この記事の途中に、以下の記事の引用を含んでいます。
macOS Terminal – still missing the mark Apple
期待外れの進化!? Apple標準ターミナルの現状
Terminal.appといえば、macOSに標準搭載され、多くの開発者や技術者が日々利用する定番ツールです。
2025年12月時点で話題となったのがmacOS 26でのアップデート。
Appleがようやく「24-bitカラー」対応を盛り込んだことで、一歩前進したようにも見えます。
しかし、この記事では「macOS Terminal.app is still buggy and not recommended. Instead consider switching to a 3rd party emulator.」と断言されており、完成度への厳しい評価が目立ちます。
その理由を探っていくと、“実用性の根底を揺るがす本質的な欠陥”が次々と見えてきました。
「ターミナル識別問題」に見る根本的な設計ミス
著者は、Goエコシステムで著名なターミナル関連のライブラリ開発者。
この視点から、まず最初の大きな問題として「ターミナル識別」の不備を挙げています。
“Terminal.app reports that it is a vanilla VT100 with no extra features, it does not claim to be a VT220 or similar. … Terminal.app reports nothing here. Most modern terminal emulators store their application name and version here.”
つまり、Terminal.appは“自分が何者か”を外部から識別できない構造になっているということです。
多くのターミナルエミュレータは、アプリ名やバージョン情報を“Extended Device Attributes”経由で返したり、特殊モードの問い合わせ(DECRQM)にも応答しますが、Apple純正ターミナルはそもそもそれらの仕組み自体を欠いています。
たとえば、Windows Terminalやxterm、また人気のiTerm2/kittyなどは、応答可能な範囲がはるかに広く、スクリプトやアプリがその能力差を検出・対応するのが容易。
これに対し、Terminal.appは自身の能力や拡張性をターミナルからは一切公開しません。
この設計は開発者にとって“未知な相手”を扱うストレスにつながります。
実際、「$TERM_PROGRAMで“Terminal”だと判別できても、SSHを介した場合は環境変数が伝搬しないため、実質的には無意味」とも指摘されています。
Unicode表現力の限界と現代化への壁
Unicode、特に絵文字や多言語表現の進化により、現在のターミナルは「複数のコードポイントで1文字(グラフェーム)」を描画できることが求められています。
記事ではこう述べられています。
“Modern applications and users expect to be able to use things like skin-tone modifiers for emoji, national flags, and similar ‘characters’. … How does Terminal.app fare here? Well its mixed results. For some, such as 👨🚒 and the Bengali example, it works reasonably well. But for others, like the flag emoji 🇨🇭 it miscalculates the width. (In this case it calculates the width of the flag as just one cell, instead of two, even though it renders it using two cells!)”
例えば、国旗絵文字や複雑な組み合わせ文字は、正しい幅で表示されないことがあるのです。
ここに具体的挙動の再現例を引用することで、
妙なズレが発生し、それがUIの崩れや描画バグの原因になることを示しています。
Appleにとって新しいグラフェームクラスタ対応(DECRQMモード2027)を導入すればより正常動作になる点も指摘されていますが、現状は未対応。
ニッチな問題にも映る一方で、日本語や各種非ラテン文字環境での実用性には深刻な影響も与えています。
OSC/DCS問題に見る「設計思想の古さ」
ターミナルエミュレーションの世界では、さまざまな制御シーケンス(OSCやDCSなど)が規格化されてきました。
たとえば、「ウィンドウタイトルの設定」や「クリップボードへのアクセス」などOSやアプリ連携の基本です。
記事では、AppleのTerminal.appにおける驚くべき挙動が次のように暴露されています。
“Every reasonable implementation should parse the entire string, using a simple state machine that recognizes ‘\x1b]’ is the start of OSC sequence, which is terminated by either ‘\x1b\’ (formally the ST sequence in ECMA-48), or ‘\x07’… But Terminal.app does nothing to make itself discoverable. … A similar, but slightly different behavior occurs with DCS sequences. It just emits the entire string (including the first character)… The content goes straight to screen.”
この文脈が示すのは、「パーサがエスケープシーケンスを途中で解釈放棄し、不正な文字列が画面に表示されてしまう」という重大なバグです。
また、Postel’s Law(“厳密に送信せよ、寛容に受信せよ”というネット基盤の鉄則)にも違反するパース動作があり、ターミナルプロトコルの基本設計すら守れていないことを強調しています。
これによって、連携ツールや外部制御系のアプリは「動くはずのものが動かない」「想定外のゴミが表示される」といったトラブルに遭遇します。
執筆者は「xterm互換」をうたうのになぜここまで動作や応答が違うのか、と不思議がっています。
最新のキーボードイベント未対応──”1970年代”のままの認識
さらに根深いのが、キーボード入力にまつわる問題です。
記事ではテクニカルなポイントながら本質的課題が語られています。
“Modern terminal applications are looking for ways to make better use of the keyboard, for things like control-keys for short cuts. … Of course, Terminal.app has none of these, and is stuck in the 1970s for key reporting.”
近年では、Ctrl/Shift/Alt/Metaキーの多様な組み合わせや、キーリリース/リピートの検出など、よりモダンなキーバインドを実現する規格(例:kittyの独自プロトコルやwin32-input-mode)が普及しつつあります。
ところがTerminal.appは、この進化を一切取り入れていません。
そのため、多機能エディタや新世代のターミナルアプリが期待する操作体系(たとえば、特定キーショートカットごとの区別や複雑なコマンドの割り当て)がまったく実現できません。
この部分は非常に地味ながら、特にVimやEmacs、tmux、また現代的CLIツールの効率利用において足かせとなってきます。
サードパーティターミナルが「必須」な理由
こうした限界を鑑み、著者は純正Terminal.appの利用を強く非推奨とし、代替案を次のように述べています。
“There are a plethora of excellent options available which are all far superior to Terminal.app, and which are free. … iTerm2 as well as kitty. The up and coming Rio is also pretty excellent. The Alacritty program is popular but I found it inferior to these other options (no grapheme clustering, and no advanced keyboard support). … Personally, I use the excellent Ghostty…”
iTerm2やkitty、Rio、Ghostty、Alacritty(後者は一部機能劣後)など、フリーかつ高機能なサードパーティターミナルが今や豊富に選べる時代です。
一度でも試せば、描画・レスポンス・拡張性の面ですぐに違いを体感できます。
実務用途での安定性や将来性からも、“Apple標準”への惰性はむしろリスク――これが筆者や多くのエンジニア、特にターミナルマニアたちの共通認識となっているのです。
「ターミナル=黒い窓」は過去の遺物
この記事から読み取れる本質的なメッセージは、「標準ターミナル環境でいいや、と何となく使い続けていると、あなたの作業効率や体験を大きく損なっている可能性が高い」という事実です。
過去のUnix文化を継ぐ“黒い窓”ではなく、モダンなテキストUIやUnicode全盛の今だからこそ、ターミナルもまた進化を続けねばなりません。
Appleのターミナルが抱える課題は、表面的用途ならばともかく、真に生産性を求めたり、マルチリンガルなテキスト処理、拡張的なCLIツールと組み合わせたりする現場では、致命的な足かせとなるでしょう。
この「見えにくい違和感」を放置するのは“もったいない”の一語に尽きます。
(まとめ)「なんとなく標準」からの脱出を
最後に、この記事を読む皆さんにぜひ問いかけたいのは、「本当に今のターミナル環境に満足しているか」という点です。
Appleが提供する“標準”という安心感の裏には、このような技術的負債と時代遅れ感が積み重なっています。
iTerm2やkittyなど、現代に合わせた優れたサードパーティ製オプションは簡単に試せます。
しかも多くはオープンソース、料金もかかりません。
「なんとなくTerminal.appを使い続ける」
それは決して、進化の止まった選択肢に甘んじることを意味しませんか?
習慣を変えるのは多少手間かもしれません。
しかし“CLI好き”な人も、ターミナルを時折しか使わないユーザーも、一度は現代的なターミナルを試してみて、その進化と快適さをぜひ体感してみてください。
それが、作業の効率化、ストレス軽減、ひいてはmacOSを100%使いこなす“最初の一歩”になるはずです。
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