この記事の途中に、以下の記事の引用を含んでいます。
URL Shorteners Are Poison for the Web
長くて不便なリンクに救世主?──「使いやすさ」の裏に潜むもの
「URL短縮サービス」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか。
おそらく、真っ先に思い出すのはTwitterやLINE、インスタグラムなど、限られた文字数でやりとりするプラットフォームで見かける、あの短いリンクたちでしょう。
実際に、本記事も冒頭で次のように指摘しています。
“Let’s face it – long links look annoying and sometimes even overwhelming. Everyone understands it – from corporate social media managers to community administrators to ordinary internet users.”
つまり「長いリンクは鬱陶しい、誰もがそれを理解している」という現実がある一方、URL短縮サービス(bit.lyやgoo.glなど)が登場し、我々はその恩恵にすっかり慣れてしまっています。
しかし、この記事は「それには気づかぬ大きな犠牲が伴う」と訴えています。
この主張が、これからWeb業界や一般ユーザーが直面する“見逃せない問題”の本質だと私は考えます。
「無期限」は幻想──リンクの消滅という大問題
この記事が強く警鐘を鳴らしているのは、短縮URLが“恒久”ではないという事実です。
曰く、
“Did you know that no link shortening service can handle infinite amount of links? … after August 25th, 2025, no goo.gl links will work anymore.”
これは、Googleの人気短縮サービス「goo.gl」が近日中に完全停止し、生成された短縮URLすべてがアクセス不能になるという指摘です。
さらに、Bitlyのように“無期限”と明記していないサービスもいつサービスが終わるかわかりません。
この一文の重さを、我々は軽視しすぎてきたのではないでしょうか。
例えば、研究論文やプレゼン資料、過去のSNS投稿でgoo.glを使っていた場合、「そのリンクはアクセス不可」「論拠や資料への導線が全て消える」という事態を引き起こします。
著者はこの危険性をこう例えています。
“This means that if a researcher used goo.gl in their paper but can no longer edit the paper for whatever reasons, the citation is gone. … What if you saved a short link or took a photo of the QR code and when you decide to finally use it, you are met with “404 Not Found”? Frustrating, isn’t it?”
これを翻訳すると、研究者が修正できない論文にgoo.glリンクを貼っていた場合、証拠や参考元が失われるだけでなく、QRコード化して保存した情報も「404 Not Found」となり非常にフラストレーションが溜まる状況になる、ということです。
この現象は、個人ユーザーだけでなく社会全体のナレッジや信頼性に影響を及ぼします。
短縮URLは「詐欺師の夢」──セキュリティの落とし穴
さらに、短縮URLの最大の難点は「その実体が隠されてしまう」点です。
著者はこう指摘しています。
“Imagine this – you got message saying that “you won a lottery, click the link below to take your money”. The link is shortened, so you cannot see where exactly it belongs unless you click it. … Some may take a trip to this link and, in most cases, give away all their personal data – from name to banking credentials – to phishers.”
短縮URLは、リンク先が不明瞭になることで、フィッシング詐欺や悪意あるウェブサイトへの誘導が、きわめて容易になるという現実を見逃せません。
ITリテラシーの高い人なら怪しいと気づくでしょうが、そうでない人、特に「どんなに初歩的でも騙されないと思っている人」ほど油断しがちです。
実際、短縮URLによる被害は、毎年のように日本でも消費者庁や警察庁が注意喚起しています。
特にSNSやメッセンジャーで、「あなたに当選通知」「無料プレゼント」などのメッセージとともに短縮リンクが貼られているケースでは、開いてしまい個人情報を抜き取られる事件が後を絶ちません。
上記は一見極端なようですが、実はごく日常的に私たちの身に起こりうるリスクなのです。
使うべきか、使わざるべきか?——サービス依存と「持続性」の課題
なぜ多くの人は、危うさに気づきながら短縮URLの利用を続けてしまうのでしょうか。
この記事の提案はシンプルですが、私にとっては警鐘として非常に示唆に富んだものです。
“There are quite a lot of things you can do about this situation:
– Contribute short links to the Internet Archive (this way, they will last longer)
– Use as less short links as possible
– (if you run a blog or site or something like that) Host your own link shortener so you and only you decide when to take it down …”
つまり解決策のひとつは、Internet Archiveに短縮リンクを登録して記録として残す/そもそも短縮URLを「極力使わない」/自分自身でリンク短縮サーバーを運用(自己管理系)する、と三本柱で挙げています。
ですが「自分でホスティング」となると、多少のスキルや知識、管理の手間が発生し、一般ユーザーには現実的ではありません。
一方でInternet Archive(archive.org)へのアーカイブも、最近はページ構造や動的コンテンツの増加により、うまくキャプチャできないケースも増えています。
結論としては「たやすい利便性を享受するほどに、重大な対価を払ってしまう」事実から目を背けてはならない、という点に集約されます。
付加価値:「リンクの寿命問題」とあなたの行動
この論点は、大袈裟に言えば「ウェブの持続性」や「インターネットの信頼性」という社会課題に直結しています。
なぜなら、私たちが「リンクの中身を何も確認せず、ただ短いアドレスに変換したものを貼り付ける」ことを続ける限り、およそ数年後にはネット上の記事やSNS投稿が「リンク切れ」だらけになってしまう——そんな未来が現実味を帯びてくるからです。
それは、「次世代への知識の伝達」や「論拠ベースの議論」が困難になる、まさに情報社会の劣化現象といえるでしょう。
さらに現実的な話として、ビジネスシーンでの「イベント案内」や「参加フォーム」などを短縮URLで案内している企業は本当に多いですが、担当者交代やサービス閉鎖といった“事情”で、せっかくの問い合わせ窓口や施策が水泡に帰す、ということも珍しくありません。
結論:ウェブの未来のために——「短縮した先」まで責任を持とう
SNSの利便性、共有の手軽さ、スペースの節約。
それら全てが短縮URLの持つ“魔法”でした。
しかし、短縮URLには見過ごせないセキュリティリスク、持続性の問題、そして「信頼性」のゆらぎが含まれています。
この記事は、私たちが安易にURL短縮サービスを使うこと自体に「無自覚なツケ」があると鋭く指摘しています。
最後に、著者のこの一文を引用して締めくくります。
“Stay sharp, stay curious. Goodbye for now!”
これからは、手軽さだけでなく「このリンクは数年後にも、誰がアクセスしてもたどり着けるのか」という持続性や信頼性の観点から、知的態度と行動を見直す必要があるでしょう。
短縮URLの使い方を問い直すことが、ウェブ文化全体の未来地図を塗り変える契機となる——私はそう信じています。
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