この記事の途中に、以下の記事の引用を含んでいます。
You Need to Ditch VS Code
VS Code神話に一石を投じる挑戦状
当たり前のように使われているVisual Studio Code(VS Code)。
いまやフロントエンドからバックエンド、データサイエンスまで、扱えぬ言語はなく、拡張機能も豊富、どこでも話題に上るエディタです。
そんなVS Codeに、「今すぐ手放すべきだ」という挑戦的なメッセージを発したのが、J.R. Swab氏によるYou Need to Ditch VS Codeという記事。
このブログでは、最近ますます見落とされがちな「ターミナルベースの開発」こそが、プログラマーとして本質的に成長するために不可欠だと主張しています。
VS Codeの利便性が、逆にあなたを「思考停止したコーダー」に貶めている…この視点、果たしてどこまで現実に即しているのでしょうか。
「便利さ」に潜む落とし穴 ― 記事の主張とその引用
まず筆者は、VS Codeの最大の売りは「便利さ」だが、その便利さこそが開発者としての成長を妨げていると述べています。
“VS Code’s biggest selling point is convenience. This is exactly what’s hurting your development as a programmer. When you rely on VS Code to:
Manage your Git workflow
Handle file operations
Auto-complete your code
Format your documents
Run your tests
Debug your applicationsYou’re letting the IDE think for you instead of building a deep understanding of these fundamental operations.”
VS Codeは、Git管理、ファイル操作、コードの自動補完、フォーマット、テスト、デバッグ…あらゆるものをGUIで肩代わりしてくれます。
ですが、そうやってIDEに“考える”ことを委ねているうちに、「根底の技術的理解」を身につける機会を失う、と著者は警鐘を鳴らします。
また、実体験に基づき以下のように言い切っています。
“I’ve seen countless junior developers freeze when their IDE isn’t available or when they need to work on a remote server. They know how to code in VS Code, but they don’t know how to code.”
GUIベースのIDEに依存しすぎた若手が、VS Codeが利用できない緊急時やリモート開発環境では「固まってしまう」例を何度も見てきた―
まさに「VS Codeでのコーディングはできるが、本質的なコーディングはできない」ということです。
不自由こそ、最強の学びの土壌
著者が主張する本当の論点、それは「手触り感ある技術理解」の大切さです。
GUIで抽象化された操作ではなく、ターミナルで基本コマンドを直打ちし、一つひとつのプロセスを“自分の手と頭”で理解していく…この記事ではこの姿勢が強調されています。
“When you work directly in the terminal, you’re forced to understand what’s actually happening when you:
Stage and commit changes in Git
Navigate and manipulate your file system
Build your tools to fit your exact needs
Debug your code without visual breakpoints
Write code without constant auto-completion”
直感的なインターフェースは、作業効率を大幅に高めてくれます。
しかし、それに頼りきると、エラーや障害が発生したときに「なぜ」そうなるのかを本質的に理解できない。
著者はむしろ「不便さ」や「作業の重さ」こそが技術習得の原動力であり、長期的にはどんな状況でも通用する“移植性の高いスキル”につながると語ります。
これは筆者の実体験にもとづく洞察です。
筆者自身、数年端末上の開発に没頭し、その後VS Codeにしばらく乗り換え、最後はターミナル開発に回帰したことで、「どこでも動ける柔軟なエンジニア」になったそうです。
実社会が突きつける「ターミナルスキル」の必要性
記事で強調されているもう一つのポイントは、現実の開発現場、とくに本番ライクな状況にどう対処するか、という具体性。
例えば下記のような実務シナリオ:
- 緊急時の本番サーバーホットフィックス
- ssh越しのリモートデバッグ
- dockerやk8s等、ミニマルな環境下でのコーディング
- リソースが限られたIoTデバイス開発
こうした状況下では、VS Codeの「便利なクリックで済む操作」は一切通用しません。
むしろ、shellやvim、gitコマンドなど“素の技術”を駆使して乗り切る力が必要になります。
実際、クラウドベースの開発現場ではコンテナやSSH越しにサクサク対応できるエンジニアこそが、本番障害への緊急対応で頼りにされます。
逆に、GUIだけに頼っていた人は何もできず固まってしまう。
「VS Code “だけ” で完結する世界」は、極めて限定的で脆いものだという警鐘は、現実として納得できる意見です。
便利さは「成長の敵」か ― 私の考察と批判的視点
ここまでの話、現場経験者なら多くの部分でうなずけるはずです。
ですが、VS Codeや他のGUI IDEを全面否定する必要が本当にあるのでしょうか?
両者の“いいとこ取り”は可能か
まず、「GUIが親切すぎることで基礎的な知識や手触りを得るチャンスを奪う」という主張には一理あります。
特に初学者やジュニア層は、ともすれば“仕組み”を理解しないまま流れ作業になりがちです。
しかし、経験者・中級以上の開発者であれば、GUIによる効率化とターミナル操作によるスキルアップとの「バランスの取り方」が大切です。
例えば、
- 普段のコーディングはVS Codeを活用しつつ
- Gitやデプロイ、CI/CDは必ずコマンドベースで扱う
- 定期的にvimやtmux環境にも身を置いてみる
- 重大な障害やトラブルシュート経験を意識的に積む
こうした“いいとこ取り”のハイブリッド運用こそ、最も実践的で現代的なITスキル習得の道だと私は考えます。
「VS Code=魔法の箱」という誤解
もう一点注意すべきなのは、「VS Code→無思考」「ターミナル→真の理解」という単純な二項対立です。
VS Codeでも、裏でどんなgitコマンドやLSP(Language Server Protocol)が動いているか可視化・学習できますし、ターミナル上でも「黒魔術的にコマンドを暗記しているだけ」では本質的な理解にはつながりません。
結局のところ、どんな環境でも「なぜ?どうして?」を自分から掘り下げるインプットが不可欠です。
生産性か習得コストか、永遠のジレンマ
企業や現場の観点でいえば、「とにかく素早く機能を出す」ことが求められる場面がしばしばあります。
このような場合、あえて習得コストの高いツールや原始的なやり方だけに固執するのは現実的ではありません。
しかし一方で、長くこの道で生きていくつもりなら、短期の効率よりも“ちょっとした不便”や“思考活性化”を取り入れ、根っこから自分を強くする訓練を怠るべきではないでしょう。
私自身も、ディレクターとしてエンジニアのキャリア相談や育成を担当するたび、紙一重のバランスに悩みます。
最高なのは、「楽で便利な道具が用意されているからこそ、あえて面倒な手法にもチャレンジする」、そんな士気と「柔軟なバックアップスキル」の両立でしょう。
最後に ― 技術の本質を“自問自答”せよ
結論として、このYou Need to Ditch VS Codeという記事は、「目先の便利さ」への依存がもたらすリスクについて強く警鐘を鳴らすものです。
初学者・中級者がターミナルやvim、gitを徹底的に学ぶことの価値は時代が変われど揺るぎません。
一方で、必ずしも「VS Codeを今すぐアンインストールすべきだ」と極端に走る必要はありません。
著者自身も、「今すぐやめろ」とまでは言っていません。
“I’m not saying you need to uninstall VS Code today. Instead, I challenge you to:
Start using the terminal for Git operations
Learn basic vim motions for text editing
Try debugging without breakpoints
Write code without relying on auto-completionGive it a month. Push through the initial discomfort. I guarantee you’ll come out a stronger, more capable programmer on the other side.”
VS Codeを捨てよ、とは言わず「1ヶ月だけ徹底的にターミナルやコマンドにもチャレンジしてみてほしい」というのが本当のチャレンジです。
今日からでも、ちょっとしたGit操作やファイル編集にターミナルを使ってみてください。
vimモードで十字キーを使わずにカーソル移動してみる。
「不便」を感じたその瞬間こそ、最も成長できるタイミングなのだということを、ぜひ体感してください。
そして、普段の便利さに感謝しつつ、その陰で“本当の力”を蓄えるチャレンジを続けてほしい――それがこのエッセイから得られる最大の示唆です。
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