この記事の途中に、以下の記事の引用を含んでいます。
NASA Analysis Shows La Niña Limited Sea Level Rise in 2025
まさかの現象!ラニーニャが2025年の海面上昇を“一時的に”緩和?
今回取り上げるのは、NASAが発表した2025年の地球規模での海面上昇に関する最新解析についてです。
海面上昇は「地球温暖化」や「氷床融解」といったキーワードとセットで語られますが、2025年はその流れに意外な変化が生じた年となりました。
NASAの分析によれば、「A mild La Niña caused greater rainfall over the Amazon basin, which offset rising sea levels due to record warming of Earth’s oceans.(穏やかなラニーニャ現象がアマゾン流域の降水量を増大させ、これは過去最高の海洋温暖化による海面上昇を相殺した)」とのこと。
つまり、温暖化による長期的な上昇傾向の中で、短期的に減速する“自然の揺らぎ”が観測されたのです。
この記事が示す主張:「ラニーニャ」の一時的効果とそのメカニズム
NASAの記事では、2025年の海面上昇が前年度と比べて顕著に鈍化した原因について、明確に言及されています。
“The rise in the global mean sea level slowed in 2025 relative to the year before, an effect largely due to the La Niña conditions that persisted over most of the year. According to a NASA analysis, the average height of the ocean increased last year by 0.03 inches (0.08 centimeters), down from 0.23 inches (0.59 centimeters) in 2024.”
(「地球の平均海面上昇は2025年に前年より鈍化し、その主因は1年の大部分に及ぶラニーニャの影響だった。NASAの解析によると、2025年の平均海面上昇は0.03インチ(0.08cm)と、2024年の0.23インチ(0.59cm)から大きく減少した。」)
この現象の原因については、ラニーニャによるアマゾン流域の豪雨が、通常より多くの水を大地に蓄えたため、海洋から陸地への水移動が強まったことが挙げられています。
また、記録的な海洋の温暖化が進む中、この“相殺効果”が、海面上昇の一時的な減速を導いたと報告されています。
ラニーニャ現象とは?現象の仕組と地球規模への影響解説
ここで「ラニーニャ」とは何かを整理しておきましょう。
ラニーニャ(La Niña)は、エルニーニョ/南方振動(ENSO)という気候現象の一部で、東太平洋の海面温度が平年より低下する状態を指します。
この現象が発生すると、次のような現象が知られています:
- 南米大陸赤道付近の降雨量が増加する
- 太平洋熱帯域の気候が大きく変動する
- 世界中の気象も連鎖的に影響を受ける
今回の記事によれば、このラニーニャによってアマゾン流域に降った大量の雨が、海から大陸への水の流れを強め、通常とは逆方向の水循環が起きたことで「海から一時的に水が失われた」形になった、というのがポイントです。
“The heavier-than-normal rainfall due to La Niña shifted water from the oceans to the Amazon basin.”
(ラニーニャによる異常多雨が海からアマゾン流域への水の移動をもたらした。)
科学的には、「Atmospheric Water Storage」の増加によって陸地(特にアマゾンの広大な流域)に水が“貯まる”ことで、短期的には海面上昇が抑えられる…というメカニズムです。
長期トレンドの中の短期変動──油断してはいけない理由
では、今回の“鈍化”は、地球温暖化問題の「朗報」なのでしょうか?
結論から言えば、「一時的な揺り戻しに過ぎない」と断言できます。
NASA研究者のJosh Willis氏もインタビューで次のように警告しています。
“But that cycle is short-lived. The extra water in the Amazon is going to reach the oceans in less than a year, and rapid rise will soon return.”
(「しかしそのサイクルは一時的なもので、アマゾンにたまった余剰な水は1年未満で再び海へ戻り、急激な海面上昇がすぐに再開するだろう」)
つまり、2025年の観測データは気候現象による“上下動”を示しているだけで、過去30年以上にわたる衛星観測データの長期トレンド――年々加速しつつある海面上昇――を覆すものでは決してありません。
事実、NASAによると「The dataset indicates that the average global sea level has gone up by 4 inches (10 centimeters) since 1993.」つまり1993年から2025年までに10cm近くも海面が上昇していることがデータで裏付けられています。
加えて、その「年次上昇率もこの30年余りで2倍以上加速」している事実が、私たちにとっての最大の脅威でしょう。
衛星観測の重要性と地球規模の危機管理に向けて
ここまで読んでこられた方はご存じの通り、今回の分析の根拠となっているのは「国際協力による複数の衛星観測データ」です。
記事では、Sentinel-6 Michael FreilichやGRACE-FOといった先進的な衛星ミッションによる連携が詳細に説明されています。
- Sentinel-6 Michael Freilich:地球全体の90%もの海洋表面の高さを10日ごとに測定
- GRACE-FO:重力変化から氷床の質量減少や陸地の水資源変動を計測
- Argo:全世界の浮体観測機を用いて、海水温や塩分濃度の“異常”も把握
こうした連続的かつ詳細な衛星データの積み重ねが、海面変動予測のみならず、沿岸インフラの防災設計や各地の洪水リスク評価、そして「社会のレジリエンス(復元力)」そのものを高める基盤となっているのです。
「As seas continue to rise globally, satellite monitoring empowers communities worldwide to anticipate risks and build resilience.」とも記事で示されており、
これらの地道な観測と国際協力こそが、私たちの日々の生活やビジネス、地域コミュニティを未来の危機から守る“盾”であるという認識が不可欠です。
気候変動の“ノイズ”にごまかされないために:私たちへの教訓
今回のニュースを受けて、気温や海面の“短期的な揺らぎ”に一喜一憂しない長期的視点の重要性を再認識する必要があります。
目先のデータに惑わされがちですが、「たった1年の鈍化が30年超続く増加傾向の“例外”に過ぎない」ことを冷静に理解すべきです。
その上で、いま私たちが見るべき世界や、身を守るために備えるべきことは――
- 海面上昇が将来的に社会や経済、文化にどれほどの影響を与えるか
- 気候現象(エルニーニョ/ラニーニャ)は“変動の一要素”に過ぎず、人為起源の地球温暖化そのものが主因である
- 科学的根拠のある観測・予測システムの高度化と、それによる早期警戒・被害軽減
――といった、本質的かつ行動レベルでの対応でしょう。
「海面上昇」のニュースが一瞬小康状態となっても、潮流そのもの(本質的な変化)は変わっていません。
情報発信者もそれを伝える受け手も、「長期的トレンド」と「短期変動(ノイズ)」を混同しないリテラシーと思考力が求められる時代なのです。
まとめ:「地球の“息づかい”を読み解く」ことで未来を守る
ラニーニャ現象による2025年の“例外的”な海面上昇スローダウンは、「地球の大きな呼吸=気候グローバル循環の複雑さ」を鮮やかに物語っています。
このような一時的な現象をきちんと解釈し、長期トレンドや構造的課題を見失わない姿勢・リテラシーが、今まさに強く求められています。
海面上昇は“鈍化”という揺らぎはあっても、地球全体としての“上昇潮流”は止まりません。
この事実と科学的根拠を胸に、私たち一人一人がどんな未来を描き、備えるべきか――。
最新の衛星観測が生み出す知見と、そこから得られる「警鐘」や「示唆」を、現実社会へ具体的行動として活かしていくこと。
それが、いま地球に生きるすべての人類に課せられた責任ではないでしょうか。
categories:[science]


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