明かされた巨額投資!ワシントン大学のWorkday導入プロジェクトに潜む課題と教訓

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この記事の途中に、以下の記事の引用を含んでいます。
Workday project at Washington University hits $266M


総額266億円超!? 大学のERP刷新が注目を集める理由

近年、多くの大学や企業がITシステムの刷新(DX:デジタルトランスフォーメーション)に積極的ですが、その中でもワシントン大学セントルイス校(Washington University in St. Louis)が導入した「Workday」というクラウド型ERPシステムプロジェクトが、大きな話題を呼んでいます。
その理由は、プロジェクト全体の費用が約2億6600万ドル(日本円換算で約400億円 1)にも上るからです。
(
1:1ドル150円換算)

さらに、学生や従業員、教職員にどのような負担や恩恵、課題が生じているのか。
今回の記事は、単なるITプロジェクトのニュースにとどまらず、教育機関のガバナンスやDX化の未来にまで示唆を与える内容といえます。


驚きのコストと背景—原文で語られた要点

まず、今回の主な主張や事実を原文から抜粋し、確認します。

“the total cost of the project was set to reach upwards of $265 million over at least seven years, roughly $16,000 per student.”

この一文は、「このプロジェクトの総費用は7年以上に渡り、2億6500万ドル超、1人当たり約1万6000ドル」という、規模の大きさを端的に語っています。

さらに、プロジェクトの内訳や導入経緯についても、次のような説明があります。

“The Workday project was broken down into $81 million for financial and human resources services (HCM), $98.9 million for the student application called Sunrise, and $56.5 million for planning, data integration, and financial aid. Meanwhile $23.8 million in the 2026 financial year is for support and $5.7 million for annual licensing.”

また、担当CFOであるDavid Gray氏の次のコメントは、Why(なぜ刷新したか)に迫るものです。

“The legacy student information system was in its last phase of life. It was a 1990s era set of fragile, homegrown applications including WebSTAC, WebFAC, SIS Admin and other platforms. With the transition, the University replaced nearly 80 separate student systems with Workday,”

このように、「旧来の情報システムは1990年代から運用されていた脆弱な自作アプリ群であり、80近くもの学生システムをWorkdayによって統合した」と明かされています。


なぜそこまで高額投資?—時代背景と教育現場の「IT刷新」

1. 巨額投資の背景

まず、日本の大学や企業でも同様ですが、会計・人事・学生管理システムなどの基幹系(いわゆるバックオフィス)は「30年近く前のオンプレミス+自作アプリ」が主流でした。
このようなシステムは、既存担当者が退職した場合の「属人化問題」や、外部との接続難・セキュリティリスクなど、ブラックボックス化しがちです。

今回ワシントン大学が実施したのは、その最たる例。
80もの異なるシステムを、「Workday」一本に置き換えるというのは、見方を変えれば大学運営の心臓を丸ごと入れ替えるに等しい大事業です。

2. 学生や職員への影響

記事内で「プロジェクトが学生の抗議の対象となった」ことが触れられています。
実際、巨額のIT投資は、教育の質や学生支援よりも「運営側の論理」で進められる懸念を常に孕んでいます。
また、「ジョブロス(雇用喪失)の不安」が抗議理由の一つでしたが、これはどの業界でもDX時代に避けて通れない課題です。

3. 他大学も同様の道を歩む

興味深いのは、米国の別の有力大学(ワシントン大学:公立・西海岸)でも同じWorkday導入の例が出てきている点です。

“In March last year, hundreds of research grants were stuck in processing limbo, as the institution grappled with the $340 million implementation.”

ここでは「研究助成金の手続きが立ち往生」するなど、現場にトラブルも発生していました。
つまり、高度なIT化=現場が即座に便利になる、という単純なものではないのです。


巨額IT投資のリアルと見逃されがちな本質

このケースから何が読み取れるか、解説者としての立場で深掘りしていきます。

巨額ERP刷新に見られる「三つのハードル」

1. 投資対効果の算出は困難

学生一人当たり1万6000ドルもの費用がかかるとなると、それがどの程度教育や運営に還元されるのか、ステークホルダー(学生・保護者・従業員)は疑問を持つのも無理はありません。
おそらく大学側も、「今後の管理コスト削減・高度なデータ活用による効率化」などを根拠にしたのでしょう。
しかし、現実には初期投資が大きすぎると目先の効果ばかりが問われ、不満が噴出しやすくなります。

2. システム移行に伴う混乱と現場負担

記事内でも、他大学で「助成金手続きが停滞する」など、システム刷新後の混乱は避けられません。
日本でも病院や大型商社で基幹システムの刷新プロジェクトが、むしろ現場の業務停滞を引き起こした事例が見られます。
新たなUI/UXや機能への習熟には、長い目で見たトレーニングと現場の巻き込みが不可欠です。

3. “ブラックボックス”から脱却し透明性は本当に高まるのか?

旧来のシステムは属人化・ブラックボックス化が進む一方、ERPなどクラウドベースSaaSは一元管理による透明性向上が期待されます。
しかし、逆に「何でもかんでも一つのベンダー(この場合Workday)に依存」する形になり、カスタマイズや柔軟性で苦しむ声も根強く存在します。
業界では、ERPのロックインや運用費の高騰が長期的な課題として語られています。


私なりの考察:教育機関こそ“愚直なガバナンス”が不可欠

今回のニュースを踏まえて考えたいのは、「なぜ大学のIT化はここまで『高額』そして『批判の的』になりやすいのか?」という点です。

一つには、「高等教育機関は納税者や学生・保護者といった多様なステークホルダーの監視の目にさらされやすい」ことが挙げられます。
また人事・会計といったバックオフィスは、直接的な教育効果や学生サービスに即つながるわけではないため、コストに見合った“分かりやすい成果”が見えにくい。
さらに、教育現場では長年の慣習や既得権益、現場の多様なニーズが複雑に絡み合うため、「統合」と「柔軟性」のバランス取りが極めて難しい。

クラウドERPの統合はグローバルにみてもトレンドですが、実際には“現場視点に立ったオーナーシップ設計”や“導入後の現場支援”が成否のカギを握るのだと私は考えます。

「9割以上が成功している」とWorkday CEOは語っていますが、

“more than 90 percent of the SaaS HR and finance application vendor’s rollouts were a success”

この「成功」とは何をもって「成功」と呼ぶのか、ガバナンス面での新たな共通認識が必要でしょう。


学びと提言:DX化は「見えない価値」にも目を向けよ

今回のワシントン大学の事例は、日本の大学や行政機関企業にとっても他人事ではありません。
ERP・クラウド刷新は今後も不可避な流れですが、「何を持って成功とするのか」「誰のためのIT施策か」「短期的な混乱をどう低減・マネジメントするか」。
ITプロジェクトの真価は導入だけでなく、“運用し、本当に業務や体験が変わったのか”で測られるべきです。

教職員や学生など現場の当事者を巻き込み、地道な改善を積み重ねてこそ、『巨額投資の価値』は可視化されるのではないでしょうか。
このようなシステム刷新が単なる「コストの壁」とならず、真に教育現場の変革に繋がる取り組みになることを期待したいところです。


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