この記事の途中に、以下の記事の引用を含んでいます。
What I Learned Making 34 Novels with Claude Sonnet
AIと創作の新時代への扉──記事概要
本記事は、AIモデル「Claude Sonnet」を主軸に、他の補助ツールも駆使しながらなんと34タイトルものSF/ファンタジー小説を執筆・公開してきた一個人による、体験と洞察のレポートです。
AIで小説を書く、しかも多数の作品を継続的に生産するという試行錯誤の中で見出した具体的なワークフローと、その過程で遭遇したユニークなAIの振る舞いが詳細に語られています。
AIライティングはもはや一時の興味や話題にとどまりません。
本記事は、AIによる本格的な物語創作・出版の未来像、そしてその“癖”との向き合い方までを実践者の視点から照らし出す貴重なドキュメントです。
AI小説執筆の現場から──プロセスと「あるある」事例
記事の著者は、「Claude Sonnet」を用いた小説執筆の試行錯誤を経て、シンプルかつ直接的な作業フローを確立します。
まず、題材となるジャンル(主にコージーファンタジーやコメディファンタジー)を決め、AIにそのジャンルの主要要素を「research.md」にまとめさせます。
プロットをAIとブレインストーミングし、「plot.md」として保存。
さらに、世界観・登場人物など複数の補助ファイル(emotional-arc.md, sensory-details.md, magic-system.md, character-profiles, world-history.md, writing-style.md等)を生成して設計を固めていきます。
以後、最も重要な工程が「chapter-by-chapter.md」の作成。
ここで各章の要点や進行チェックボックス、章ごとの単語数などを明記した上で「最低30章」構成にすることを徹底している点が興味深いです。
著者はこう述べています。
This last aspect is important because the AI will try to create as short a story as possible and acts “lazy” if you let it.
(AIは放っておくとできるだけ短い物語を書こうとし、「怠ける」傾向があるため、最低30章と明記することが重要だ)
このようにAI側の「省力化傾向」へ人が明確に枠組みを与えることで、作品としての量と密度を担保しているわけです。
なぜ「章ごと」「クリーンコンテキスト」が重要なのか?
AI執筆の肝は、「全体を一度に書かせない」こと。
著者が繰り返しているのは、1章ごと(=「ループ」)にAIへ新たなコンテキストを与え直し、その都度前章を読ませたうえで次を執筆させることの重要性です。
If you just have the AI write the next chapter it will often place characters in random locations, or a character that died in the previous chapter miraculously comes back to life.
(AIにただ次の章を書かせていると、キャラがランダムな場所に現れたり、前の章で死んだキャラがなぜか復活したりする)
こうした「連続性崩壊」はAIによる物語生成の大きな弱点。
人側の明確な指示と、定期的なリセット=“クリーンコンテキスト”で進めることが品質維持の要となっています。
AIに限界なく文章を生成させると、「文脈過多」による破綻も起きやすい。
人間が逐次的に「監督」しつつ、チェックポイントごとに構造を再提示することで、初めて“まとまった物語”として成立するのです。
執筆から本格的な「本」そして共有・拡張へ
1. イラスト・表紙画像までもAI活用
物語世界を具現化するイメージ生成も工程に組み込まれています。
登場人物設定やあらすじをAIに渡して画像用プロンプトを作成、さらに画像生成サービス(fal.ai等)でキャラや表紙を生成することで、読む前から読者へ世界観を伝えるコンテンツ作りもAI主導で実現しています。
2. 出版・フォーマット変換まで自動化
PandocによってMarkdown原稿をHTML, ePub, PDF化し、「batchファイル(build.bat)」までAIに書かせるオートメーションも実践。
「metadata.yml」なども活用し、読書用に各ファイルを整理。
これでAI生産小説とは思えないほど整った“製品”が出来上がります。
3. ウェブ公開と「ライブラリ」構築
Puter.com等のサービスを使い自作の小説サイトや、書籍専用のライブラリサイトまでAIのサポートで構築。
多作品を一元管理するため、「The Library」と名付けたポータルを設け、それぞれの作品へ橋渡ししています。
They represent the realization of a dream I have had for a long time, but never have had the time or ability to complete.
(これらの作品群は、かつて時間や能力が足りず実現できなかった自分の夢の結晶である)
単なる創作という枠を越え、「持続的なアウトプット×個人出版」をAIがいかに可能にするか、という最先端の事例と言えるでしょう。
“AIあるある”はクリエイションの敵? 味方?
記事後半では、「Claude Sonnet」が出力する物語の“癖”についても多く言及されています。
例えば──
- キャラ名の使い回し:「Lyra」「Elara」「Kyle」など毎作よく登場。同様に悪役は「Malachar」「Mal-」で始まりがち。
- 舞台の被り:「Whispering Woods(ささやきの森)」という地名への異常な執着。
- 物語構造のワンパターン化:主人公が“特別な存在”から“多くの仲間の一人”に帰着し、異能を学ぶ“学校”設立路線への誘導がち。
- 二元対立の“第三の道”:善悪どちらにも偏らない、「妥協」的なエンディング。
... if you need to have more unique storylines, I suggest you give your prompts advice to avoid those names and situations.
(より独自の物語にしたいなら、プロンプトでこういった名前や状況を意図的に避ける工夫が必要)
こうしたAI物語生成の“癖”は、AI自身が学習データから抽出した「よくあるパターン」の投影であると同時に、創作する上での落とし穴にもなります。
プロンプト設計や編集時の意識的制御が欠かせない、と著者は分析しています。
AI小説創作の意義と課題──筆者の視点から考察
AIが引き出す「継続的創作」の新境地
著者の最大の成果は、「自分ひとりでは絶対に成し遂げられなかった創作の夢」を、AIの補助により次々と“実現可能なタスク”へ落とし込み、体系的に生産・公開できている点にあります。
これはまさに、
– 「アイディアはあるが、形にできない」という創作者の最大の悩みをAIがブレイクスルーした事例
– 工程の手順化・分割化により個人でも“大量生産”が可能になった現実
– アウトプットの持続性・網羅性(→34タイトル!)が実証されている
に他なりません。
「AIらしさ」と独創性──両立のための試行錯誤
一方、AIの癖や、「ワンパターン化する物語構造」は、AI小説の品質/魅力の限界として無視できません。
根本的にAIは過去のパターンに依存しやすいため、放置すれば「既視感あるテンプレ」になりやすい。
これは人間執筆者にも共通しますが、AIの場合は同じ入力から同じ出力が容易に起きやすいという点でより顕著です。
このためプロンプトの工夫や、意図的に情報をコントロールする編集作業がますます重要になります。
さらに、作品ごとの「作家らしさ」や「差別化」を出すためには、AIへの指示のみならず、できれば創作者自身が「最終目的」や「世界観の核」を常にモニター・調整していかなくてはなりません。
AI×創作は「限界」か「入口」か
大規模AIによる小説生成には、何百ページもの物理的な「執筆作業」を僅かな工数でやってのける驚異的な力がある半面、
– 文脈の崩壊
– 人物や舞台、プロットの齟齬
– 構造や世界観の陳腐化
などAIならではの「落とし穴」も随所に存在します。
特に、ストーリーに対する“冷静な第三者編集者的アプローチ”──(評価ファイルを作り、計画修正して、余計な改変を加えず修正させる)という工程を著者が必須とみなしている点は極めて示唆的です。
より高次のクリエイションを目指すなら、「AIをどうコントロールするか」「どの工程を人がチェック、リライトするか」が大きなイシューになっていきます。
まとめ──AI時代の創作は、“下請け”ではなく“共演者”へ
本記事を通じて最も強く伝わるのは、“AIによる物語創作”がもはや単なる効率化の手段ではなく、「創作者とAIが協働する新たな創造」の時代に突入している、という現実です。
著者ほど大規模にAI執筆を実践した例は少なく、そのプロセスや“癖”までを冷静に観察・内省している点からは、ツールとしてのAIを超えた“共演者”としての可能性が感じ取れます。
読者がもし
– 創作のアウトプットに行き詰まりを感じている
– AIツールを単なる要約や資料作成ではなくクリエイティビティ発揮に使いたい
– プロトタイプ的な小説制作の自走プロセスを知りたい
のであれば、本記事に詰め込まれたノウハウや「AIの癖との向き合い方」は確かなヒントとなるでしょう。
AIがより高性能化・多様化する今後、創作者側の“監督力”や“独自性追求欲”がますます問われていきます。
AI任せでは出せない「手触り感」や「世界に一作だけの物語」を志向するなら、人間自身の意思と設計をどこでどう交差させるか──
それが今、「AI小説創作」という最前線の営みであることを、本記事は生きた記録として証明しています。
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