Ladybirdが教えてくれた、「Webブラウザ新規開発は本当に無理ゲーなのか?」への意外な答え

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この記事の途中に、以下の記事の引用を含んでいます。
https://lunduke.substack.com/p/ladybird-proves-you-can-just-build


常識を覆す!? 「新規Webブラウザ開発」という無謀への挑戦

今回紹介するのは、「Ladybird」というプロジェクトを通して、“新しいウェブブラウザエンジンを小規模なチームでも作ることは可能なのか?”という命題に真っ向から挑戦した記事です。

記事の筆者は大手ブラウザ開発の現状に疑問を持ち、既存の「無理だ」「やめておけ」という通説を痛快に打ち破るLadybirdの挑戦姿勢を賞賛しています。

「無理だと言われても、やってやる」Ladybirdプロジェクトの野心

まず、記事中ではこう語られています。

“But you can’t just build a new web browser engine,” they exclaim!
“It’s too complex to pull off,” says the stooge. “You need hundreds of developers working on it for years to make a real web browser engine! Better just leave that work to Google and Mozilla!”

日本語訳すると、

「君たちは新しいウェブブラウザエンジンなんて作れない!」
「そんなの複雑すぎて無理だ。何百人もの開発者が何年もかかってやっとできるものだよ。GoogleとMozillaに任せておきなさい!」

という、“常識的な”声がたくさんある、と筆者は指摘します。

一般的に、モダンなウェブ技術を全てサポートしたブラウザをゼロから自作するのは至難の業とされてきました。その背景には、Google(Blinkエンジン)とMozilla(Geckoエンジン)が実質的な寡占状態にある現実、加えて両社とも膨大な開発リソースと予算を投入している事実があります。

さらに筆者は、Ladybirdが立ち上がった時点でも、こうした否定的な意見が“どっと”湧き上がったと明かします。

“In fact, right on cue, when the Ladybird web browser project was announced — a truly “from scratch” browser engine — they trotted out those same lines. By the droves.”

要するに、誰もが「現実的じゃないよ」「絶対失敗する」と決めつけていたわけです。

少人数でもここまでできる!Ladybird開発の進化と可能性

ところが、Ladybirdチームはこうした“出来ない理由”を華麗にスルー。

記事が評価しているのは、既存勢力のネガティブキャンペーンにも挫けず着実に開発が進み、今や次のような領域まで到達していることです。

“Cut the Rope game. Fully playable in Ladybird.”
“Web IDEs? Yeah. Those are working in Ladybird, too.”
“Freaking Discord? Working. It may not be 100% here — the developer calls it ‘usable but a little glitchy’ — but that’s a lot of modern web browser-y-ness working to make that happen.”

つまり:
– HTMLレンダリングどころか、HTML5ゲーム(Cut the Rope)が問題なく動作
– モダンなWeb IDEさえ利用可能
– Discordも“完璧ではないがほぼ動く”

など、最先端のWeb技術対応で凄まじい進度を見せています。

さらに、

“In the span of two weeks, Ladybird added over 12,000 new (passing) web-platform-tests. You’ll note on this bar chart that Ladybird is quickly catching up to Firefox.”

つまり2週間で1万2,000近いWeb標準テスト(web-platform-tests)を通過。
Firefoxなど著名ブラウザに急速にキャッチアップしているというのです。

この事実は業界にとって非常に示唆的です。
なぜなら、「莫大な工数や資金=イノベーションの必須条件ではない」ことを明言しているからです。

なぜ実現できたのか?Ladybirdの戦略とイノベーションを読み解く

ここで注目すべきは、Ladybirdの存在意義と象徴するものです。

現在のウェブブラウザ市場はGoogle Chrome/ChromiumとFirefoxの2大エンジンに実質支配されています。Safari(WebKit)は独自系ですが、WebKit自身もBlink(Chromium系)と密接な関係にあり、多様性が失われているのが現状です。

こうした状況では、ウェブ標準の策定や実装の方向性、デファクトスタンダードの“quasi monopole(準独占)”化が加速します。新規参入しようとするプロジェクトや開発者が尻込みするのも当然です。

Ladybirdはこの現状に対して
– 巨大資本や組織でなくても、ゼロから「できない」とは限らない
– 小回りの利く設計、高速な意思決定、最新のコーディング技術の活用で大幅な効率化が可能

という価値観を体現しています。

また、現代的なC++/Rust・最新ビルドシステム・オープンソース開発手法・世界規模の「賢い目利き」支援を集めたことも進歩の理由です。

他の業界への波及効果は?

このプロジェクトの快進撃はウェブブラウザ界隈だけに留まらない意義を持ちます。

既存の「業界標準は一部の巨大組織のもの」「素人が入り込める世界ではない」という空気は、あらゆる技術分野に共通します。その空気を打ち破るトラックレコードを示したのがLadybirdなのです。

こうした動きは、オペレーティングシステム・3Dレンダリングエンジン・AI/大規模言語モデルなど、他の“無理ゲー”領域にも新たなベンチャー型プロジェクトが現れるきっかけになるでしょう。

私の考察:“否定の大合唱”がイノベーションの障壁になるパターン

正直、多くの専門家や現場開発者ほど「無理だ」と思う場面は多いでしょう。なぜなら、リスクや困難の現実をひしひしと知っているからです。
加えて、成功事例が“極端に少ない”ことも事実です。

とはいえ、それでも新しい挑戦が次々失敗で終わる中、Ladybirdのような一発逆転が発生するたびに、我々は「既成概念や常識で自分自身の可能性を狭めてしまっていないか?」と問い直すべきではないでしょうか。

もちろん、資源・時間・寿命との戦いではありますが、「やろうとする少数派」を潰す前に、せめて「どの程度イケるのか」冷静に観察し応援する余裕が今後のIT/OSSコミュニティには必須だと思います。

また、こうした新規開発プロジェクトの成功が既存ブラウザ大手の「合理化」のきっかけになったり、エンジンの多様性が新たな競争環境を生み出すことにも期待します。

まとめ:現実を疑うこと、それが変革の第一歩

本記事から私たちが学ぶべき最大の教訓は——
「みんなが無理だと言っていることが、本当に不可能だと証明された訳じゃない」
ということです。

Ladybirdは、巨大なリソースや長年の知見、独占的地位だけが“勝利の方程式”なのではない、と証明してみせました。

今のIT業界・ソフトウェア開発コミュニティはしばしば“従来のサクセスストーリー”しか信じない傾向があります。だからこそ、「逆張り」的プロジェクトがまれに成功する意味は大きいのです。

最終的にLadybirdがどこまで食い込めるのかはまだ未知数ですが、勇気ある挑戦を通じて業界全体に「変化」を促したことは間違いありません。今後、「難しいから無意味」と切り捨てる文化から、「まずはやって・検証し・議論と応援」する柔軟性のある文化へと進化することを願います。

出典: Ladybird Proves You Can Just Build a New Web Browser

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