お金アプリの「金額を隠す」機能、最適解はフォントだった!? 〜エンジニアなら知っておきたいUIプライバシーの実践論〜

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この記事の途中に、以下の記事の引用を含んでいます。
One does not simply redact amounts in a money app


プライバシー保護の盲点「金額を隠す」はなぜ難しいのか?

みなさんはスマートフォンのお金管理アプリを使っていて、ふと周りの視線が気になったことはないでしょうか?

「自分の支出や残高が誰かに見られるのはちょっと……」
そんなとき便利なのが「金額を隠す(Redact)」機能です。

今回取り上げるのは、One does not simply redact amounts in a money appというエンジニア向け技術ブログ。
記事では、「アプリの金額表示だけを上品に隠すには、実は一筋縄ではいかない」 という現実と、その解決までの渾身の道のりを、豊富な実例とコードつきで解説しています。

一見単純に思える「金額非表示」ですが、少し深掘りしてみるとWEB技術の根本的な難しさや運用上の罠が見えてきます。
この記事では、その主張や発見を引用しつつ、日本の実情や現代アプリの要件を交えて徹底解説・考察していきます。


試行錯誤の記録:「単純に塗りつぶすだけじゃ済まない」エンジニアの嘆き

まず原文の冒頭部分から、この記事で扱う問題意識を紹介しましょう。

For us here at Simon, in the context of a mobile app built to track and analyze money, being able to redact amounts is very convenient.
Say you’re in line at the airport, and you want to quickly record a transaction or check something about yesterday’s gathering with friends. Well, you’d be right to think that last night’s beer budget is no one’s business.

ここでは「現実の生活で人目がある場所でもプライバシーを守る重要性」が述べられています。
確かに、口座残高や飲み代、給与明細など個人的な数字は、無関係な人に見られたくない。しかし、アプリをサクッと操作したい場面は案外多い。
この記事の面白い点は、「隠せて当たり前でしょ」という発想を疑い、技術的な実装がいかに奥深いかを、図解や失敗事例とともに丁寧に解剖しているところです。


「塗りつぶし」から「動的マスク」まで、地獄の実装戦争

第一の挑戦:CSS疑似要素による金額の隠蔽

最初に著者たちが試した方法は、CSSの:after疑似要素で金額の上に四角形を重ねて隠すというもの。
これは一見スマートですが、記事は以下のような問題点を挙げています。

If an amount element already has a :after pseudo-element, we can’t apply our mask without breaking something else.

Not all HTML elements support pseudo-elements ( input elements, as an example).

Depending on accessibility settings, system font tweaks, and custom browser rendering, using width: 100% and height: 100% may not always work well to fully cover all the amount elements with an adequately-sized mask.

要するに、
– すでに:after等で装飾していた場合、競合
– input要素はそもそも疑似要素に非対応
– ユーザーのアクセシビリティ設定により見た目が崩れる
……など、「フロントエンド実装ならではの地雷原」が明らかになります。

このパートは、CSS設計やアクセシビリティに関心のあるフロントエンドエンジニアにとっても極めて実践的な洞察です。
日本の実務でも「ちょっとスタイルを被せるだけなら簡単」という油断で、後々プロジェクト全体が泥沼化する例は枚挙に暇がありません。

第二の挑戦:JavaScript動的マスクの罠

次に取った方法が、JavaScriptで金額要素を動的に検出し、上にマスク用のdivを絶対位置で重ねて表示するやり方。
パッと見効果的ですが、実は

JS takes time to run, and even a few milliseconds is enough to cause flashes of unmasked amounts — defeating the very purpose of that feature.

… Any upstream JS exception happening before the mask was applied would crash the whole bundle, and prevent that part of the code from running at all, therefore disabling the mask altogether.

この方式は「一瞬だけでも金額が非表示にならない」=”FOUT(flash of unstyled/unmasked text)”という根本的な問題が発生。
アプリの命であるプライバシーが守れず、加えてjsエラー一発で全マスク消失というリスクまで孕みます。

加えて、遅延ロード要素やSPA(シングルページアプリ)なら「DOM変化の検知・監視」までコードが膨れ上がります。
よくあるパターンでは「新着明細」「APIで追加されたトランザクション」など、金額ダイナミック表示には特に不向き。

実際、日本でも「VueだReactだとフロントゴリ押しの小手先UI」は、パフォーマンスやアクセシビリティ問題からトラブル体験談が絶えません。

第三の挑戦:サーバーサイド描画による置換

そこで原点回帰し、PHPバッサリで「金額文字列自体を***等に置換しレンダリング」という方針に至ります。
一見堅実ですが、ここでも盲点が発覚――

Since the amounts were replaced with masking symbols, we wouldn’t be able to perform arithmetic operations on the front-end anymore. Although 99% of our computations are done server-side for efficiency, that is still a deal-breaker for rendering charts, as an example, or for playing with numbers in a way that doesn’t require a back-and-forth with the server.

… Unmasking the amounts at will with a gesture is not easily feasible anymore.

「非公開にした瞬間、クライアント側から本物の数値が消え、グラフや集計などのUI機能までも失う」という致命的欠陥。
「7連続タップで一瞬だけ解除」なんてギミックも不可。

また、コード全体で「全出力箇所をformatAmount→redactに書き換え」という運用もメンテナンス性に問題を残します。


驚きの最終兵器:「レダクト用フォント」というシンプルな答え

いろんな実験の末、著者らが辿り着いた意外な答えが「レダクトフォント(redacted font)」です。

And it finally descended upon us, in all its glory: a font. But not just a font, a redacted font.

… using a redacted font has had all the benefits with no compromise for our use-case:
Simple to maintain and implement globally across our app. Just drop in a font file, add a few CSS rules to apply the font conditionally based on a body-level class, and call it a day.
… The DOM still holds all the amounts in cleartext, so we can easily unmask everything at will by reverting to the original font, render charts, or perform arithmetic operations.

「Redacted font」とは、ワイヤーフレームやプロトタイプで使われる、「意味が判読できないがブロック体やグリフで幅を維持する」特別デザインのフォント。
CSSで条件に応じてclass付与するだけで、金額全てが「解読不能なブロック体」に可変。
しかも裏側のDOMや値はそのまま残るので、
– グラフ・集計表示もそのまま機能
– 「一時的解除」もフォント切り替えのみで可能
– CSSの競合やアクセシビリティ問題も解消
– バックエンド・フロントエンド改修不要
– 5kb以下のフォントを一回Loadして永続キャッシュ

実装・運用・パフォーマンス・アクセシビリティについて現時点で最良のバランスと指摘しています。
「発想の逆転」とはまさにこのこと。


日本のアプリ開発にも学び多し!〜個人情報UI設計のヒントと教訓〜

今回の記事で筆者が示した課題と試行錯誤は、決して海外特有の話ではありません。

たとえば日本の銀行アプリ、家計簿アプリ、給与明細Webサービスでも「金額を人目に晒したくない」「スクショ禁止」「一時的にぼかしたい」という要件は絶対に頻出します。

しばしば見かけるのは「JSでぼかす」「スクリーンプロテクター的なオーバーレイ」「再ログインで再表示」といった場当たり対応。
しかし、どれもアクセシビリティや機能性・パフォーマンス、そして保守性の観点で問題を抱えがちです。

記事で詳述された各手法(CSS疑似要素、JSオーバーレイ、サーバー置換)の欠点は、
本質的には「開発効率」「運用コスト」「UI/UX」「アクセシビリティ」「多様なデバイス」「セキュリティ」の観点で、全ての現場で起きうる難しさです。

その上で「フォントによる非表示」という泥臭いながらも最もバランスの取れた解決法は、日本発の独自UIや、金融系・個人情報主体のWebアプリ開発者ならぜひ知っておきたい選択肢です。


最終結論:「見た目」と「データ」を分離せよ!UI情報隠蔽の設計指針

最後に、本記事が示す最大の教訓をまとめます。

UIの「情報隠蔽(Redact)」は、単にCSSやJSで隠せばいいという話ではありません。
むしろ、
1. 「値は“存在”し続け、必要ならリアルタイムでマスク解除できる」
2. 「他の機能(集計・チャート・API連携・アクセシビリティ)に影響を与えない」
3. 「アプリの保守性やパフォーマンスも犠牲にしない」
こうした根源的要件をソリューションとして実現できる実装こそが、“真の情報プライバシーUI”です。

見た目の「変換」だけで本質的な価値が生まれる―――この実装設計、ぜひあなたの現場でも試してみてください!


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