Rustの「関数」と「クロージャ」…その裏に潜む“隠れルール”に迫る

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この記事の途中に、以下の記事の引用を含んでいます。

The rules behing Rust functions


えっ、同じシグネチャのクロージャが動かない!?「Rust関数の裏ルール」徹底解説

Rustの関数やクロージャにまつわる“謎挙動”に戸惑った経験はありませんか?

「同じ型に見えるクロージャなのに代入できない」「moveキーワードの意味がややこしい」「クロージャの使い捨て制約ってなに?」…そんな疑問に答えるべく、今回はThe rules behing Rust functionsを解説とともに掘り下げていきます。

単に記事を要約するのではなく、引用と私自身の考察を交えて、“Rustらしさ”が詰まった関数&クロージャ周りの設計思想・仕組みをかみ砕いて紹介します。


「同じようで違う」—記事が指摘するRustの関数・クロージャの複雑性

まず冒頭で筆者は、Rust初心者がよく引っかかるトピックとして以下のようなケースを紹介します。

“process_data expects a function that takes an i32 and returns an i32. Both closures match this signature exactly. The first closure |x| x + 1 works perfectly, but the second closure |x| x * multiplier fails. What’s the difference?”

Error: error[E0308]: mismatched types (expected fn pointer, found closure)

さらに、同じ変数を参照する異なるクロージャについても言及します。

“Both closures use data, but one works multiple times while the other stops working after the first call. What’s the difference?”

Error: error[E0382]: use of moved value: ‘closure2′”

こうした一連の疑問に対し、この記事は…

  • 関数とクロージャ(およびそのトレイト)の正体
  • 両者の関連性
  • Rustの内部動作

…を「表と裏」の両面から徹底解説しています。


“型の正体”からクロージャの内部構造まで——記事の核心に迫る

Rustの「関数」と「関数ポインタ」の違い

ここで記事が明らかにする驚きの事実がこちらです。

“when you mention a function by name like add_one, you don’t get a pointer to it. Instead, you get a special zero-sized value that represents that exact function, and calling it is a direct call. This zero-sized value is called a function item.”

つまり、関数名(例: add_one)は生の関数ポインタではなく「関数アイテム」という特殊なゼロサイズ値なのです。

この設計はパフォーマンス最優先。
なぜなら、

  • コンパイラは確定した関数呼び出し(static dispatch)ができる
  • インライン化・デッドコード削除など最適化が最大限効く

というメリットがあるからです。

“関数ポインタ”にコーワーションするとき「柔軟さ」を取る

一方で、異なる関数を同一変数に格納したい場合は明示的に関数ポインタ型(例: fn(i32) -> i32)とし、ここで初めて“動的ディスパッチ”が行われます。

コード例:
“`rust
fn add_one(x: i32) -> i32 { x + 1 }
fn add_two(x: i32) -> i32 { x + 2 }

let f1: fn(i32) -> i32 = add_one;
let f2: fn(i32) -> i32 = add_two;
// f1もf2も同じ型
“`

「関数ポインタ」化すれば、異なる関数でも1つの変数に束ねられる代わりに、呼び出し時の最適化(例えばインライン化など)は犠牲になります。
この柔軟性とパフォーマンスのトレードオフがRustらしいポイントです。


クロージャの「隠れた三すくみ」—Fn, FnMut, FnOnce

記事はクロージャの「キャプチャとトレイト」についても詳細に掘り下げています。

“The Rust compiler automatically assigns one of three traits to each closure based on how it uses captured variables:
– FnOnce – Moves Captured Variables
– FnMut – Mutates Captured Variables
– Fn – Only Reads Captured Variables”

  • Fn … 参照だけ(読み取り専用)
  • FnMut … 可変参照(値の変更OK)
  • FnOnce … 所有権ごとmove(値の消費・使い捨て)

この「3つのクロージャトレイト」は、「クロージャが外部変数をどう扱うか」によって自動的に決定されます。

例えばmove付きクロージャは「必ずしもFnOnce」ではなく、処理内容によってFnやFnMutになることも(読み取りしか行わなければFnになる)。

このような“実際の動作から決まる”という割り切った設計は、最初は難解ですが理解すると非常に論理的。
これはRustのIDE活用(型ヒントやエラーメッセージ)を意識したデザインとも言えます。


「トレイト階層とダックタイピング」=Rustクロージャの真骨頂

記事本文では、トレイト継承で成り立つ「クロージャ・トレイトの階層」にも触れています。

“The three closure traits form a hierarchy through trait inheritance:
Every type that implements FnMut must also implement FnOnce
Every type that implements Fn must also implement both FnMut and FnOnce”

つまり

  • FnOnce(一度だけ呼べる)が最も制約が緩く、
  • FnMut(何度でも呼べて、内部状態を変えられる)が中間、
  • Fn(何度でも呼べて内部状態不変)が最も制限が厳しい

という親子関係になっています。

この設計のおかげで「よりジェネリックなコード」が書けます。
例えば「一度しか呼ばない予定」の関数でも、FnMutやFnなクロージャが渡せるわけです。
この階層構造があることで、Rustは“型安全かつ柔軟なコールバック関数”を実現しています。


「クロージャは実は匿名の構造体」—Rustコンパイラのマジック

さらに記事は、クロージャの裏側で行われている“デシュガー”(糖衣構文の剥離)についてこう説明します。

“When you write a closure, the Rust compiler internally transforms it into a compiler-generated anonymous struct with trait implementations: … When the closure is called, it consumes itself (self) and drops the moved data.”

外部変数をキャプチャするクロージャは、変数ごとクロージャ専用の匿名構造体(environment struct)に包まれる、という作り。
所有権移動の必要があれば、そのような構造体となり、mutな操作をすればmut参照をフィールドに持つといったイメージです。

この仕組みのおかげで、C++のラムダや多くの言語のクロージャよりも「型安全で最適化が効く」実装になっています。

Rustコンパイラの最適化フロー例

  • 「環境変数キャプチャなし」なら、関数ポインタに型強制可能→最高速
  • 「所有権move」なら、1回の消費だけ許容する構造体→二重free/競合リスク防止

「なぜ、クロージャと関数は代替できたりできなかったりするの?」

記事の素朴な疑問(そして“初心者殺しのエラー”)に対して、決定的なまとめが書かれています。

“Non-Capturing Closures Become Function Pointers

When a closure doesn’t capture any variables, it doesn’t need the hidden struct we saw earlier. Since there’s no captured state to store, Rust can coerce such closures directly to plain function pointers: … But as soon as the closure captures variables, this coercion is no longer possible:”

要するに——
外部変数を一切キャプチャしないクロージャは、「ただの関数」扱いされ、関数ポインタにそのまま強制代入できる(=どこでも使える)
– 逆に「環境変数を一つでもキャプチャすれば」、構造体として表現されるので関数ポインタにはできない(構造が違うため)

このちょっとした違いが、大きな“型の壁・代入可否のエラー”(冒頭のmismatched types)を生むわけです。


実例で理解しよう — 私見を交えて

例1: サブルーチン選択用の配列にクロージャを格納したい

よくありがちな、「fnポインタ配列で分岐処理をシンプルに管理したい」ケース。

rust
let strategies: [fn(i32) -> i32; 2] = [|x| x + 1, |x| x * 2];

—このコードは、strictには動きます。なぜなら、どちらのクロージャも外部変数を参照していないから、関数ポインタに型強制できるため。

しかし、
rust
let multiplier = 3;
let strategies = [|x| x + 1, |x| x * multiplier];

と書いた瞬間、「E0308エラー」(expected fn pointer, found closure)が発生する。multiplierという外部環境をキャプチャしたため、もはや同じ配列に格納できないのです。

例2: 何度でも呼べるはずが…所有権moveで一発アウト!?

クロージャによっては、外部変数の所有権をmoveで奪ってしまう場合があります。
この場合、1回呼ぶと消費され二度目はコンパイル・エラーに。
逆に参照のみなら、何度でも呼べる。

この流れ、単なる仕様に思えますが、「並列処理・スレッド生成」や「非同期コールバック設計」で頻繁に問題となるので、覚えておいて損はありません。


Rust流 — “安全と柔軟性”を同時に実現した設計美

ここまでの内容を踏まえたまとめとして、記事はポイントを端的に整理しています。

“Function Items vs Function Pointers: Every function creates a unique, zero-sized, compiler-generated type that enables powerful optimizations through static dispatch. Function pointers use dynamic dispatch but allow storing different functions in the same variable.

Closure Capture Modes: Closures are categorized by how they capture variables. FnOnce moves captured variables, FnMut mutates them, and Fn only reads them.

Trait Hierarchy: The closure traits form a hierarchy through supertraits where Fn extends FnMut, which extends FnOnce.

Compiler-Generated Structs: Closures are transformed into anonymous structs that hold captured variables and implement the appropriate closure traits.

Seamless Integration: Non-capturing closures can be coerced to function pointers, while function pointers implement all closure traits. This creates bidirectional compatibility between functions and closures.”


“もう関数とクロージャで迷わない!”—設計思想を知ればRustはグッと身近に

Rustの関数とクロージャの裏にある設計思想、本質を知っておくことで

  • 型エラーの謎(なぜ通る/通らないのか)
  • データの所有権や並列処理時の“予期せぬエラー”対策
  • 柔軟かつ高速なコールバック設計
  • 型推論やIDE補完との連携

…まで理解が一段深まります。

表面的な文法説明にとどまらず、なぜこう設計されているのか、その背後にある「最適化」や「安全性へのこだわり」、「トレードオフの美学」にぜひ注目してみてください。

これからRustでシステムを作ろうとするなら、「関数」「ポインタ」「クロージャ」「トレイト」すべてをリンクさせて考える習慣が重要です。

かみ砕いて語れば語るほど、Rustの奥深さ(そして賢さ)に気づかされるはず。
あなたのRust学習がよりスムーズになることを祈っています。


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