この記事の途中に、以下の記事の引用を含んでいます。
Recent Rust Changes
進化が止まらないRust、その変化の全貌とは?
この記事では、プログラミング言語Rustがバージョン1.78から1.90までの約1年半でどのような進化を遂げてきたかについて詳細に語られています。
注目すべき新機能のみならず、2024 Editionの登場や公式仕様書「FLS(Formal Language Specification)」の策定、10周年記念など、Rustという言語の“今”を総まとめしています。
一般的なリリースノートの羅列とは異なり、「新機能をトピック別に集約している」のが特徴です。
そのため、「最近Rustどうなっているの?」と思っている開発者にとって、大変読みやすいアップデート記事になっています。
こんなに進んだ!? 記事が示すRust進化のキーフィーチャー
記事では、冒頭でこう語っています。
“It’s only been a year and a half, but quite a lot has happened (much more than I realised before writing this post). As well as a bunch of new features (listed below), there was the 2024 edition (released in February 2025), Rust had it’s 10th birthday in May, and Rust now has an official language specification in the form of the FLS.”
訳すと、「わずか1年半の間にも非常に多くのことが起きた(この記事を書くまで自分でも気が付かなかったほど)。新機能の追加だけでなく、2024 Editionのリリース、10周年記念、そして正式な言語仕様書(FLS)の策定があった」と述べています。
本記事で取り上げられている主なトピックは以下の3つです。
- 言語仕様(Language)
- 標準ライブラリ(Standard library)
- ツーリングと周辺エコシステム(Tooling)
それぞれ重要な進化を遂げています。
いくつか具体的な変更点について原文を引用しつつ、内容を要約します。
1. 言語仕様―複雑化と安全性の両立
◯ 非同期クロージャ(Async closures)
“Async closures async |…| { … } (1.85).”
ついに非同期処理をクロージャ構文で自然に表現できるようになりました。
これは、サーバーやリアクティブなアプリケーションを書く際のイディオムが大きく拡張されることを意味します。
◯ letチェーンやパターンマッチの柔軟化
rust
if let Some(x) = a && let Some(y) = b { ... }
複数のパターンバインディング(letの連結)がサポートされ、条件分岐の柔軟度が向上しています。
◯ 非安全コードへの新しい規則
“Unsafe code inside an unsafe function requires an unsafe block (2024).”
2024 Editionでは、unsafe fnの中でもunsafeブロックを明示的に書くことが義務付けられ、より一層安全性の明示・管理が強化されています。
◯ ライフタイム規則の進化
“Lifetime extension from inside if and match blocks, e.g., let x = if … { &new() } … ; is legal because the lifetime of the reference is extended to the enclosing scope … (1.79).”
ifブロックやmatchブロックから返された参照のライフタイム拡張が可能になり、“なぜこれが動かないの?”という初心者の躓きポイントが解消されています。
◯ 生ポインタ生成構文の強化
“&raw … operator to create a raw pointer (and to take a reference to a mutable or extern static without an unsafe block) (1.82, using non-raw & is an error in 2024).”
今までunsafe無しで参照できなかったケースが整理されて、「宣言的に安全と危険を切り分けられる」設計にシフトしています。
2. 標準ライブラリ―外部クレートが標準入り&インターフェース多様化
◯ LazyCell・LazyLock
“LazyCell and LazyLock , alternatives to the lazy_static and once_cell crates (1.80).”
これまで必須だった外部クレートlazy_staticやonce_cellの役割がついにRust本体の標準ライブラリに組み込まれました。
大規模プロジェクトでは依存先が減ることは大きな安心材料です。
◯ Option系・Vec系APIの拡充
“Option::take_if (1.80), Option::is_none_or (1.82), Option::get_or_insert_default (1.83).”
Optionの判定や操作が標準でより柔軟に記述できるように—。
これらは普段のコーディングを“少しずつ確実に”楽にしてくれます。
◯ File::lockやio::pipeの追加
システムプログラミングや並行処理で不可欠なIOやファイルロック関連の標準化。
より低レイヤな制御も“お作法”としてRust流で安全に呼び出せるようになりました。
3. ツーリング・エコシステム―“開発効率の最適化”の追求
◯ cargo周りの細やかな改善
“cargo info to display information about a crate (1.82).”
“Cargo automatically cleans up its cache (1.88).”
“cargo publish –workspace (1.90).”
コマンド一つでパッケージ情報が把握できたり、キャッシュの自動掃除、ワークスペース単位のpublish……「ちょっと不便だった」小さなストレスが軽減されています。
◯ 対象プラットフォームの転換
“Apple ARM is a tier 1 target (1.82) and Apple intel demoted to tier 2 (1.90).”
Apple Silicon(M1/M2)が正式な“tier 1”対象となり、Intel系Macは“tier 2”へ。
世界的潮流へいち早く追随しています。
◯ その他ツールチェーン
Linux版rustcでlldが標準に(1.90)。
プロファイリングやパフォーマンス可視化のためにライブラリがフレームポインタ付きでビルドされるなど、パフォーマンスの分析や安定化にも配慮があります。
この記事が物語る「進化の意義」とは?
ここ数年のRust進化は、単なる“機能追加合戦”ではありません。
● 言語仕様の進化=誰でも安全に「高度な制御」ができる時代へ
非同期クロージャや生ポインタ構文の洗練は、並行・非同期・システムプログラミングに取り組む上級者にとって、さらに使いやすく・安全になったことを意味します。
その一方、「letチェーン」や「ライフタイム延長」のように、Rust初心者が“つまずきがちな細かい制約”も緩和。
裾野の拡大とエキスパート志向――両軸を両立しようとする設計思想が見て取れるのです。
● エコシステムの強化=「外部クレート必須」からの脱却
LazyCellなど、今まで定番外部クレートとして頼ってきた機能がついに標準装備。
これは、規模が大きくなるほど“外部依存が減る”ことで保守・移植性・セキュリティ全てが強化されることを意味します。
加えて、Option::take_ifなどの日々の「ちょっとしたイディオム」もどんどん公式化。
“ラクするための道具”が公式にどんどん増えている点は見逃せません。
● ツールや運用面の改善=“使い勝手“ファースト
cargo infoやキャッシュ自動クリア、macOS ARMへの最適化—など、ユーザーが「今までもっとこうだったらな……」と思っていた細かな部分が見直されているのがポイントです。
批評と考察:Rustは「複雑性の管理」に本気で取り組んでいる
この1.5年の変化をみて思うのは、「Rustは言語の複雑化を受け入れつつ、それを安全性やユーザビリティ向上という”付加価値”に転換し続けている」という事実です。
たとえば非同期クロージャや生ポインタ、パターンマッチといった「一歩間違えれば危険・複雑」な領域にも、明示的な構文や新たな規制を加えることで「安全で曖昧さのない設計」を貫いています。
また、「2024 Edition」やFLS(公式仕様書)という指標作りは、“分断を生まない進化”を志向している証拠です。
新規採用プロジェクトでも、既存コードベースでも、単に「壊す・古くする」だけの進化ではない。
これは現場を持つ開発者にとって極めて大きな安心材料です。
一方で、Rustの進化が加速すればするほど、「難しいからこそ慎重であるべき」機能追加と「できるだけ簡単にしたい」という願いがせめぎ合います。
今後はこのバランスの維持こそ、コミュニティ全体の知見と議論がより一層求められていくでしょう。
まとめ:これからRustに携わる人へのヒント
今回の記事が示す最大のメッセージは、「Rustは日々変わっている。しかもその変化は決してブレていない」ということ。
新規プロジェクトでも、既存のコードベースを継続運用する現場でも、「今Rustがどのような方向に進化しているか」を知っておくことで、最善の選択ができるでしょう。
既存Rustユーザーは迷わず公式アナウンスやエディションガイドを継続的にチェックしたいところですし、「これからRustに手を出したい」初心者こそ、「公式化された使い方=王道」を最優先で習得するのが吉。
また、これまで“クセが強くて避けていた”領域(非同期、パフォーマンス、低レイヤプリミティブ)も、“今のRust”なら身構えすぎず安全にチャレンジできる時代が来ています。
今後も「今どんな機能があり、これから何が変わるのか」を意識しながらRustと向き合っていきましょう。
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