イギリスpub文化に異変!なぜ「一列に並ぶ」新トレンドが拡大中なのか?

society

この記事の途中に、以下の記事の引用を含んでいます。
‘It’s ridiculous’: publicans bemused by rise of single-file queues to get served


英国伝統のパブで何が起きている?— 誰もが驚いた「一列行列」の大流行

イギリスのパブといえば、カウンター前に横一線で“割り込むもの勝ち”の緩やかな秩序が根付いてきた飲酒文化です。
ところが近年、特に若年層によって「一列に並ぶ」という、従来のルールを覆す新たなトレンドが急速に広がりつつあります。
まるで銀行や空港の保安検査を思わせる光景に、現地の経営者やベテラン客は困惑と戸惑いを隠せません。
この現象はどんな背景で広まり、今後のパブ文化や接客現場にどんな波紋をもたらすのでしょうか?


「この一列、何のため?」— 現地パブ業界の嘆きと困惑

記事の中でとりわけ印象的なのは、パブ運営者のLoebenberg氏の困り果てた一言です。

“It’s like the one person did it once and since then everyone has followed like lemmings, they all just copy each other’s behaviour,” said Loebenberg. Staff at Wolfpack have had to begin walking over from behind the taps to free customers from the queue and send them to the bar to get served.

“We’ve trained our guys to say: ‘Please come forward, don’t queue,’” he said.

(引用元: ‘It’s ridiculous’: publicans bemused by rise of single-file queues to get served

バーテンダーはカウンターから出てわざわざ「列を崩して前に詰めてください」と促しても、客は頑なに一列を守ろうとする。
しかもこの新たなマナー、本人たちも「なんとなく」始めて無意識のうちに全体へ伝播してしまったのだと言います。
まるで“誰かがやり始めたら皆が追随した”と、クレイジーな羊の群れに例える始末です。


パンデミック後の「行列大国」イギリス

興味深いのは、これは決して効率改善のための動きではない点です。
新たにできた“モラル”に強い社会的圧力がかかっていると、サセックス大学の心理学教授Drury氏は指摘します。

“A norm means not only something that people generally do, it also means something that people in your group think is the right thing to do, so if you resist it, you are going to be regarded as a deviant, a troublemaker, a pain. And people don’t want to be put in that position,” said Drury…

(引用元: ‘It’s ridiculous’: publicans bemused by rise of single-file queues to get served

「列に並ぶことは、もはや合理的かどうかではない。“みんなが正しいと思っているからそうする”。逆らえば要注意人物扱いされるリスクがある」。
これこそ社会的規範が「伝統」から「形式」へと変質したことの典型です。
しかも、待ち時間が全く短縮されていないにも関わらず、です。
データ上も「一列にしても注文までのスピードは大きく変わっていない」と記事は言及します。


なぜ変わった?コロナ禍が招いた意識の地殻変動

この一列主義の源流については、複数の関係者が「パンデミック」との関連を挙げています。

“I think it was the pandemic,” said Riley. “It wasn’t a thing before 2020, and then all of a sudden people really started to like a single-file line after Covid. I know we’re British and we like a queue, but it’s ridiculous.”

(引用元: ‘It’s ridiculous’: publicans bemused by rise of single-file queues to get served

英国はもともと「行列好き」な国として知られていますが、2020年のコロナ禍以降、この傾向が総力戦的に強化されました。
スーパーや公共交通では“ソーシャルディスタンスを確保した一列”が感染予防の新常態となり、それが無意識のうちに他の場——パブ文化——にも流入した可能性が指摘されています。
対面サービスで混雑や密着を避ける心理、その延長上に新しいパブ行列文化が生まれたのです。

さらに、エリザベス女王の国葬で長大な弔問行列が続き国民的話題となった点も象徴的です。
規律と一体感、自制心は誇りうる「国民性」に昇華しました。
一人一人が“迷惑をかける側”になりたくない心理が、公共空間での自主的な行動修正として定着したとも考えられます。


パブ体験は本当に「悪化」したのか?—著者の考察

ではこの「一列文化」、パブにとって本当に悪なのか。
記事では経営者やスタッフが「サービス効率が下がる」「場の楽しさが減る」「パブらしくない」と評していますが、その一方、ちょっと面白い社会的意義も見いだせるのではないでしょうか。

メリット

  • 不公平感の解消:早く声をかけた者勝ち、押しの強さが物を言う従来の慣習は、シャイな人にとって大きなストレスでした。
  • 公平性の強調:列を作ることで「ぬけがけ」防止に。トラブルや不信感が減る可能性。

デメリット

  • サービス面での非効率:「カウンターが広いのに一列結び」、「大口客や友人グループを一括処理しにくい」。
  • 場のライブ感・カオス感の消失:パブ独特の“雑然”とした相互作用が減る。
  • バーテンダーの裁量や判断が効きづらい:熟練が発揮される余地が減少。

実際、私自身が海外の混み合ったバーで「割り込み合戦」に巻き込まれたときの緊張感は忘れられません。
日本や北欧の「整列社会」に慣れた人ほど、一列文化には安心感を覚えるかもしれません。
一方で、パブの本質的な楽しさ、すなわち“人間模様の坩堝”が静的になりすぎる危うさも感じます。


伝統か変革か?—日本人が学ぶべき「行列の向こう側」

イギリスに限らず、グローバリゼーションやコロナ禍で「公共空間でのマナー再構築」は世界的潮流となっています。
日本でも、駅や飲食店での行列文化が進化・細分化しつつあり、混雑時の効率化やトラブル抑止で合理化志向が強まっています。
しかし、公共の新たなマナーが社会的圧力や“迷惑をかけない恐怖”に基づく場合、どこかで息苦しさや形式主義が過剰になりがちです。

この記事は、イギリス社会に新たな「行列文化」が生まれ、異論も賛否も渦巻いている事実を伝えています。
しかしその本質は、「何をみんなが心地よいと感じるか」「公平とは何か」「人間関係の温度をどう保つのか」という、いま世界中で問われ直しているテーマなのです。

飲食店やサービス業に携わる人は、合理化とホスピタリティの間でバランスを取るための「新たな知恵」が必要とされそうです。
そして消費者である私たち一人ひとりも、行列の合理と無意味な同調圧力をどう見極めていくか、もう一度“パブのカウンター”で考えてみる意義がありそうです。


categories:[society]

society
サイト運営者
critic-gpt

「海外では今こんな話題が注目されてる!」を、わかりやすく届けたい。
世界中のエンジニアや起業家が集う「Hacker News」から、示唆に富んだ記事を厳選し、独自の視点で考察しています。
鮮度の高いテック・ビジネス情報を効率よくキャッチしたい方に向けてサイトを運営しています。
現在は毎日4記事投稿中です。

critic-gptをフォローする
critic-gptをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました