この記事の途中に、以下の記事の引用を含んでいます。
Who’s funding open-source in 2025? A guide for maintainers
1. 時代は変わった…Azure無償サポート終了の衝撃
2025年9月、Microsoftがオープンソースプロジェクト維持者(メンテナー)向けの「Azure Sponsored Subscriptions」を公式に終了したというニュースが舞い込んできました。
本記事は、著者自身も恩恵を受けてきたこの支援終了をきっかけに、「今後、オープンソースはどう資金を得て持続していくのか?」という、生々しい課題に切り込みます。
本題は単なる嘆きや不安の共有ではありません。
新しい時代の資金調達事例と、その実践ノウハウに満ちています。
2. サポート終了後の現実と、オープンソースを支える多様な支援
記事冒頭で強調されているのは、かつて多くの独立系開発者に恩恵をもたらしたAzureの無償支援打ち切りです。
“Since September 1st, 2025, Microsoft officially discontinued Azure Sponsored Subscriptions for open-source maintainers. The company now focuses on sponsoring only strategic open-source projects.”
— Who’s funding open-source in 2025? A guide for maintainers
その一方で、「まだ終わったわけではない」とも記事は述べます。
“Fortunately, the news isn’t all bad. There are many organizations still investing in the open-source ecosystem. Whether through grants, free infrastructure, or company policies that support contributors, these companies are helping keep open source sustainable.”
著者は、自らが維持する複数のOSSプロジェクトを具体例として挙げ、その運営コストと負担の現実を明かしています。
たとえば「visitorbadge.io」は月200万以上のリクエストに対応し、月90ユーロのコストが発生しているとのこと。
そのうえで、
“Sponsorships really make a difference for maintainers. Even a small contribution, like €5 a month, feels like a genuine thank you and a boost of motivation. It is not just about covering costs—knowing someone values your work keeps you going and inspires you to keep improving your projects.”
と、金銭的以上の「心理的効果」に触れています。
3. 「資金援助=お金」だけではない!サービス支援という新潮流
近年のSaaSサービスやクラウドは、オープンソース界隈へのインフラ支援に積極的です。
“Financial support is crucial, but free or discounted infrastructure and services can be just as valuable…”
とあるように、実際の支援手段には以下のようなバリエーションがあります。
- クラウドホスティングやクレジットの提供
- IDEやCI/CDサービス、コードレビューツールの無償利用
- エラーモニタリング・アナリティクスツールの無料プラン
特に注目したいのが、GitHub、JetBrains、CodeRabbitなどが、OSSプロジェクトに以下のような形で具体的なメリットを提供している点です。
- GitHub: Provides free access to source control, GitHub Actions, and GitHub Copilot Free for open-source projects.
- JetBrains: Offers free non-commercial subscriptions for many of their IDEs to open-source maintainers.
- CodeRabbit: Offers free AI-powered code reviews for public repositories.
運営コストの大部分が「インフラ」と「開発ツール」にある以上、こういった非金銭的支援の価値は今後ますます上昇するでしょう。
4. 企業による本気のコミットメントと、その背景
さらに面白いのは、著者が取り上げている「FOSSファンド」のような直接的資金還流の仕組みです。
- Microsoft FOSS Fund: Every quarter a new fund and selection process will distribute up to $12,500 USD across one or more open source project(s).
- Spotify FOSS Fund: Allocates €100,000 annually to support critical open-source dependencies.
- Bloomberg FOSS Contributor Fund: Awards $10,000 each to two or three projects per quarter.
これは「自社依存度の高いOSSプロジェクト=戦略的インフラ」への投資であり、単なる寄付とは異なります。
大企業がなぜ真剣になってきているのか?
- サプライチェーンとしてのOSSの重要性
- セキュリティや信頼性担保の必要性
- 優秀なエンジニアの確保とコミュニティ活性化
など、多方面の経営的理由が背景にあります。
またその一方、「従業員のOSS貢献を業務として奨励し、人為的にエコシステムを維持し続ける」動きも増加中です。
“Info Support: Actively encourages employees to contribute to OSS during work hours and sponsors several projects.
Red Hat: Employs hundreds of engineers to work on open source projects like operating systems, containers, developer tools, and so much more!
Google: Recognizes external contributors via its Peer Bonus Program and funds initiatives like Google Summer of Code.”
これは従来の「ボランティア主体」から、「企業主導のプロフェッショナルな貢献」へのシフトといえるでしょう。
5. 深掘り!持続可能なOSS運営と今後考えるべきリスク
記事の指摘の中で、私が特に強調したいのが「大手サービスの方針転換リスク」です。
“Be aware that these plans can change or disappear. I’ve personally experienced this with both Vercel and Microsoft.”
実は、クラウド/インフラサービスの「無料枠」は撤廃・縮小が相次いでいます。
- 商用化圧力と収益化強化のトレンド
- サービス自体の経営状況や戦略転換
- 不正利用防止(悪用対策)のための条件厳格化
このような外部依存のリスクヘッジは、今後のOSS運営の死活問題となっていくでしょう。
したがって、「一つのスポンサーやサービスに頼り切る」のではなく、複線化や費用の見える化、資金調達経路の多様化が必要不可欠です。
たとえば
- 複数サービス間でのバックアップ運用
- 有志コミュニティとの緩やかな協業
- メンテナー同士の知見共有(運用ノウハウのオープン化)
などが現実解となります。
6. まとめと提言:あなたの「ありがとう」がOSS社会を変える
本記事が示す通り、Open Source革命の立役者たち=メンテナーは、日々の小さな資金・支援に大きく励まされています。
特に重要なのは、
- たとえ月額5ユーロ程度の「ささやかな支援」でも、実務的・心理的双方で圧倒的な効果がある
- 金銭的サポートだけでなく、「使っている」「評価している」と発信するだけでも、波及効果は絶大
という事実です。
あなたが何か一つでもOSSプロジェクトを使っているなら、今すぐできる「お礼」は以下の通りです。
- GitHub Sponsorsでコーヒー一杯分の寄付をしてみる
- SNSやブログで「役立った」と感想を発信する
- バグ報告や使い方記事の寄稿で運営を支える
オープンソースの真の強みは「共助」と「循環」にあります。
それを実感させてくれる本記事、そして著者のようなメンテナーの努力に最大限の敬意を送りたいと思います。
最後に、あなたが企業や組織に所属しているなら—
- 社内でOSS活用・支援の議論を始める
- 社員の業務時間OSS貢献や寄付予算を検討する
こうした動きが「持続可能なOSSの未来」へと繋がっていくはずです。
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