of the church an old confession booth has been converted into a shrine to him. In it, a relic holder contains a single strand of Carlo’s hair.」と、“聖遺物”が崇拝されているのです。
こうした“実体験をベースにした奇跡のデジタルアーカイブ”は、単なる歴史の物語ではなく、若い世代にとってリアルタイム性を持って受け継がれる“生きた信仰体験”へと進化しています。
私見:「普通の若者」が“普通じゃない”インパクトを持つ時代
メディアや教会の公式発表では「奇跡」が絶対条件とされているものの、21世紀に生きる私たちにとって、この“奇跡”という概念そのものも再考の余地があります。
科学的には説明のつかない現象を“奇跡”と呼ぶのか、あるいは「希望」や「連帯感」が生み出す心理的な力――
デジタル世代のカルロは、「技術×信仰」が起こす新しい社会現象を象徴しているのかもしれません。
また、「神のインフルエンサー」という異名は、SNS時代における“影響者”の位置づけが宗教の世界にも入り込んできた象徴とも言えます。
YouTuberやインスタグラマーに憧れる現代のティーンにとって、「信仰の情報発信者」が“自分ごと”として認識され始めているのです。
まとめ:聖人像のアップデートが示す、これからの信仰と社会
この記事が日本の読者に与える気付きは、“特別な人だけが聖人になれる”という時代は終わりを告げた、ということではないでしょうか。
カルロ・アクティスの物語は、他者の苦しみに寄り添い、ネット技術を活かして“善”を発信するという、新しい生き方・信仰の形を提示しています。
そして、「私たち一人ひとりも、現代社会の課題や身近な悩みに“新しいやり方”で答えられるのではないか?」
そんな視点を“神のインフルエンサー”が教えてくれているように思います。
時代の変化と共に、信仰や善意のあり方も進化している――
そのこと自体が、2025年を生きる私たちへの大きな希望ではないでしょうか。
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