この記事の途中に、以下の記事の引用を含んでいます。
LLM predictions for 2026, shared with Oxide and Friends
- 誰もが目撃する革新の夜明け──「2026年、LLMとプログラミング産業はどこまで変わるのか?」
- 「もはや言い逃れできない」LLMが生成するコードの質、そして実用フェーズ到来
- 安全な実行環境の実現と「鍵」となる技術
- チャレンジャー型「AIコード事故」、そして私たちの過信への警鐘
- ソフトウェア開発者の「キャリアの価値」──Jeavonsパラドクスの審判
- 「AIだけで新しいWebブラウザを構築」──巨大プロジェクトすら自動化へ?
- 2026年以降の「人間×AIコーディング」像──手打ちコーディングは絶滅危惧種?
- 希望のニュースも!──カカポインコの奇跡的繁殖に見る「未来へのまなざし」
- まとめ──2026年、「AI時代のコーディング」から何を学ぶべきか
誰もが目撃する革新の夜明け──「2026年、LLMとプログラミング産業はどこまで変わるのか?」
2026年初頭、注目すべきAI/プログラミングの予測記事が公開されました。
著者はOxide and Friendsポッドキャストに出演し、1年後、3年後、6年後のテック業界の姿を独自の経験と根拠をもとに語っています。
その内容は単なる夢物語にとどまらず、既に現場に現れつつあるAIの現実味のある”次の一手”に迫るものです。
今回はその予測の要点と、その背後にある技術的・社会的インパクト、そして私たちの未来像について、専門的かつ批評的な視点で紹介・解説していきたいと思います。
「もはや言い逃れできない」LLMが生成するコードの質、そして実用フェーズ到来
驚くほど冷静な主張とその根拠
記事冒頭、「I think that there are still people out there who are convinced that LLMs cannot write good code. Those people are in for a very nasty shock in 2026. I do not think it will be possible to get to the end of even the next three months while still holding on to that idea that the code they write is all junk and it’s it’s likely any decent human programmer will write better code than they will.」(LLM predictions for 2026, shared with Oxide and Friends)
この引用が象徴するように、2026年にはLLM(大規模言語モデル)が生み出すコードの質について「もはや否定しようのない事実」と化すだろうというのが筆者の見解です。
しかも自らの実体験だけでなく、「Claude Opus 4.5やGPT-5.2の登場以降、自分が手書きしたコードは全体の一桁パーセントになった」というのは、多くの上級プログラマーにも共通する状況だと語ります。
技術的転換点は「強化学習により訓練された推論モデル」?
この劇的な変化の技術的要因として、2025年に各社が競って導入した「コードに特化した強化学習(RL:Reinforcement Learning)による推論モデル」の存在を挙げています。
コード生成の正しさはテストなどで「自動評価」しやすく、RLと非常に相性がよい──この指摘の通り、AIがただ膨大なデータを丸暗記して返すだけ、という段階から、実際のプログラム作成に必要な”理由付け”能力が急速に高まっています。
独自解説:現場の肌感覚と”LLMの新境地”
実際、2023〜2024年の”AIコーディング”の多くは「ゴミコード」と揶揄されたのも事実でしょう。
筆者も多くの開発現場でLLM利用の現状を目撃してきましたが、LLMに質問しても「テンプレートのようなコード」「表面的な修正がうまくいかない」などの声が目立ちました。
しかし、直近でOpenAIやAnthropicの最新モデルに触れたときの”異様な精度”は驚嘆に値します。
テスト駆動型でコードを与える→レビューと理由を求める→望ましい解法へ到達する、という反復可能な対話が、LLMにとってかなり”自然”になっているのです。
では、今後ソフトウェアエンジニアはどう変容すべきでしょうか?
「LLMが何を間違え、なぜ正しいのか」を構造的に解釈できる力、すなわち”人間の構築的批判能力”こそが新しい競争源泉になるでしょう。
安全な実行環境の実現と「鍵」となる技術
Sandboxing──意外なほど遅れてきた必須課題
筆者はこう述べます。
「I think this year is the year we’re going to solve sandboxing. I want to run code other people have written on my computing devices without it destroying my computing devices if it’s malicious or has bugs. … It’s crazy that it’s 2026 and I still pip install random code and then execute it in a way that it can steal all of my data and delete all my files.」
2010年代から叫ばれ続けている「サンドボックス問題」。
なぜ今なお決定的な解が存在しないのか?
この課題は、AIが自動的にコードを生成し、それが現実に直接実行される「新しい危険」と直結しています。
とりわけ”prompt injection”(プロンプトインジェクション、AIへの意図しない命令注入)など「AI起因の新種の脆弱性」増加が背景にあります。
解説:「WebAssembly・コンテナ」+UXの磨き込み
実際にはDocker等のコンテナ、WebAssemblyなどサンドボックス技術は既に実用フェーズにあります。
が、それを「違和感なく・セキュアに使い回せるだけのUI/UX」が揃わず、つい素の状態で”pip install”等してしまう現状は、まさに2020年代後半の「ソフトウェア実践者」のリアルです。
私の見る限り、巨大な収益インセンティブが生まれた今、UX主導の「安全でストレスフリーな実行環境」普及は不可避でしょう。
むしろ今後3〜5年で、エンドユーザーが意識せずとも”完全隔離実行”が保証される世界が実現する可能性が高いです。
チャレンジャー型「AIコード事故」、そして私たちの過信への警鐘
「Normalization of Deviance」の本質的警告
著者はAIエージェントのセキュリティについて「Challenger disaster」の比喩を持ち出します。
すなわち、
「The Normalization of Deviance describes the phenomenon where people and organizations get used to operating in an unsafe manner because nothing bad has happened to them yet, which can result in enormous problems (like the 1986 Challenger disaster) when their luck runs out.」
人は「今まで大丈夫だったから」と安全対策を怠り、やがて大事故を招く。
そしてAI業界においても、root権限でエージェントを走らせながら何度もスルーしてきた結果、いずれ致命的な「AI起因の情報漏洩/機器破壊」が現実になるだろうと警告します。
批評と展望──「事故は起こる前提」で業界設計へ
これは現実を突いた洞察です。
例えば2022年〜2025年、AIに脆弱なAPIキーや機密情報が吸い上げられた例はすでに多数ありましたが、「目立った大惨事」扱いされず、日常的な過失へと”正常化”されてきました。
安全文化の変革──すなわち「事故は起こる前提」→ソフトやインフラ設計レベルで”権限委譲・監査・自動封じ込め”を徹底することが、次の数年で新しい常識となると考えます。
ソフトウェア開発者の「キャリアの価値」──Jeavonsパラドクスの審判
根本的問い「AIでコーディング職は消えるか、もっと重要になるか」
筆者はこう挑発的に語ります。
「Does that mean that our careers are completely devalued and we all have to learn to live on a tenth of our incomes, or does it mean that the demand for software, for custom software goes up by a factor of 10 and now our skills are even more valuable… I think by three years we will know for sure which way that one went.」
AIによってソフトウェア生産コストは劇的に低下。
その結果「供給過剰で技術者価値が減る」のか、「需要爆増でさらに不可欠な存在になる」のか。
まさに情報産業を自分ごととして捉える読者にとって避けて通れない論点です。
私見:「価値の源泉は”仕様策定”と”品質保証”へ移行する」
歴史的に見ると、自動化は常に「価値の源泉」を上流工程へ押し上げてきました。
パンチカードオペレーター→プログラマー→システムアーキテクト、といったように。
今後は「顧客課題を説明し、実装可能な形に仕様化する力」「多様なAIが作った成果を安全かつ高度に品質担保する能力」が技術者の新しい専門性となり、むしろ”一桁以上の付加価値”を享受する人材も現れるでしょう。
「AIだけで新しいWebブラウザを構築」──巨大プロジェクトすら自動化へ?
「賛否両論の壁」を越える、AI主導型大規模開発の時代
今後3年間で、「AI主導で新しいウェブブラウザが作られても、もはや誰も驚かない世の中になる」。
これが筆者の予測です。
大規模プロジェクトに対して「LLMは現実的でない」とする懐疑論を、一挙に覆すインパクトがあるでしょう。
解説:AIの得意分野=”検証容易かつ試行錯誤可能なプロジェクト”
ウェブブラウザの実装は、形式的テスト・互換性検証・実際の動作確認といった「客観指標」が豊富です。
AIは、目標が明確で、フィードバックが自動取得できる領域でこそ爆発的能力を発揮します。
私の感覚でも、既にAIを活用したCI/CD・自動テスト駆動開発は、部分的に実運用段階に達しています。
2026〜2028年には、AIがドキュメント・仕様を読み、何百もの機能を統合する「新ブラウザ実装」事例が現れても不思議はありません。
2026年以降の「人間×AIコーディング」像──手打ちコーディングは絶滅危惧種?
「人間の役割はどうなる?」本質部分はむしろ増える
「I think the job of being paid money to type code into a computer will go the same way as punching punch cards […] in six years time, I do not think anyone will be paid to just to do the thing where you type the code.」
パンチカード時代の終焉同様、「純粋な手書きコーディング」は消滅、と筆者は断言します。
ただし「人間の開発者の重要性は消えない」。
実際、システム設計や要件折衝、プロジェクト全体の構造統制といった領域は一層の専門性を要し、AIを味方につけた人間の価値はさらに際立つという指摘には納得感があります。
希望のニュースも!──カカポインコの奇跡的繁殖に見る「未来へのまなざし」
ちなみに、長く続くAIや技術への重圧気味な話題の後、筆者はカカポインコ(ニュージーランド固有の絶滅危惧オウム)の繁殖季の好調予測という前向きなニュースも織り交ぜています。
「人間もAIも未来に不安ばかりを覚えるのではなく、小さな、でも確かな希望に目を向けてほしい」。
この柔らかな視点も、今後のテック業界が目指すべき”ウェルビーイング”を示唆しています。
まとめ──2026年、「AI時代のコーディング」から何を学ぶべきか
1. 技術は進化しきった段階へ
AI(LLM)が”まともなコード”を吐けることは2026年、もはや否定しようのない事実へ。
現場も産業も、それを使いこなす前提でしか生き残れない時代が目前です。
2. 「安全と信頼」の再構築が必須
自動生成されたコードの爆発的普及に伴い、「サンドボックス実行」「権限分離」「プロンプトインジェクション対策」「組織文化としてのセキュリティ重視」など業界構造そのもののシフトが不可欠に。
3. “付加価値”は更に上流へスライド
仕様策定、AIと協働する指示力、多様な成果物の統合・検証力がエンジニアリングの本丸になります。
純粋な”コーディングスキル”は無価値化するのではなく、その上で如何に”意味ある仕事”を生み出せるかが問われます。
4. 不安を力に変え、希望も忘れず
急激な変化への不安や失望も当然生まれます。
ですが、「カカポインコ的幸福」─素朴で現実的な良いニュース─こそ、長い目で見ると私たちの産業や日常の支えになるかもしれません。
今この瞬間、AIとどう向き合うかで”未来の生き方”が決まる──。
一人ひとりの学びと挑戦、適応力こそが、次の10年を左右すると改めて感じさせられる内容でした。
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