この記事の途中に、以下の記事の引用を含んでいます。
Alternative Christmas Message
毎年の「特別な一言」――でもその対抗軸を知っていますか?
クリスマス――それは世界中の多くの国や地域で、一年でもっとも祝祭色の強い日といえるでしょう。
イギリスでは、エリザベス女王(現・チャールズ国王)による「クリスマスメッセージ」も伝統的風物詩。
ところが、その一方で国民の心にもう一つ、不意に風穴を開けてきた「Alternative Christmas Message(もうひとつのクリスマスメッセージ)」という存在をご存知でしょうか?
この記事は、Channel 4 が1993年から毎年のように放送してきたこの「Alternative Christmas Message」について、近年の特徴的な登場者やメッセージ内容を紐解きつつ、なぜ今なお人々の意識を揺さぶる存在であり続けるのかを深堀していきます。
変わる社会、そして変わるメッセージ
まず簡単に引用を紹介しましょう。
Snowden opened his two-minute message, recorded in Russia, with a reference to novelist George Orwell, author of Nineteen Eighty-Four, saying the surveillance technology described in his works was “nothing compared to what we have today”. He said: “A child born today will grow up with no conception of privacy at all. They’ll never know what it means to have a private moment to themselves, an unrecorded, unanalysed thought.”
このように、2013年は元NSA職員で告発者となったエドワード・スノーデンが登場。
社会における監視とプライバシーの危機感を訴え、現代における個人の自由や政府のあり方に痛烈な問いを投げかけました。
ほかにも、
– 2014年にはエボラ最前線から戻ったボランティアの看護師ウィリアム・プーリー
– 2015年には難民問題の象徴となったシリア少年アラン・クルディの父
– 2018年は俳優ダニー・ダイアーがBrexitや現代社会のアイロニーについて言及
といったように、その年ごとの社会課題や世相を映し出す、話題性の高い人物が選ばれています。
「もう一つ」の意味とは?――主流へのアンチテーゼとして
通常、イギリスのクリスマスメッセージといえば、つつましやかな祈りに満ちた王室の定型文。
しかしこのAlternative Christmas Messageは、まさに「Alternative(代替)」という名前が示す通り、社会の主流や大本営発表とは異なる視点・波紋を呼ぶテーマをあえて前面に押し出します。
たとえば2011年には「Just Be Yourself」というメッセージのもと、さまざまな社会的背景を持つ人々(小人症やトランスジェンダー、顕著なやけど痕を持つ方など)が登場。
多様性や偏見について語ることで、祝祭の裏に隠されがちな社会の問題、苦悩や孤独、差別といった「陰」をしっかりと指摘しました。
これは、クリスマスという希望と幸福の象徴の一日に、あえて光の当たらない現実に目を向けさせる Channel 4 なりの「意図的な演出」だと言えます。
単なる逆張りではなく、社会の「余白」や「盲点」を可視化する役割を担っているのです。
また記憶に新しい例としては、Edward Snowdenの“plaintive”な訴えが象徴的です。
引用にもある
The conversation occurring today will determine the amount of trust we can place both in the technology that surrounds us and the government that regulates it. Together we can find a better balance, end mass surveillance and remind the government that if it really wants to know how we feel, asking is always cheaper than spying.
では、私たちが社会や政治の在り方について「答え」を与えられるのではなく、「どうすべきか?」という根源的な「問い」を託されています。
なぜ語り継がれるのか――批評的視点で考える社会へのインパクト
ここからは私見も交えつつ、この仕組みの意義や狙いについて考察してみたいと思います。
まず、「Alternative Christmas Message」は、単なる“対立構造”や“抗議”だけのコンテンツではありません。
むしろ、多声音・多様性の象徴として、社会に“違和感”を届ける仮設的な公共圏の役割を果たしているように見えます。
国王(あるいは女王)のメッセージが「包括と統合」という社会的役割を受け持つのに対し、Alternativeは「分断社会」「無関心化」「見て見ぬふりした不条理」を直視させ、祝祭のカウンターとして機能しているのです。
また近年では、SNSやYouTubeの普及によって、個人が大きく発信できる時代とはいえ、なお「公的な祝祭の日に公的なマスメディアが、その余白や影・痛みを照射する」ことの象徴的な意義はかなり大きい。
社会のマイノリティや不正義に対する問題提起という意味では、公共放送の役割を再考させるうえでも示唆に富んでいます。
一方で、「一種のエンターテインメント化」や「視聴率や話題先行のための人選」への懐疑もまた、たしかに存在しうるでしょう。
誰もが納得し、一体感を持つ「祝祭の言葉」に対し、違和感や不快感を生むリスキーな演出は、社会の分断や消費的な刺激になりかねないという懸念も拭えません。
ですが、その「異物感」自体が公共の議論を起こすトリガーになるのだと私は考えます。
本当の「祝福」とは何か――クリスマスに考えたいメッセージの本質
最後に、このトピックが読者の皆様にもたらす示唆について考えてみましょう。
日本では「年末年始のメッセージ=美辞麗句」となりがちですが、Channel 4 のこの試みは、祝祭の只中にこそ「問い」や「異質な声」を差し込むことで、社会の本来あるべき姿や個々人の在り方に気づきを与えることを目指しています。
それは、
– 年齢や立場、過去の傷や社会の無関心を越えて「多様な声に心を寄せる」
– 一見“幸せ”と“平穏”が溢れているように見える祝祭に、「忘れてはいけない現実」が同時に存在している
– マスメディアの強力な「公の場」だからこそ、社会の痛点や問いをあえて鮮やかに差し出す意義がある
ということなのです。
例えば、2018年のDanny DyerがBrexitプロセスや現代社会の混乱・分断について語った事例も、
Danny Dyer wraps up the year with reference to the “palava” that is Parliament and the shambles that has been the Brexit process. He also makes reference to Donald Trump as “an absolute melt” whilst also calling for people to each have a hero, someone to look up to. For him it was his mother, grandmother and screenwriter Harold Pinter.
のように、社会への皮肉と同時に「身近なヒーローの発見」を勧めています。
家庭のあたたかさや、小さな誰かを称える気持ちの中にこそ「本当の祝福」が宿る――そういうメッセージが読み取れるのです。
「Alternative Christmas Message」がもたらす“祝祭の裏側”。
それは、現実を直視したときにこそ心に響く「もうひとつのクリスマス」なのです。

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