図形の「辺」と「頂点」はいつ発見されたのか?──数学用語の誕生に隠された意外な物語

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この記事の途中に、以下の記事の引用を含んでいます。
When Edges and Vertices Were Discovered


「辺」と「頂点」、それはいつ命名されたのか?──意外すぎる数学史のトリビア

プラトンの立体やユークリッド幾何など、「図形」の歴史は長いにもかかわらず、私たちが今日当たり前に使っている「辺(edges)」や「頂点(vertices)」という用語が、実はごく最近まで存在しなかったことをご存知でしょうか?

今回紹介する記事は、数学書「Euler’s Gem」を読み終えた著者が、「辺」と「頂点」という言葉の発明の経緯をたどりながら、数学用語がどのように生まれ、定着していったかを考察しています。

多くの人にとっては「そんなの昔からあったんじゃないの?」と思う用語ですが、この記事を読むと、「名付け」がいかに深い意味を持ち、数学の進歩にどれだけ重要な役割を果たしてきたかが浮かび上がります。


驚きの主張―「辺」の発見はたった300年前!?

記事の冒頭で紹介されているのが次の一節です。

On November 14, 1750, the newspaper headlines should have read “Mathematician discovers edge of polyhedron!”
On that day Euler wrote from Berlin to his friend Christian Goldbach in St. Petersburg. In a phrase seemingly devoid of interesting mathematics, Euler described “the junctures where two faces come together along their sides, which, for lack of an accepted term, I call ‘edges.’”

Amazingly, until he gave them a name, no one had explicitly referred to the edges of a polyhedron. Euler, writing in Latin, used the word acies to mean edge. In “everyday Latin” acies is use for the sharp edge of a weapon, a beam of light, or an army lined up for battle. Giving a name to this obvious feature may seem to be a trivial point, but it is not. It was a crucial recognition that the 1-dimensional edge of a polyhedron is an essential concept.

(When Edges and Vertices Were Discovered)

この引用部分では、あのレオンハルト・オイラー(Euler)が1750年11月14日付の書簡で、「ポリヘドロン(多面体)の2つの面が合わさるところに改めて注目し、それを“edge(辺)”と名付けた」と記されています。

それ以前には「辺」に相当する概念が明確に命名・分類されていなかった、というのです。


たかが「名称」、されど「発見」──命名が意味するもの

ここで着目すべきは、数学的な「発見」と「命名」の間に横たわる距離です。

例えば古代ギリシャの時代から、立体図形(polyhedron)は徹底的に研究されてきました。
五つの正多面体「プラトン立体」はもちろん、「面」「角」「直線」などの定義は古くから存在します。

それでも、「辺」という区切りを独立した1次元の構成要素として抜き出し、それに専用の名前を与えるという発想は、ずっと後年までなかったのです。

数学に限らず、ある対象や関係に“名前”が与えられることで初めて、その概念が明確に区別され、研究・議論・発展の土台となります。

まさにこの記事も「Giving a name to this obvious feature may seem to be a trivial point, but it is not.」と強調しています。
要するに、名付けの行為は、単なるラベル貼りではなく──それそのものが厳然たる“発見”だったのです。

この意義は心理学や言語学、認知科学でも何度も指摘されるところですが、数学の場合はそのインパクトが一層大きいことが伺えます。
極端な話、「辺」という言葉がなければ、オイラーの多面体定理(V-E+F=2)のようなシンプルな美しい公式も生まれなかったかもしれません。


意外すぎる混迷!? 「頂点」の命名史

さらにこの記事が面白いのは、「頂点(vertices)」の命名についての考察です。

Even though Euler came up with the formula (though was not able to prove it – that came later), the next mind-blowing thing was reading that he didn’t call vertices vertices, but rather:
Euler referred to a vertex of a polyhedron as an angulus solidus, or solid angle.

In 1794 – 44 years after edges – the mathematician Legendre renamed them:
We often use the word angle, in common discourse, to designate the point situated at its vertex; this expression is faulty. It would be more clear and more exact to denote by a particular name, as that of vertices, the points situated at the vertices of the angles of a polygon, or of a polyhedron.

(When Edges and Vertices Were Discovered)

オイラーが多面体定理にたどり着いたとき、「頂点」という言葉を使っておらず、「固体角(angulus solidus)」と呼んでいた、というのが驚きです。

さらに、そこから44年も経って、数学者ルジャンドルが初めて「vertices(頂点)」という名称を明確に提案しました。

この部分の記事の記述は少し混乱気味ですが、要するに現代的な意味で「vertices(頂点)」という言葉が定着したのは1800年前後のことなのです。

筆者は「角の頂点」「多角形の頂点の点」など、定義が曖昧ゆえに、かつてこの言葉はそれほど自明ではなかったと推測しています。

さらに、オックスフォード英語辞典で「vertex」という単語の歴史を調べた結果、
もともと「渦(whirl)」あるいは「回転軸上の点」を指すラテン語から来たものであり、
幾何学用語として使われ出したのも16世紀以降、しかも最初は「ピラミッドの頂点」や放物線の頂点など、意味が広かったことまで掘り下げています。

ここから見えてくるのは、私たちが当然と思っている「頂点」「辺」という言葉ですら、歴史的には驚くほど新しく、そして試行錯誤の積み重ねの上でようやく成立したのだ、という事実です。


言葉が生む「認識」と「発見」──私たちの日常との接点

ここまで読んできて、改めて考えさせられるのは、「名称(言葉)」が我々の科学的認識・思考にどれだけ強い影響を与えているかです。

例えば、何か新しいテクノロジーや発見がなされたとき、
「〇〇現象は…」と“名前”がつくことで、その存在が社会全体に共有・議論され、より深い理解や応用を呼び込むことになります。

これを数学に限らずITやサイエンス分野に当てはめると、
「新たなパターンやアイデアの発見」は、
「分かりやすい言葉」とともに現れることで爆発的な認知と進歩を生む、という構造が見てとれます。

たとえばインターネット黎明期の「ハイパーリンク」や、機械学習の「ニューラルネットワーク」なども、抽象的な概念に「ぴったりのネーミング」が与えられることで、その後の進化に大きく寄与してきました。

また「辺」や「頂点」という一次元、ゼロ次元のパーツを取り出し、明確に区別するという考え方自体が、
それまで暗黙知でしかなかった図形の“構造”そのものを、因数分解的にモデル化して扱うための突破口となったのです。


批評──数学史をもっと身近に、“名前”の本質を日常に生かす

筆者としては、この記事の持つ最大の価値は「数学史=重箱の隅を突くような古めかしい話」ではなく、
私たちの日常や現代のイノベーションの現場にさえ直結する「言葉の発明=発想の刷新」である、という気づきを与えてくれる点にあると考えます。

たとえばビジネスの現場でも「この概念、何て読んだらいいのかな……」という状態では、メンバー間でものごとの共通理解が進まず、議論も建設的になりません。
技術分野でも新しい構成要素や機能に「良い名前」をつけることで、開発効率や知識共有が一気にブレイクスルーするケースも枚挙に暇がありません。

この数学的な用語誕生の物語は、理論物理や生物学ではもちろん、「なんとなく目に見えている現象」を、「しっかり言語化する」ところから新たな発見や応用が始まるという、普遍的なプロセスをリアルに教えてくれます。


まとめ──「名付け」は知の第一歩、新しい言葉で世界を更新しよう

記事の最後に、「辺は272歳、頂点は228歳」というジョークで締めくくられています。
これはユーモラスであると同時に、私たちが今使っている知識・常識が、実は驚くほど最近になって固まったものも多い、と気づかせてくれます。

エンジニア・科学者・教育者・ビジネスパーソンに限らず、「新しい現象」「新たなアイデア」に良い名前を与えることから、本質に迫る議論や発見が始まる──
数百年前の偉大な数学者たちの“命名”から私たちが今学ぶべき最大の教訓なのかもしれません。

日常の課題や発明でも「これは何と呼ぶべきか?」と自問することから、新たなイノベーションが育つ土壌が生まれるはずです。

ぜひ今後も、身近な「当たり前」に隠れた“名前”たちの歴史に思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。


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