この記事の途中に、以下の記事の引用を含んでいます。
Speed vs. Velocity: The Difference Between Moving Fast and Moving Forward
スピードとベロシティ、何がどう違う?─本質から見極めるチーム生産性
「生産性=スピード」と考えていませんか?
本記事は、ソフトウェア開発などの現場で「スピード」ばかりがもてはやされがちな状況に警鐘を鳴らし、「ベロシティ(速度+方向性)」こそが真のゴール到達をもたらす、という観点から深い洞察を与えてくれます。
チームやプロジェクトを率いる人、現場の一員として活躍する人、どちらにとっても必読といえる内容です。
まさかの“見落とし”!? 高速リリースしても成果ゼロのワナ
記事では、「Speed is how quickly a team ship changes. Velocity is speed with direction, the movement toward a defined goal.」(スピードはどれだけ早く変化をデリバリーできたか。ベロシティは、そのスピードに加え、明確なゴールに向けて進んでいるかという“方向性”を加味したもの)と定義しています。
また、3つの仮想チーム例を用い「速いけれど方向がぶれている」「遅いけれど方向は合っている」「速くて的確な方向で進む」──この三者のゴール到達度は全く異なり、最も“進んでいる実感”を持てるのはスピードだけでも方向性だけでもなく、両立できているチームだと説明しています。
さらに、「Tracking story points, for example, is a measure of speed, not velocity.」(ストーリーポイント数を追うのはあくまでスピードの測定であって、ベロシティ=成果に直結しない)と繰り返し指摘しています。
“方向のない速さ”の危うさ─なぜベロシティが重要なのか?
高速開発やリリース頻度などはマネジメント層にも分かりやすいため、多くの現場で「とにかく早いこと」が称賛されます。
しかし、記事にもある通り「The danger of tracking speed only is that a team might become organized in a way to optimize short-term delivery.」(スピードだけを追うと短期成果に固執し、本質的な進歩を失う危険性)なのです。
ところが、「方向性=どこを目指すか、なぜやるか」が弱いチームは、頻繁な要件変更・バグ修正・優先順位の迷走などで“努力が空転”します。
個人的な現場観でも、「今日は10個デプロイ!すごい!」と盛り上がる裏側で、実はユーザー価値や事業目標とは関係ないタスクばかり消化している──そんな本末転倒な状況は、どんな業種でも起こり得るものです。
また、「Objectives tracking should use outcomes, not ticket counts.」(チケットの数ではなく、“成果”を指標とすべき)という主張は、現代的なOKRやKPIの設計でも極めて重要な論点です。
「何のための目標か?それは定量的に見える化できているか?」を定期的に振り返らなければ、努力の“総量”だけが膨れ上がり、「やったつもり」に陥ります。
要するに、
– 高速に“ぶれる”=疲弊するが前に進まない
– 遅くとも“狙い撃ち”なら着実にゴールへ
– “速くて方向良し”が理想
という図式になります。
自分なりの考察─ストーリーポイント信仰も危険!ベロシティ可視化へのヒント
私が多くのチームやプロジェクトで実際に感じてきたのは、“スピード”偏重ゆえのチーム消耗と、方向性を軸に据えたときの圧倒的な安心感・成果の違いです。
よくある“罠”の具体例
例えば、スクラム開発現場で「うちはベロシティ20ポイント/スプリント」と“数”だけを追い求めていると、
– つまらないタスク(ただチケットを量産するだけ)
– 永遠に繰り返す手戻り(初手の検討が甘く何度も同じ領域を触る)
– 本質的なユーザー価値への無関心
こういった“見せかけの忙しさ”に終始しやすくなります。
記事で語られる「過去にOKRをチケット消化率で測ってしまい、実際の進捗や成果を捉え損なった」という経験は、多くの現場にとって他人事ではありません。
“方向性”を実装するための現実的アプローチ
では、どうすれば本質的なベロシティを可視化できるのでしょうか?
- 成果指標は“アウトカム基準”で設定
例:「支払い完了率99%」「登録から7日以内のアクティブ率50%以上」 - 「何を達成すれば価値になるか」を定期レビュー
- チームメンバー全員がゴールと現在地を把握
- 振り返りで“動いた方向と進捗”を可視化
(単なる“やったタスク数”ではなく、“なぜそれをやったか/本当に狙い通りの結果に近づけているのか”を大切に)
上述のような内容こそ、今後ますます複雑化するプロダクト開発や、時代の変化に柔軟に対応し続けるための“本質的な生産性”の指標であると、私は強く思います。
まとめ─「速さ」と「意義ある進歩」を両立せよ!明日から使える“ベロシティ思考”
本記事が伝える最大のメッセージは、「スピード(作業量や開発ペース)」と「ベロシティ(ゴールに向けての意義ある進歩)」は似て非なるものという点に尽きます。
Speed is how fast we ship. Velocity is speed with direction toward a goal.
The goal of a team shouldn’t be to reach high speed; it should be to reach high velocity, where rapid iterations translate into real system-level improvements.
(出典:Speed vs. Velocity: The Difference Between Moving Fast and Moving Forward)
- 数値だけで判断せず、「なぜその成果なのか」を常に問い直す
- 日々の努力=“小さなベクトルの集積”をどんな方向へ向けているのか仲間と対話し続ける
- “忙しさ自慢”に陥らず、意義ある成果を積み上げる
この考え方は、IT/開発チームはもちろん、すべての「チームで目標を追う場面」で通用します。
“速く多くやればいい”、その呪縛から自分もチームも解放し、「ゴールまで着実に進もう」というベロシティ思考──明日から実践してみてはいかがでしょうか?
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