この記事の途中に、以下の記事の引用を含んでいます。
SaaSの常識が覆る?驚きの時代がやってくる
本記事は、テクノロジー業界における「ビルドすべきか、買うべきか」をめぐる意思決定、いわゆる「Build / Buy」問題に、AI(特にSOTA:最先端のAIモデル)が与えている劇的な影響について論じています。
端的に言えば、「AIの進化によって従来のSaaSスタートアップモデルが崩壊しつつある」という、きわめて刺激的な主張です。
SaaS成功の方程式が過去のものに――筆者の問題提起
まず、筆者がかつてのスタートアップ運営について次のように振り返っています。
“In the old days when you ran your startup, you had to focus on your core objectives very closely in the early days. … you had to focus on your core product exclusively. No sysadminning (Heroku/Lambda), no hard drives (S3), no databases (RDS), no CDN (Cloudflare), no geth (Infura).”
かつては、スタートアップ創業当初は「イノベーション・トークン(取り組むべき新しいアイデアや構築タスク)」には限りがあり、主力製品にのみ集中しなければならなかった。
サーバー管理やデータストレージ、CDNなど周辺サービスは極力外注するしかなかったと説明しています。
また、SaaS(Software as a Service)ビジネスの多くは、決して斬新な技術や独自の専門知識で勝っていたわけではないと手厳しく述べます。
“A lot of SaaS startups’ secret sauce was simply having faster devs than their customers and perhaps on-call sysadmins, not some specific insight or unique knowledge about the problem space they are solving.”
多くのSaaSスタートアップの「秘訣」は、お客様よりも早い開発者や常駐のシスアドがいることだった、とも指摘しています。
こうした「スピード優先・技術の使い捨て」モデルは、SAAsのコアな強みとされてきましたが、その時代は終わったと言います。
AI登場による劇的転換
筆者は、このように宣言しています。
“That’s all out the window now with SOTA AI models. … it’s here and it works and it’s going to change the world.”
これは、最先端のAIモデルの登場ですべてが吹き飛んだ、と断言しています。
AIを活用すれば、エンジニアたちが数日もあればサポート用APIサービスのプロトタイプを構築できる、と強調します。
“Competent engineers can now crank out a prototype supporting api/service … in a day or two, something that used to take a few people a month.”
つまり「以前は数か月かかっていた作業が数日で済む」時代が来ている、というのです。
この凄まじい開発効率化は、「Build(内製)」か「Buy(外注)」か、という従来の二者択一に「Bot(=AIにやらせる/自動化する)」という第三の道が加わることを意味します。
SaaSの牙城が崩れる理由――技術とOSSカルチャーの進化
本記事で特に重要なのが、AI化によって「サポーティングサービス」(本業の補助・周辺的な機能)は社内でも簡単に作れるようになってしまい、しかもそれをOSS(オープンソースソフトウェア)として共有する流れが加速する、という点です。
筆者は以下のように断じます。
“The build/buy equation just got an anvil dropped on one side of the seesaw, and your stupid SaaS startup idea is pulling a Wile E. Coyote midair at 30,000 feet. If all of the edge you had was that you could build it faster than your customers, you’re toast.”
つまり、これまで「顧客より速く作れる」だけが強みだったSaaS会社は、もはや淘汰される、と表現しています。
さらに、AIの補助で一気にプロダクト開発が進むので、品質や信頼性、洗練性でSaaSプロダクトが抜きん出ていたとしても、「そこまで本気で求めている人は少ない」という現実にも触れています。
一定のレベルさえ満たしていれば、スタートアップ連中はサービス利用料を支払うよりも「AIで作って、OSSで公開して、必要な人が追加開発して使えばいい」と割り切るだろう――すなわち「オープンソース大勝利」の図式です。
この傾向により、Open Core(中核機能のみオープンにして高性能部分は有償にするビジネスモデル)のような“ご都合主義”なSaaSも不要になると手厳しいです。
本当に誰もが「作れる時代」なのか?ここに潜む落とし穴
確かに、現代AIの発達により数行のプロンプトでWebサービスの雛形を生成でき、API設計やインフラ構築すら高速化しています。
事実、CopilotやChatGPTのPlugins、あるいはHuggingFaceのAPI自動生成機能などを使えば、小規模なCRUDアプリや分析Webツールは一人で比較的容易に作れる状況です。
しかし、実務経験から考えると「本当にAIで自作OSSがSaaSを飲み込むのか?」という疑問もあります。
-
ユーザーサポートやアップタイム保証
企業や本格的なユーザー層は、サービスの「安定稼働」や「問い合わせ対応」「法規制遵守」を重視します。
OSSで誰でも使えるが故に「自己責任」になるだけで、その凄まじい不安やバックアップの手間を多くの会社が引き受ける覚悟は無いでしょう。 -
セキュリティ管理
OSSコンポーネントの脆弱性や運用負荷、バージョン互換トラブルなどを(素人ばかりの)社内で捌くのは至難の業です。
大規模なSaaSでは、依然として「Buy」の選択肢は残ります。 -
ベンダーロックインと長期視点の欠如
その場しのぎで独自開発したOSSツールは、やがて人材流出や非互換などで「継承不能」→「有償SaaSへの回帰」を繰り返すケースも少なくありません。 -
日本特有の課題
日本企業の多くは「OSS=怖い」「障害時の責任追及が面倒」という慣行が根強いです。
組織構造の硬直性もあり、米国ほど気軽にOSSバンザイの文化にはなりきれないでしょう。
それでもなお、この「開発速度のコモディティ化」は否応なく進行しています。
言い換えれば、「極めて特殊な知識・リソースを不要とする」支援ツールや補助サービス領域は、プロプライエタリSaaS業者の居場所がますます狭くなっていくのは間違いありません。
サードパーティSaaS vs. 内製AIの戦い――今後どうなる?
では、「SaaS不要論」はどこまで本当なのでしょうか?
結論として、
- 「ニッチな補助ツール」「業界特化のCRUDサービス」などは、AI・OSS連携により大量に無料でコピーされ、SaaS市場のコモディティ化が進行します。
- 一方で、「法律で守られた業務」「高い安定性・サポート必須の領域」「セキュリティ上ブラックボックス化したい領域」では、信頼性や運用体制を武器に、SaaSが生き残る余地は十分あります。
- AI化に伴い、スタートアップが「何を自分で作るべきか/外注するべきか/OSSで済ませるか」の意思決定は遥かに柔軟になり、より戦略的な経営力や判断力が問われます。
現段階で言えるのは、「AIがもたらす開発力のコモディティ化」によって、「自分たちだけが速く作れます!」というSaaS企業の旨味は、近い将来ほぼ消滅する、という点です。
日本のエンジニアリング界隈でも、「冗長なSaaS課金」を再考し、「OSS+AIによる内製」「真に価値ある部分へのリソース集中」に目を向けるべき時代が到来しました。
「外注するか、作るか」から「自動化するか」へ――読者に伝えたい新視点
「Build / Buy / Bot」という考え方は、今や全ビジネスパーソンにとって必須ともいえる視点です。
たとえば、
- スタートアップの新規事業立ち上げ時、
- 自社サービスの再構築やコスト最適化プロジェクト時、
- 社内ツールやAPIの刷新タイミング
など、あらゆる場面で「Bot=AI自動生成」選択肢が無視できないものになりつつあります。
今後は、「自社で作ったほうが安いか?」「有名SaaSを買うべきか?」だけでなく、
「AIを最大限活用して、内製・共創・自動化とアウトソースの境界を曖昧化させるにはどうするか?」
この問いを常に意識することが、ビジネスにおける競争優位の原点になるはずです。
「もうSaaSは古い」などと短絡的に煽るのではなく、本当に顧客が求めている価値・サポート体制・組織防衛性と、「AI自動開発」のバランスを冷静に見極めてください。
そうすれば、「Build / Buy」がかつてないスピードと自由度を持つ「Build / Buy / Bot」の時代に、あなたのビジネスは確実にアップグレードされるでしょう。
categories:[technology]

コメント