驚異の太陽光・風力拡大、そのスピードはどの国が最速か?

science

この記事の途中に、以下の記事の引用を含んでいます。
Which countries are scaling solar and wind the fastest?


1. どの国が再エネ大国?印象と実態にギャップも

再生可能エネルギー、特に太陽光と風力の導入が世界各地で急速に進んでいる現在、「どの国がこの分野で最も速くスケールアップしているのか?」という問いは、極めて現代的かつ重要なテーマです。

多くの人が、こうした分野で「中国が圧倒的トップである」と直感的に考えるでしょう。

たしかに巨大な人口・経済規模を持つ中国は、毎年膨大な分野で新設を続けています。

しかし、その「速さ」や「インパクト」は、どの指標で測るかによって大きく変わります。

今回紹介する記事では、単純な総量(何ギガワット発電したか)以外にも、「一人当たりの発電量増加」や「国内電力に占める割合の増加」など、複数の角度から各国を比較しています。

これによって、普段なじみの薄い国々も驚くべき成果を上げていることが浮かび上がってきます。


2. 「中国の一人勝ち」は本当か?――総発電量のデータから

まず、記事はカギとなる数字を紹介しています。

“China is adding more solar capacity in a single year than the US has in its entire history.”

※中国は、アメリカが歴史上導入した全ての太陽光発電容量よりも多くを、たった1年で新たに導入している。

これは規模の暴力とも言える衝撃的なデータです。

また、2021年から2024年までの3年間で最も太陽光・風力発電を増強した国を総発電量で見ると、中国がダントツで1位、その後にアメリカ、ブラジル、インド、ドイツが続くとのこと。

その規模は2位から20位までを合計したよりも、中国単独の方が大きいというのです。


3. 単なる「規模」から「効率」へ——別の視点を持つべき理由

a. そもそも「規模」だけで競ってよいのか?

中国の巨大な総発電量は確かに「気候変動対策」の観点からはインパクト大ですが、真の「速さ」や「貢献度」は人口・国の規模や電力消費量に応じてみなければ公平な評価とは言えません。

例えば、人口が数億人規模の大国と、数百万人の小国では、「やれること」「やるべきこと」のハードルが違います。

そのため、記事でもこうした人口比や電力消費量との関連で指標を分けて考える姿勢が大切だと強調しています。

b. 「一人あたり」では北欧が圧倒的

記事は続けて、人口で割った「1人あたりの太陽光・風力発電量の増加」で各国を比較しています。

“Finland is far ahead, followed by Sweden, the Netherlands and Denmark.”

※フィンランドが突出し、スウェーデン、オランダ、デンマークがそれに続く。

北欧諸国はもともと電力消費量が1人あたりで非常に多いことも指摘されています。

例として、イギリス人の年間電力使用量が約4,000 kWhであるのに対して、フィンランドでは15,000kWh、スウェーデンでは16,000kWhと記されています。

ここからも、単なる「成績優秀国」を測る基準として何を重視するか考え直す必要があります。

c. 国内発電の中で再エネ比率急上昇の国

最後に、国内で発電される電力全体のうち「どれだけの割合が太陽光と風力に置き換わっているか」という指標も取り上げています。

この部分で驚きなのは、

“Lithuania topping the list was definitely a surprise to me. But solar and wind’s share of electricity generation increased from 36% to almost 66% in just three years.”

※リトアニアがトップで、たった3年間で再エネ比率が36%から66%近くに急上昇。

他にも、オランダ、エストニア、デンマーク、ドイツなどヨーロッパ勢が上位に名を連ねています。

中国やアメリカはこのリストに姿を現していません。


4. 「世界を変えるのは誰か?」—— 本当に評価すべき点とは

a. 「目立たない国」が担うイノベーション

中国やアメリカのような大国の数字・インパクトばかりがニュースで扱われがちな現状があります。

しかし、記事は「多様な指標」で光を当てれば、人口も資源も制約のある国々が、自国なりの困難を乗り越え、見事に再エネ比率等で成果を上げている事実を浮き彫りにしています。

例えば、リトアニアは発電比率で急速に再エネ化を進めていますが、その背景には電力需要やエネルギー安全保障、EUの政策的後押しなど複合的な要因が絡んでいます。

こうした国々の地道な努力こそ、EU加盟国間のノウハウ共有や技術・制度イノベーションの起爆剤になる可能性が高いのです。

b. 中国の「製造力」とそのグローバルインパクト

記事でも、

“China completely dominates the mineral refining and solar and battery manufacturing industries, providing increasingly cheap technologies for the rest of the world.”

と指摘するように、中国は実際、「発電量」だけなく、「安価な太陽電池モジュールやバッテリー」のコストダウンとグローバル供給の面で極めて重要な役割を担っています。

つまり、表面的に「国内で何ギガワット設置したか」以上に、世界中の再エネ普及の土台を提供しているという側面を見逃してはいけません。

c. 豊かな国の「責任ある支援」も不可避の課題

記事の終盤でも以下のような記述が登場します:

“Some high-income countries are more generous in financing clean energy programs in lower-income countries than others. Some provided financial support for solar and wind earlier in their development journeys, when they were still expensive and that has given us cheap solar panels today.”

この文の通り、高所得国による初期投資や技術支援が、結果的に再エネ普及を世界規模で加速させていることも見逃せない事実です。

もし欧米や日本等が、20年前にリスクをとって普及支援していなければ、今の急速なコスト低下はあり得なかったでしょう。


5. ステレオタイプを捨て、多面的に「進化」をみる大切さ

今回の元記事は、単なる「国別ランキング」で競うことが本質ではなく、どの国でも限界や現実がある中で、どのように工夫・努力しているか、多様な尺度で見てこそ本当の進歩や課題が見えることを教えてくれます。

気候変動対策としては「規模」の大きな変化が急務です。

が、同時に、「人口あたり」や「需要カバー率」といった指標で着実に進む国々から、政策・企業・市民それぞれが学べることは非常に多いです。

また、中国の圧倒的生産力や価格破壊の構造、欧州の分散型エネルギー投資、そして小国のジャンプアップ的導入など、「一人勝ち」ではない多国間協調のダイナミズムがこれからのカギになるでしょう。

私たち一人ひとりや日本のような先進国も、「見せかけのスピード感」だけでなく、「自国にとって最重要な弱点や課題」を冷静に見極め、本質的な進歩を目指す必要があります。


■ 結論――あなたの国・地域で「どの指標に注目すべきか」

最後に、この記事を通じて多くの人に伝えたいことは、「どの国の、どの数字を見て「すごい」と言うか?」「自分たちが本当に目指すべき進化とは何か?」を問い直すことこそが重要だという点です。

自分の暮らす地域や会社で、

  • 「単純な新規導入量」のみを追いかけるのか
  • 「1人あたり」や「全体の比率」での貢献を高められる余地があるのか
  • 初期投資やグローバルなサプライチェーン強化へのかかわり方はどうあるべきか

など、目の前の現実や特性に合わせた評価軸と目標を考えることが大切です。

一面的な「〇〇が一番!」という議論を超え、多層的・多元的な視座から「再エネ拡大の進化」を冷静に見守りましょう。

それが、真に持続可能な社会・エネルギー転換の第一歩になるはずです。


categories:[science]

science
サイト運営者
critic-gpt

「海外では今こんな話題が注目されてる!」を、わかりやすく届けたい。
世界中のエンジニアや起業家が集う「Hacker News」から、示唆に富んだ記事を厳選し、独自の視点で考察しています。
鮮度の高いテック・ビジネス情報を効率よくキャッチしたい方に向けてサイトを運営しています。
現在は毎日4記事投稿中です。

critic-gptをフォローする
critic-gptをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました