この記事の途中に、以下の記事の引用を含んでいます。
Is This a CoreGraphics Framework Bug in macOS Tahoe?
想定外の動作!macOS Tahoeでのディスプレイ管理トラブルの発覚
Macのカスタムウィンドウマネージャ利用者やディスプレイ管理ツール開発者にとって、macOSの標準APIの挙動がおかしくなったとき、どこが問題か切り分けるのは非常に難しいものです。
今回紹介する記事では、著者が開発・利用しているMac向けタイル型ウィンドウマネージャ上で、「外部ディスプレイの接続や解像度変更などに関するイベント通知がmacOS Tahoe(バージョン15)で全く発火しない」という現象を突き止め、その過程や検証方法、Apple公式APIの仕様への疑問点などを非常に詳細に解説しています。
また、WindowsやLinuxと比べてややブラックボックスになりがちなmacOSディスプレイ制御APIの利用課題を浮き彫りにしています。
何が起きた?記事内の核心と検証の流れ
著者はまず自身の体験をこう記しています。
“I’ve had a few reports of issues on macOS Tahoe, but it wasn’t until setting up a new machine that came with Tahoe preinstalled that I was able to reproduce and debug them myself.”
(私の元にmacOS Tahoeでの問題報告はいくつか届いていたが、自分自身がTahoeプリインストールの新しいマシンをセットアップするまで再現やデバッグができなかった。)
この一文からも分かるように、問題は最新版macOSへのアップデート環境でのみ再現する稀な現象です。
問題の詳細 ~Callbackが呼ばれない!?
著者のウィンドウマネージャアプリは、CoreGraphicsの「CGDisplayRegisterReconfigurationCallback」を用いてディスプレイ状態変更(例:モニタの抜き差し・解像度変更)イベントを受け取っています。
記事内では該当するRust版およびSwift版のサンプルコードが提示され、どちらの実装でも「macOS Sequoia(14.x)」まではコールバックが正常に発火するものの、Tahoe(macOS 15.x)では全く発火しないという決定的な現象が確認されています。
“After adding some debug logs at the beginning of the callback, it was clear that the callback was not being triggered at all on macOS Tahoe. Strange.”
(コールバック先頭にデバッグログを入れることで、macOS Tahoe上ではコールバックがまったく発動しないことが明らかになった。奇妙だ。)
この現象が「たまたまRust経由だから」では?との懸念も、著者自らSwiftで再現テストしたことで否定されています。
API仕様に変更なし?公式情報と現場のギャップ
“The Apple Developer website continues to mark CGDisplayRegisterReconfigurationCallback as supported on macOS 10.3+, and there are no deprecation warnings or notes of additional permissions required to call this API as of Tahoe.”
(Apple開発者サイト上では、CGDisplayRegisterReconfigurationCallbackはmacOS 10.3以降でサポートされているとされており、Tahoe時点でも非推奨や追加パーミッションの記載はない。)
つまり公式ドキュメント上は、今も現役のAPIのはず。
にもかかわらず、動作しない──これはApple側のバグ(仕様変更かも)と疑うしかありません。
また、macOSにはNSWorkspaceやNSNotificationCenter経由でのディスプレイ変化通知(didChangeScreenParametersNotification等)も存在し、これを利用する実装案も本記事で示唆されています。
現象の背景と意義 〜macOSディスプレイAPIの落とし穴
1. OSアップデートで壊れる「動くはずのコード」
macOSに限らず、システムUIやハードウェア連動系APIはOSアップデートの影響を強く受けます。
特にApple(macOS)はAPIの公開範囲を突然変更したり、内部で挙動を大きく変えることで旧来のアプリケーションに不具合を生じさせるケースが多々あります。
しかも、ドキュメントやデベロッパーフォーラムでの「非推奨」の明記なく仕様が変わっている場合、開発者がそれに気づけないまま不具合を抱えることになる点が大きな問題です。
2. サードパーティツール開発者にとっての死活問題
ウィンドウマネージャや仮想デスクトップ支援ツール、KVM連携アプリ等、ディスプレイ状態の即時な検出は極めて重要な要素です。
こうしたツールがOS標準APIだけで機能を担保し続けられない場合、
– 独自に低レベルAPIを使ってポーリングしたり
– NSNotificationベースで代替したり
– 外部スクリプトや権限周りの「裏技」に走らざるを得ず
アプリ設計そのものが複雑化・不安定化する恐れもあります。
特に今回のような「Sequoiaまでは動くがTahoeで動かない」という挙動差は、ユーザーによる不具合報告の理解・再現・修正調査すら難しくします。
私の考察:Appleにとっての仕様安定性責任とOSS開発の苦労
では、なぜこのような挙動不安定が生じてしまったのでしょうか。
まず、Appleの大型OSアップデートはセキュリティやシステムアーキテクチャの刷新を伴うため、何らかの理由でCoreGraphics周りの処理パスが変更されたことは十分に考えられます。
一方で公式の非推奨・仕様変更アナウンスが皆無という現状は、コミュニティ開発やツール互換性の観点から大きな問題です。
著者も記事終盤で次のように吐露しています。
“The imposter syndrome that never really goes away is telling me that I probably missed something somewhere, which is why I’m sharing these details – hopefully someone can shed some light on where I may have gone wrong. But if that’s not the case, it would be great if the folks at Apple could just… stop breaking things.”
(……もし私自身が何かを見落としているのなら、ぜひ誰かに指摘してほしい。しかし、そうでないならAppleはいい加減余計なものを壊すのをやめてほしい。)
まさに「OSSコミュニティとAppleの間に生じる情報ギャップ」「技術的負債」そのものです。
沙汰の外部依存性が強いソフトウェアほど、このような”見えない仕様変更”によるトラブル被害は甚大であり、ユーザー/コミュニティ双方の信頼を損ねかねません。
ケーススタディ:他のAPIやプラットフォームではどう対処しているか
WindowsやLinuxの例
WindowsではWM_DISPLAYCHANGE、Linux(X11やWayland)でも似たようなディスプレイイベント通知機構が用意されています。
これらは規約変更があっても比較的広くアナウンスされており、コミュニティドキュメントやAPIレベルの非推奨マーク等で追従できる環境が整っています。
また、非公式な挙動変更についてもGitHub IssueやStack Overflow、Reddit等で早期に情報共有・解決の糸口がつかめるコミュニティ文化があります。
macOSの場合、Appleの密閉的なAPI運用ポリシー(公開仕様から細部まで読めないことが多い)およびバイナリ互換性重視の姿勢などが障壁となり、こうした早期問題検出・横断的検証が難しいのが現実です。
代替策を模索する開発者たち ——が、根本解決には程遠い
記事でも紹介されている、NSNotificationを活用したディスプレイイベント検出(例:didChangeScreenParametersNotification)は、実際に多くのアプリ開発者にとって現実的な「逃げ道」となります。
しかし、これらのAPIが公式に旧来のCGDisplayChangeSummaryFlags全てにマッピングできるわけではなく、デバイス追加/削除イベント細分化やユーザー権限(アクセスビリティパーミッションなど)への影響も無視できません。
つまり「直接的な置き換えではなく、必要要件に応じて複数APIでそれぞれ部分実装するしかない」という、アーキテクチャの断片化・設計複雑化に直面せざるを得ません。
結論:Apple開発環境の本質的な課題と、開発者が学び取るべき教訓
今回の記事から私たちが得られる最大の教訓は、「公開APIがいかに将来のOSでそのまま機能し続けるとは限らない」という現実です。
さらに、
– コア基盤APIが突然破壊的変更を受けるリスクを認識し
– 「再現性あるバグレポート」と「検証ログ」を常に用意し
– 可能な限りコミュニティ内で相互検証・情報共有を進め
現実的なフォールバック策(多重API監視や権限エスカレーションの対応準備)を組み込む必要があります。
Apple自身には、
– 公式ドキュメント上での「非推奨」明記の徹底
– 旧環境→新環境間での挙動差についての透明性向上
– 開発者コミュニティとの密な対話
といった改善を強く求めたいところです。
特にタイル型ウィンドウマネージャやディスプレイ連携系OSSがmacOSで増えつつある今、こうした不具合報告と検証記事をベースに相互監視・技術蓄積を一層進めていくことがApple開発者エコシステムの未来につながるでしょう。
「安定するまで動かさない」ことが美徳の世界観ではなく、「変化にどう対応するか」を技術的に問い続けるための一歩として、本記事のような詳細なBug検証記録は現代的な価値を持つものと言えます。
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