この記事の途中に、以下の記事の引用を含んでいます。
The First Programming Language: A Timeline
歴史の扉を開け!「プログラミング言語の始まり」に迫る
私たちが日常で触れるスマートフォンやパソコン、それらを動かすアプリケーションやAI、インターネットの裏側には、必ず“プログラミング言語”が動いています。
しかし、「最初に生まれたプログラミング言語は何だったのか?」という問いに明快な答えを持っている人は意外と少ないのではないでしょうか。
今回ご紹介する記事The First Programming Language: A Timelineは、1843年のエイダ・ラブレスから始まり、現代に至るまでプログラミング言語がどのように発展してきたのか、その驚きに満ちた軌跡を丁寧にたどっています。
本記事では、英語記事の内容を引用しつつ、技術的な意義や社会的背景、私の視点での考察を交えながら、この“知の系譜”を掘り下げてみたいと思います。
プログラミング言語の曙光――革命児たちの挑戦
では記事の中核となる主張を見てみましょう。
“Plankalkül takes the spotlight as the first high-level language, created by Konrad Zuse between 1942 and 1945. … Fortran (FORmula TRANslation) emerged as the first commercially available high-level programming language.”
“In the 19th century, Ada Lovelace, often referred to as the first programmer, … created the first machine algorithm. Rather than inventing a new device, she recognised the broader potential of Babbage’s machine and expanded its role beyond calculation.”
この引用は二つの重要なポイントを示しています。
一つは、世界初の“高水準言語”としてコンラート・ツーゼの「Plankalkül」(プランカルキュール)が登場したこと。
もう一つは、19世紀のエイダ・ラブレスが“最初のプログラマ”と呼ばれる理由を、彼女の抽象的な発想力やコンピュータ概念の先駆的洞察に見出している点です。
なぜ「はじめの一歩」が重要なのか?――背景と技術的意義をひも解く
Ada Lovelaceの偉業:抽象思考で時代を先取り
エイダ・ラブレスは、1843年の時点で「計算機=ただ計算するだけの装置ではない」と看破し、計算機がさまざまな情報を処理できる可能性に言及していました。
現代のプログラムに当たる「アルゴリズム」を理論上初めて記述したことで、後の計算機科学全体の礎を築いたのです。
これは、単なる”女性初のプログラマ”という枠を超えた、人類の思考とテクノロジー史における画期です。
「高水準言語」の登場――機械との溝を埋めた技術革新
続く1940年代から50年代にかけて、高性能な電子計算機が生まれました。
しかし、最初期は“アセンブリ言語”で直接機械語を書いていました。
これでは「プログラムを書く=膨大な時間と労力がかかり、バグも起きやすい」という問題がありました。
そこで記事では、
“Konrad Zuse proposed an early high-level language called Plankalkül between 1942 and 1945, but it remained unimplemented.”
とあるように、ツーゼは既に「機械に近い言語」ではなく、人間がより論理的・高速にコーディングできる“高度な言語”を考案していました。
けれども、実用化には至らず、「最初のコンパイラ付き高水準言語」は1951年のCorrado Böhmによる論文言語、そして商用として世界初となったのが1956年の「Fortran(フォートラン)」です。
これは「低水準言語ではなく、人がアルゴリズムを明快に記述できる世界」が開けた瞬間でした。
技術史の舞台裏――「なぜ多数の言語が生まれたのか?」
目的の違いが生む多様性
プログラミング言語は、その利用目的や時代背景に合わせて生み出されてきました。
記事が示す通り、
“FORTRAN eventually gained recognition for its efficiency, becoming a cornerstone for high-performance computing.”
“Grace Hopper’s FLOW-MATIC, designed between 1955 and 1959, addressed business users’ discomfort with mathematical notation. Released in 1958, it significantly influenced the creation of COBOL.”
科学・工学分野の数値計算に特化したFortran、業務処理・会計分野に適したCOBOL、AIや数式処理向けのLISP、それぞれが異なる課題を解決するために開発されています。
このような多様性は単なる“技術的遊び”ではなく、リアルな社会ニーズへの適応と並行していました。
パラダイムシフトの連打
1960年代以降は、それまでの「一つのプログラム=逐次処理」という考え方から、オブジェクト指向(Simula、Smalltalk)、関数型(ML、Haskell)、論理型(Prolog)といった新しいパラダイムが次々と誕生します。
さらに、1970年代にはC、80年代にはC++やPerl、90年代にはPythonやJava、2000年代にはGoやRustと、現代の私たちが当たり前に使う言語が誕生していきます。
各言語が導入した“新発想”は、必ずしも即時には主流になりませんでしたが、技術史全体を一歩ずつ前進させてきたのです。
「Hello, World!」から広がる未来――私の考察と批評
“最初”は一つに決まらないのか?
興味深いのは、「最初のプログラミング言語」を厳密に一つに定義するのは難しい、という点です。
たとえば「プログラム可能なアルゴリズムを書いたのはエイダが最初」「高水準言語を発明したのはツーゼ」「商用に耐える高水準言語で最初はFortran」――いずれも“最初”の基準が異なります。
これは自然言語や文化史、他のテクノロジーの発展とも似ており、“複数の源流”と“幾重もの分岐”があるのが特徴です。
イノベーションは累積する
もう一つ、記事中にしばしば引用されている「プログラミング言語の相互影響」も大変重要です。
“Many of the languages we use today are improved and evolved versions of older languages. … Python was inspired by ABC, while TypeScript extends the capabilities of JavaScript. This intergenerational dialogue between programming languages ensures a seamless exchange of ideas and functionalities.”
たとえば、C言語からC++やObjective-C、Java、更にC#、Go、Rustといった“子孫”が生まれています。
一方、LISPからはSchemeやClojure、MLからOCamlやHaskell、そして関数型パラダイムが広がっていく。
それぞれの言語が“前世代の問題意識”や“設計思想”を受け継ぎつつ、時には大胆に拡張・変革しているのです。
プログラミングの未来と「多様性」の価値
現代は「Python最強」「JavaScript万能」など声高に叫ばれますが、裏を返せば新しい課題が登場すれば、それに特化した斬新な言語がまた生まれる――この循環は続くでしょう。
プログラミング言語の多様性は無駄ではなく、むしろ技術革新と表現力・効率性・安全性向上の源泉として機能してきました。
現代でもRustが“安全性”で評価され、TypeScriptが“可読性・保守性”をもたらし、JuliaやElixirが“特定分野でのパフォーマンス”を追求しています。
結論――「最初」を超えて考える、プログラミング言語という文化遺産
今回取り上げたThe First Programming Language: A Timelineは、単なる歴史年表ではありません。
人類が「機械に命令する」ことをどのように工夫し、どのように効率を高め、どのように新しい発想を求めてきたのか――この“集合知”の物語でもあります。
どんな言語にも、そのルーツには創造性、課題意識、異なる世界観が息づいています。
これからプログラミングを学び始める方、既に言語を使いこなしているエンジニアの皆さんにとっても、「今使っている言語は、どのような歴史の延長線上にあるのか?」という問いかけは、きっと新しい視点や発見をもたらすはずです。
次に「Hello, world!」と打ち込む時、その背後に広がる“人類と計算機のドラマ”を少し思い出してみてはいかがでしょうか。
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