この記事の途中に、以下の記事の引用を含んでいます。
How to find trustworthy news reporting in these times?
信頼できるニュースはどこに? ― 情報社会の中の迷いと疑念
現代の情報社会において、「どのニュースが本当に信頼できるのか?」という問いは、日々大きくなり続けています。
特に大手メディアの組織再編や、オーナー交代などによるジャーナリズムの変質が話題になるたび、私たちは「今、自分が読んでいる情報は正しいのか」と再考せざるを得ません。
今回紹介するHow to find trustworthy news reporting in these times?では、こうした混迷の時代における「信頼できるニュースの見分け方」について、複数の角度からそのアプローチが紹介されています。
この記事の内容は、単なる“こうしなさい”というアドバイスを超え、私たちが日々情報の消費者・拡散者としてどれだけ主体的に動けるか、そしてどのような心構えでニュースと向き合えばいいのか、示唆に富んでいます。
メディア不信の深刻化と「個人への信頼」の重要性
記事の中でも最初に触れられているのが、近年のピュー研究所(Pew Research Center)による調査結果です。
But The Hollywood Reporter found those numbers are different when you ask about specific journalists who they may follow and trust.
(「しかし、The Hollywood Reporterによれば、“信頼する特定のジャーナリストがいますか”と尋ねると、結果は違ったものになった」)
この部分が示しているのは、「メディア全体(ブランド)への不信感」は高まっていても、「個々の記者やコラムニスト」についてはまだ信頼が残っている、という現実です。
つまり、「会社としての信頼性」と「ジャーナリスト個人への信頼」は分けて考えられるべき、ということが浮き彫りになります。
受け手が持つ“力”と“責任” ― あなたが選ぶメディアが業界を変える
記事で最も強調されているのは、「ニュース消費者(読者や視聴者)がかつてないほどメディアに対して影響力を持っている」という点です。
The audience has never had more power over the media industry than it has right now.
(「視聴者/読者は、今ほどメディア業界に対してパワーを持っていたことはありません」)
これは、SNSの普及や、サブスクリプション制のニュースサイト、気に入らなければ「即解約」など、ユーザーがメディアを“選別”できる時代になったことを意味します。
さらに、「問題のある報道があれば、X(旧Twitter)やTikTok、Instagram上で声をあげて広め、メディアに抗議が届くようになった」と著者は指摘します。
この流れが強まれば、従来のトップダウン型の報道から、より参加型・応答型の報道環境が生まれるのは間違いありません。
しかし、その一方で「大きな力には大きな責任が伴う」というオールドコミックの引用を持ち出しているのも印象的です。
But, as the Spider Man comic books once noted, “with great power there must also come — great responsibility.” Which means news consumers need to be more engaged in vetting the news sources they consume…
(「スパイダーマンの名言にある通り、“大いなる力には大いなる責任が伴う”。つまり情報消費者は、摂取するニュースの検証にもっと真剣になる必要がある」)
「完璧」なメディアは存在しない? ― 慎重な付き合い方を
多くの人は、ある報道やエピソードに失望し、その瞬間にメディアやプラットフォームを切り捨ててしまいがちです。
しかし著者は、「多くの大手メディアは素晴らしい報道と酷い報道を同時に行い得る」と冷静に指摘します。
But its a frustrating fact about modern media that many outlets — especially the big, legacy platforms — can do great work and terrible work in the same moment.
(「特に大手・伝統的メディアは、同時に良い報道とダメな報道を行い得る。これは現代メディアのもどかしい現実だ」)
この言葉には、「一度の失敗や違和感だけでメディア全体を排除するのは早計だ」という含意があり、“部分的信頼”や“限定的利用”の有効性が示唆されています。
例えば、A新聞の経済部は信頼できるが、社会部に疑問がある、といった“セクションごとの使い分け”も現実的な対策です。
誤情報氾濫時代に必須となる「懐疑心」と“自分フィルター”
フェイクニュースやプロパガンダが溢れる現代、「自分が聞きたい話、信じたいストーリーばかりを無批判に受け入れる危険」にも注意が呼びかけられています。
I’m talking about being careful about assuming a podcaster, Substacker or independent journalist is somehow more virtuous or correct just because they don’t work for a big legacy media outlet and talk about issues in the way you believe.
(「大手メディア勤務でないからといって、ポッドキャスターや独立系記者が無条件で正しいと信じるのもまた危険だ」)
つまり、よく言われる“大手不信” “独立系=正義” といった単純な公式に依存せず、“誰が、どういった根拠で何を伝えているか”を自分で確認するスキルが不可欠、という主張です。
この観点は、情報を「選び取る力」=メディアリテラシーの真髄にあたるポイントです。
「得意分野別」の使い分けと、透明性の観察
著者は「報道機関ごとの“得意分野”を見極める」「どのジャンルで信頼できる報道をしているかを観察し、使い分ける」ことも重要だと指摘しています。
さらに、報道の透明性や、誤報訂正に対する姿勢、ニュースと意見記事の明確な区別、広範な取材源の採用か否か、等も信頼性の判断基準となります。
実際、近年は大手メディアが「社としての倫理基準の明確化」 “ニュース部門と意見部門の分離” “間違いの速やかな訂正宣言” など、読者向けに透明性や誠実さを示すことが多くなっています。
日本でも、例えばNHKの「訂正報道」や新聞各社の「オムブズマン制度」「記者会見での質問内容の公開」など、読者・視聴者の信頼回復を狙う動きが出ています。
「ニュース生態系」を進化させる ― 新しいソースを定期的に開拓しよう
著者が独自の用語として用いる「news ecology(ニュース生態系)」という考え方は、特に現代的です。
人はどうしても、慣れ親しんだ数個の情報源ばかり利用しがちです。
しかし、それが“情報シャットアウト(情報バブル)”の温床となるのは明らかです。
たまには、自分の意見と異なる論調や、海外の有力報道、専門職ジャーナリストの調査記事など“新たな一次ソース”にも目配せしたいものです。
日本でいえば、例えば共同通信の政治解説や、地方紙の現場取材、特定分野に強い独立系メディア(例: 医療・科学系Webメディア、海外調査報道団体など)など、多層的な“自分だけのニュースエコロジー”を組み立てることが、健全で幅広い判断力をもたらします。
批評と応用:“情報の選球眼”は不断の鍛錬こそ最強の防衛策
著者の提案を冷静に考察すると、「結局は“読む側自身の鍛錬に全てがかかっている”」といえます。
なぜなら、情報産業に絶対的な正義や「完全公正な報道機関」は存在しません。
また、読む側の「取捨選択能力」「懐疑心」――いわば“情報の選球眼”――こそが、フェイクニュース時代に自分や家族、組織を守る最良の盾になるからです。
一方で「面倒くさい」「時間がない」という心理もまた現代人特有の課題でしょう。
だとすれば、「自分なりに3~5人の“信頼できる記者・論者リスト”を持ち、定期的に他の声も混ぜてみる」くらいの実践が現実的かつ継続可能な第一歩かもしれません。
おわりに:読む側が「主役」になった新時代への処方箋
最後に、今回の記事の教訓をまとめるなら、
- ブランド名でなく「人」を見ろ
- 完全な媒体は存在しないので使い分ける
- “自分が信じたい話”ばかりを集めるバイアスを自覚せよ
- 新しい情報源や視点の混入を“習慣化”し、情報生態系を進化させよ
- 読む側も“ジャッジする技術”を鍛え続けるしかない
この姿勢自体が、私たちひとりひとりが情報環境を改善する一歩であり、今後ますます混迷する情報空間における最良の自衛策になりうる、と言えるでしょう。
たった今、あなたの情報収集のルーティンも、小さな工夫で「新時代仕様」にアップデートできるかもしれません。
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