この記事の途中に、以下の記事の引用を含んでいます。
いきなり操縦!? “B-2 Spirit”コックピット体験記の衝撃
今回ご紹介するのは、アメリカ空軍の戦略爆撃機B-2「スピリット」のコックピットに一般人が搭乗し、実際に操縦してみたという衝撃の体験レポートです。
B-2は冷戦末期に開発され、レーダーに映りにくい「ステルス性」を極限まで追求した名機。
その運用数はたったの20機しか存在せず、1機あたり約20億ドル。
軍事機密の塊であり、取材すら極めて難しい超重要兵器です。
にもかかわらず――
“I never expected to step inside the cockpit of a B-2 Spirit, the Pentagon’s long-range stealth bomber. So you can imagine the shock of being at 27,000 feet and hearing an Air Force pilot tell me over the cockpit intercom, “Okay, you have the jet.””
と、記者は思いがけず操縦桿とスロットルを握る貴重なチャンスに恵まれました。
「操縦ミスで世界の軍均衡を変えかねない」? 多層的な安全設計と緊張感
この記事で特筆したいのは、記者が感じた圧倒的な緊張感と、パイロットが絶対の自信を持つ理由です。
B-2は米空軍でたった20機だけ、もし墜落でもさせれば「世界の軍事バランスが変わる」とまで記者は自覚。
“It occurs to me that with some exceptionally bad luck, I could endanger one-tenth of the American B-2 fleet and cause a rebalance in global military power.”
この認識は決して大げさでもありません。
一方でパイロットの「Scar」ことティモシー・サリバン氏は、“the airplane’s ability to stop me from doing anything too dumb”と、機体(B-2自身)が未経験者の浅はかな操作でも致命的ミスを防ぐ仕組みになっていると述べています。
これは現代軍用機のアビオニクス(飛行を司る電子制御)がいかに進歩し、人間のミスを致命傷にしない「多層防御」を備えているかを物語っています。
現に記者は前日のシミュレーター練習では着陸時に墜落したと告白していますが、それでも実機操縦が許されるのは、事故を物理的に起こしにくい設計思想の表れでしょう。
この設計背景には「ヒューマンファクター」(人的要因)を徹底的に研究し、「とっさの操作ミスや認知ミスでも、最悪の事態を自動で回避する」ことを前提に開発された現代軍用航空技術の粋が詰まっているのです。
まさかの”希少人種”入り!宇宙飛行士よりレアなB-2乗員体験
意外な事実として、記事内では
“the number of astronauts who’ve been to space is larger than the number of people who have flown in a B-2. As of that moment, 552 people had traveled into space. Only 543 people have ever flown in the cockpit of a B-2.”
とはっきり述べられます。
2025年時点で人類史上B-2の操縦席に座ったのは記者で544人目、宇宙へ行った人数より少ないというのは驚異的です。
この比較が示すのは、「世界的な象徴的兵器のパイロットや搭乗経験者になることが、いかに稀少か」という事実です。
単純なスペックではなく、「権威・象徴性・存在自体の希少性」がB-2に特別なオーラを与えているのだと言えるでしょう。
裏方も主役!ステルス運用の現場と守秘のリアル
現場では、2人の搭乗員だけでなく数十人規模の地上要員や整備士、写真係までもが連動して最高クラスの機密兵器を支えています。
“it takes dozens of people to keep it operational. I spent three days at Whiteman meeting the airmen who work with the B-2s and who prepared me for my flight.”
この連携の密度こそが国家戦略兵器を支える現実です。
また、「No cockpit photos are allowed, some weapons cannot be discussed, and the Air Force does not permit certain angles of the bomber to be photographed.」という制約があり、兵器取材の難しさ、守るべき機密性の高さもひしひしと伝わってきました。
軍事の現場では、どんなに広報したくとも「どこまで見せるか・見せないか」「何を語っていいか」について細心の配慮があるのです。
体験記から見えるB-2の本質と、今後の技術トレンド
この記事の最大の意義は、B-2という“国家戦略の最後の切り札”的兵器にも、人間が乗り込み、現場の仕事の積み重ねと信頼に裏打ちされている現実を可視化した点にあります。
取材現場の制限は多いものの、安全設計やオペレーション連携の意義、そして搭乗体験そのものが「戦略兵器の人間的側面」を浮かび上がらせています。
さらにB-2は、開発から30年以上経っても第一線でアップグレードと運用を重ねている超寿命兵器であり、その技術思想(ステルス性×運用保守性)はF-35、将来のB-21レイダーといった次世代機にも強く影響を残しています。
現場で働く数十人規模の職人、パイロットの技術、機体自身の再設計―。
軍用機発展の核心には、単なる装置の進化にとどまらない「人と技術の共進化」があると断言できるのです。
私自身、この記者の体験談を通じて「兵器と人間、現場の知恵の共鳴」がどれだけ現代戦略の成否を左右しているかを、改めて痛感しました。
B-2という歴史的機体の体験記から、いかに自動化や先端技術が進んでも「最後には人間の判断力と現場力が不可欠」という示唆を受け取った読者も多いのではないでしょうか。
ステルス爆撃機B-2体験記が投げかけるリアルな問いかけ
この記事は単なるB-2搭乗体験のレポートにとどまらず、「国家戦略兵器の運用現場」「人間・組織・技術の三位一体」について多くの示唆を与えてくれました。
私たちが普段メディア越しに憧れ、畏れ、漠然と「すごい」と感じる兵器の背後には、常に現場で知恵と手間を惜しまぬ人々がいます。
そして、どれだけ機械が進化しても「何を公開するか」「どう使うか」を決めるのは人間です。
国家の命運を握る機体の空を実際に体験した記者ならではの驚きや感動、現場への敬意、そして“希少であることの重み”まで、一つの体験記が持つ説得力こそがこの記事最大の価値だと私は感じます。
最先端技術、名機への憧れを持つ人だけでなく、組織運営や現場のリアリティに興味がある人にも強くおすすめしたい特集です。
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