この記事の途中に、以下の記事の引用を含んでいます。
How to carry more than your own bodyweight (2025)
世界には“常識外”の運搬術が存在する
私たちが「重い荷物を持ち上げる」と聞くと、筋力トレーニングの延長や、物流・引っ越し業者といったイメージを抱くかもしれません。
しかし実は、日常生活の一部として「自分の体重以上の荷物を、何キロも歩きながら運ぶ」ことを当たり前にこなす人たちが存在します。
本記事は、ベトナムの農村労働者が実践する驚異的な運搬テクニックについて紹介し、それがごく一部の才能や筋力だけに依存したものではなく、知恵や道具の工夫が大きな役割を果たしている点に注目しています。
「バンブーポールの魔術」〜記事の主張と驚きのデータ
記事では、「The rural farm workers of Vietnam could be seen as almost superhuman. Every day, they shoulder impressive loads strung to a pole before carrying them for up to several miles at a time by foot. The awkward, bulky packages of produce, tools or other materials can often weigh more than their own bodyweight, yet they seem to take the burden in their stride.」と述べられています。
つまり、ベトナムの農村労働者は、しばしば自分の体重以上の荷物をバンブー(竹製)の棒で肩にかけ、数キロにわたって歩いて運んでいるということです。
そして、この“超人的”な運搬の秘密は、「Their long springy bamboo poles」にあると指摘しています。
特に重要なのは以下の一節です:
The workers adjust their gait so that the load on either end of the poles oscillates in time with their strides. This reduces the amount of effort required to lift the weight with each step by around 18%, according to one study by researchers who studied the farm workers’ carrying abilities.
この部分は、竹棒が「バネ」の働きをして荷物の揺れを同調させ、必要なエネルギーを約18%も削減している、と科学的にも裏付けているのです。
「技術×道具×身体」──運搬効率の知恵に迫る
一見“体力勝負”のように思える重労働ですが、この記事では明確に、「道具の選択と使い方」「身体の動かし方」によって効率が劇的に変わることを示しています。
竹棒──いわゆる「天秤棒」のような道具──は、軽くて強靭かつ適度なしなりがあり、荷物の上下動や揺れをうまく吸収して力を分散させる作用があります。
さらに注目したいのは、「gait(歩行パターン)を調整して荷物の振動と自分の動作を同期させる」という知恵です。
これは、「力任せに運ぶ」方法と対極で、物理的なエネルギーロスを最小限に抑える極めて洗練された技です。
具体的には、バンブーポールの両端に吊るした荷物の揺れが自分の歩調と合うように「タイミング」を調整することで、階段で”タイミングよくジャンプして一段飛ばし”するのと同じように、加速・減速時のエネルギー分散を利用し負担が減る仕組みです。
西洋的な運搬用具(リュックサックやカート)も進化していますが、歩行中のエネルギーマネージメントという発想は比較的希薄であり、日本でも昔ながらの「こもし」と呼ばれる荷縄や天秤棒、アジア各地の担ぎ道具など、長年にわたり身体適合的な工夫がなされてきました。
「超人」ではなく「長年の積み重ね」――新たな視点の必要性
記事の終盤では「But even with this springy assistance, there can be little doubt that these farm workers are also just supremely strong after years of carrying heavy loads.」とも述べられています。
つまり、道具や技術だけではなく、やはり筋力と耐久力の“地道な積み重ね”も不可欠だという冷静な指摘です。
スポーツにおいても、「正しいフォームと練習」の両輪が重要であるのと同様、日々の労働を通じて身体が鍛えられ、その“技および体力”が相互に補完しあっているわけです。
この点は、先進国のホワイトカラー層や都市生活者が、いざ重いものを運ぼうとする時、単に「最新の道具があれば良い」と考えがちですが、実際には“習慣的な身体の使い方”と“道具の最適化”が本質的に不可分であることを示唆しています。
伝統は最先端!「筋肉」に頼らず効率を最大化する発想
この記事を読んで強く感じたのは、「伝統的な運搬技術」には、最先端の人間工学すら凌駕する知恵がつまっているという点です。
普通、筋力や特殊な体質・遺伝に注目しがちですが、多くの研究が指摘するように「同じ筋力なら正しい道具と技術」で大きな違いが生まれるのは事実です。
現代のエンジニアリングや健康科学でも、例えば“エクソスケルトン”や“負荷軽減型ウェアラブル”の開発が進んでいますが、「負荷の動的分散」「歩行リズムと同期」といった本質的な発想は、このような伝統社会の知見から学ぶ部分が多いと感じます。
また、アウトドアや登山、災害時の荷運びでも、「とにかく背負う」「キャリーカートを使う」だけでなく、“運搬リズム”や“揺れとの一体化”を意識することで、驚くほど負担が軽減できるかもしれません。
結論:現代人が見落としがちな「身体と道具の一体化」
このBBC記事が示す最大の教訓は、「力任せ」でも「道具頼み」でもなく、“身体感覚と道具の相互最適化、そして習慣的な身体づくり”という、極めて日本的・アジア的な知恵そのものだと強く感じます。
グローバルな物流が複雑化し、効率性が叫ばれる今こそ、私たちは伝統社会の運搬テクニックに学び直す時かもしれません。
「もっと効率よく働く」「エネルギーコストを下げる」という現代の要求に、“鍛錬×工夫”というシンプルな解答を再発見できる、一篇の示唆に富んだ記事でした。
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