この記事の途中に、以下の記事の引用を含んでいます。
「AI万能時代」の終焉?コーディング現場がいま語ること
AI、とりわけ「大規模言語モデル(LLM)」が到来してから、私たちのプログラミング環境は一変したかに見えます。
しかし、現場のエンジニアが感じている世界は、必ずしも「より楽に素晴らしいコードを書けるようになった」という単純な物語ではないようです。
今回取り上げるOn coding with LLMsでは、AIブームのピーク感と、そこから見えてきた現実、そしてAI活用の限界が率直に語られています。
LLM中心のAIコーディングに過剰な期待や不安を持つすべての開発者・IT関係者に一読を勧めたくなる記事です。
まさかの“退屈宣言”!?AI活用の「リミット」とユーザーのリアル
この記事の冒頭は、AIに対する皮肉混じりの倦怠感から始まります。
筆者はこう主張します。
“It looks like we are near the peak of the AI mania. The usefulness and the limitations of this technology are clear now. What we see now are attempts to overstretch the idea and apply it where it will never work, much like with blockchain and cryptocurrencies several years ago.”
この一節が象徴的です。
AIブームは頂点に達し、今や「何でもAIで解決!」という幻想的な拡張が始まっているが、実際には“AI万能”が通用する領域には明確な限りがある、と筆者は冷静に指摘しています。
これは、数年前の仮想通貨・ブロックチェーンの熱狂が現実逃避に変わった歴史的流れにも似ています。
印象的なのは、筆者がAIコーディングについて「もはや怖くも、興奮もしない。退屈だ」と感じている点です。
ユーザーは「味気ないお絵描き」や「役立たずな要約」「どこにでも現れるAIチャット」に飽き飽きしてきている、と厳しい意見を述べています。
コーディング効率化は幻想か?工程全体から見るAIの“本当の効果”
筆者は一方で、LLMによるコーディング支援を全面的に否定しているわけではありません。
テストコードや言語変換、スクリプト作成など「面倒くさい単純作業」には極めて有用だと認めます。
しかし、そこで生み出されるものを「完成品」と錯覚する危険性を強く警告しています。
さらに興味深いのは、コーディングの工程全体からAI効率化の効果を冷静に見積もっている点です。
“writing and reviewing the code takes around 30% of an average developer’s time. The rest is spent in discussions, replying to emails, reading documentation, troubleshooting, learning, or even personal stuff. …If you can speed up coding by 20%, you only can expect a 5% reduction in the project duration (see Amdahl’s law).”
コードを書く行為はソフト開発作業全体のほんの一部(経験則で約30%)に過ぎず、仮にAIでコーディング速度が2割アップしても、プロジェクト全体の短縮効果は極めて限定的(アムダールの法則)という現実的な分析です。
AI活用の真価を冷静に見極めるうえで、極めて本質的な視点といえるでしょう。
AIが引き起こす“技術退化”と「vibecoding」とは?
筆者は「vibecoding(雰囲気コーディング)」という現象にも苦言を呈しています。
これは、LLMなどのAIを使ってとりあえず動くコードを大量・高速に生成し、それを「製品」の初版にまで押し上げてしまう手法です。
“I never worked on a project where I would need to generate a lot of mediocre code quickly with an LLM.”
著者自身の体験からも、大量の“並コード”を機械的に迅速生産する必要性はほぼなかったと断言します。
むしろ、そうやって生まれた初期プロダクトの品質問題(スケーラビリティ、パフォーマンス、保守性)を、後から人間がひたすらリファクタリングするという状況――その典型として「米国西海岸のスタートアップから東欧のエンジニアが雇われ、混沌とした初期コードを刷新する」という、リアリティあふれるエピソードが紹介されています。
さらに筆者は、AI主導の雰囲気コーディングが次世代エンジニアの成長阻害につながる危険にも言及します。
“Less young people will be able to solve technical problems because they will rely on AI when studying. …you will never learn how to troubleshoot complex or novel issues that AI cannot help you with. Cognitive skills require training and practice just like physical ones.”
これは強い警鐘です。
AI活用が進めば進むほど、自力で根本的なトラブルや新規課題を解決できない“技術的退化”が広がるリスクがある、というのです。
AI時代に必要な“本当のスキル”とは?——プロンプト工学・メタプログラミングの視点
また筆者は「プロンプトを書くスキル」の重要性にも目を向けています。
非英語話者にとって、ときに細かな要件を文章で完璧に伝えるより「自分でコードを書いたほうが早い」場合があり、AIへの指示・設計力が意外と高いハードルであることを認めます。
“prompting is a skill on its own. Sometimes it’s easier to write code than to explain verbally in every detail how it should work, especially if English is not your first language.”
この指摘は、AIコーディングの現場で多くの人が既に直面している実感でしょう。
AIに振り回されず、本質的な自動化・効率化を徹底するには、「膨大なAI生成コード複製」ではなく「設計やメタプログラミングによる根本的解決」をめざすべきだ、というのが筆者の持論です。
人間だからこそ…LLMの限界と“健康への影響”も
さらにLLM進化の先にある“人間であることの意味”にも思いが至ります。
“As Noam Chomsky noted almost three years ago, LLMs are not a replacement for human mind; they are useful, but cannot think in the way that we do. The mental health impact of AI is under active study now.”
AIはあくまで便利なツールであり、人間の思考や創造性の本質的な置き換えにはなりえません。
加えて、「AIと“会話”する不自然さ」や「情報過多によるメンタルヘルスへの影響」も真剣に研究され始めています。
AI活用が進んだ分、むしろ新しい形の複雑さやリスクがエンジニアリング現場に発生している、と指摘しています。
AIとの「共生」の道を探るために——読者への示唆
この記事が最も価値あるのは、LLMやAIへの過剰な期待・幻想に警鐘を鳴らすと同時に、AIと人間の「現実的な共生」を現場感覚で提案している点です。
例えば、筆者は自らのアプリ(Aba Search and Replace)について「AIでユーザーのプライバシーを侵さず」「ローカル実行で十分な範囲で活用する」という具体的な方針を明示しています。
また、「このブログ記事自体もAI非使用」で書いたと述懐しており、それ自体が無自覚なAI依存に気づく手がかりにもなっています。
AI時代における開発者のあるべき姿勢は、“ツールとしてのAI”を冷静に使いこなし、依存しすぎず、人間オリジナルな設計力や問題解決力を手放さないことです。
応用上の課題は今後も次々と現れますが、「AIコーディング万能説」に流されるのではなく、現場目線で効く本質的な方法論と学び方を常に模索する姿勢こそが重要だといえます。
【まとめ】AI時代のコーディングを“他人事”にしない——個々の現場と主体的な学びの再発見
AI・LLMの進化によって、目の前の作業が多少は「楽」になるかもしれません。
ですが、筆者が繰り返し強調するように、本当のソフトウェア開発は「コードを書く」こと以上に、人との対話、文脈把握、複雑な設計、学習、ときには偶然のひらめきなど、多様な工程で成り立っています。
AI時代の今だからこそ、自分の知識・経験・現場感覚を研ぎ澄ますこと、そしてAIとどう向き合うか主体的に考えることが、コーディング人生の「退屈」を吹き飛ばす最大の武器になるはずです。
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