いま注目の「ガラスウナギ」密漁小説が暗示する、メイン州のリアルな素顔とは

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この記事の途中に、以下の記事の引用を含んでいます。
M aine’s black market for baby eels is spawning a crime-thriller subgenre


サスペンスから始まる「ガラスウナギ」— 普通じゃないメインの物語

「メイン州で起きているウナギの密漁事件が、犯罪サスペンス小説ジャンルを生み出している」。
そんな一文に、思わず目が止まった方も多いでしょう。
今回ご紹介するのは、Josh Viertelとその父Jack Viertelが共著で生み出した『The Glass Eel』という小説を軸に、メイン州のガラスウナギ(エルヴァー)漁業の裏側と、その社会的意義に迫る記事です。
表向きは観光名所やロブスターのイメージが強いメイン州ですが、その陰で世界規模の闇市場と複雑な人間ドラマが渦巻いていることを、作品と現実の両面から掘り下げていきます。


「小さなウナギ」が生んだ大きな犯罪・文学ブーム

まず記事で紹介されているのが、ニューヨークの食と農業活動家Josh Viertelが「メイン州での違法エルヴァー(ガラスウナギ)漁業」のニュースに惹きつけられ、 その後父でブロードウェイプロデューサーのJack Viertelを誘ってサスペンス小説『The Glass Eel』を執筆した、という経緯です。

“The Maine coast on its own is so extraordinary … But then there is this little fishery that is made-for-TV drama already in real life. And all of these characters are real people,” said Viertel, a food and farming activist based in New York. “There’s so much in there that’s rich and begs to be written about.”

この引用でも分かる通り、現実のガラスウナギ漁は、すでにドラマのような舞台。
違法漁師や武装護衛まで登場する状況に、作者は「これは書かないわけにいかないほど豊かな題材だ」と語っています。

加えて、同書が出版された2020年代には、「犯罪と漁業」を題材とする書籍やNetflixドラマも複数登場しているのが実態です。
たとえば記者Ellen Ruppel Shellの『Slippery Beast: A True Crime Natural History, with Eels』や、テック企業Netflixによる新作「Bodkin」も同様にエルヴァー密輸を扱っています。
単なる「ロブスターと観光地の州」から、メイン州は「隠された犯罪の舞台」へ。
今、読者の興味そのものが大きく変わりつつあると記事は指摘します。


メイン州エルヴァー密漁の深層—その構造を解説

なぜガラスウナギ(エルヴァー)は、ここまで大規模な闇市場を生み出すのでしょうか。
記事中には、メイン州で捕れるエルヴァーが「1ポンド2,000ドル」という非常に高価な取り引きを生み出している実態が明かされています。

“A pound of elvers can earn a licensed fishermen $2,000 in Maine … they are sold to dealers and most often shipped to east Asia, where they are raised to maturity, then used as food in meals like sushi.”

ポイントは、エルヴァーが世界中のウナギ消費(特に日本・中国・韓国の寿司文化)に直結していること。
現在では北米で商業漁獲が合法な州はほぼメインとサウスカロライナのみ。
野生個体群の減少もあり、極めて厳しい漁獲制限(例:毎年の捕獲クォータ、ライセンス制限)が課されています。

闇市場が生まれる要因は、こうした資源の希少性とグローバルな需要に由来し、規制強化→密漁ブーム→武装化・組織化という典型的な“ブラックマーケット”の拡大パターンです。
2010年代には少なくとも「2,100万ドル以上もの密輸取引」「少なくとも21人の大規模摘発」が記録され、一種の犯罪戦争(記事では“The Elver Wars”と称する)に発展しました。
小説のモチーフとしては、まるで麻薬カルテルや違法武器市場にも似た、リアリティあふれる社会の縮図なのです。


ロブスターだけじゃない…「隠し味」としての現実主義が支持を集める理由

記事の興味深い点は、こうしたサスペンス小説やノンフィクションのジャンルが、「従来のメイン州イメージ」に一石を投じている点です。

“More popular books are examining Maine in a way that’s really thoughtful … as opposed to the Hallmark movie version of a lobsterman being like a fireman – a hunky and gruff character that people pine after that ends up with the female lead at the end of the book.”

本屋店主の発言からも感じられるのは、観光ポスターの中の“ロブスター漁師”や“灯台守”ではなく、現代の地域社会が抱える問題・多様な現実への関心が高まっているという潮流です。

小説『The Glass Eel』が描くのもまさにその部分。
例えば——
– 州の政治家や元知事といった“大人側”の思惑
– 土地の先住部族(Passamaquoddy族)の資源管理と葛藤
– 若者の貧困やドラッグ問題、狭い雇用環境
– コミュニティに潜る密輸組織の暗躍

など、「観光ポスターに描かれないリアルで多面的なメイン」がテーマとなっています。
日本で言えば、瀬戸内海の小さな港町や、離島のサザエ密猟事件といった、日常の裏に隠れたドラマを想像するとイメージしやすいでしょう。

ネットとグローバリゼーションが当たり前の今、こうした“hidden-in-plain-sight”(誰もが知っているはずなのに語られない)物語が注目されるのも、ごく自然な流れだと感じます。


伝統・自然・闇市場…ウナギ問題が突きつける社会的示唆

個人的に強く印象に残ったのは、ガラスウナギ密漁が持つ多重構造です。
単なる「魚の密漁」とは、決して片付けられません。

まず、北米のエルヴァー資源こそが日本やアジアのウナギ料理文化を下支えしているという、私たちの生活と密接に結びついた問題
安価な回転寿司チェーンやスーパーに並ぶウナギ、その裏には数千キロも移動し、山を越え組織犯罪ネットワークを潜り抜ける「ペットボトルサイズの赤ちゃんウナギ」がいるということ。

さらに、地元コミュニティの分断、高騰する国際価格、市場規制と新たな管理ルール、地域の若者の進路問題、先住民の伝統継承など、一見小さな「川魚のバトル」のようでいて、実は現代社会の多くの論点と直結した現象です。

小説やノンフィクション作品がこの問題を描くことで、読者は「ロマンチックな漁村」の裏側にある現実を知り、自分自身の消費=環境・社会・文化への影響を想像できるようになります。


“見えていなかった現実”を物語に──今こそ「問い」を持ち帰ろう

メイン州のガラスウナギ犯罪サスペンスがジャンルとして成立し始めた事の裏に、
「私たちはどれほど、一つの土地や産業の“美しい部分”だけを消費してきたのか?」
「取り締まりや規制の強化は、常に闇市場を生むだけなのか?」
「食のグローバル化とラクして得たい“安価な贅沢”は、“知らない誰か”にどれだけ過酷な現実を強いているのか?」

そんな問いが見え隠れしています。

単なるサスペンスやミステリー小説として楽しむことももちろんできますが、今このタイミングで「ガラスウナギ」に光が当たり、文学や映像作品を通じて議論喚起が広がっている点は、私たち消費者や地域社会の意識変化そのものではないでしょうか。

この記事で得た「土地に隠れた過酷さ」や「世界のどこかのリアルなドラマへの共感力」は、今後の消費行動や社会への眼差しを少しだけ豊かにしてくれるはずです。


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