「許可なき情報は取材禁止」ペンタゴンの報道規制強化に衝撃が走る

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この記事の途中に、以下の記事の引用を含んでいます。
Pentagon demands journalists pledge to not obtain unauthorized material


報道の自由に待った!? ペンタゴンが記者に誓約を要求

アメリカ国防総省、通称ペンタゴンが、記者に“未許可情報”の取材・保持を禁ずる新たな方針を打ち出したというニュースが話題になっています。

これは単なる極秘情報ではなく、「たとえ非機密であっても、公開許可がなければ報道対象にできない」という非常に厳しいルールです。

今回のワシントン・ポストの記事は、トランプ政権下で進むこの強硬姿勢の全容と、報道の自由や民主主義への影響について警鐘を鳴らしています。

本稿では、該当記事にある具体的な主張や事例を原文で引用しつつ、「なぜこの方針は問題視されるのか?」、「背景に何があるのか?」、「今後何が懸念されるのか?」という点について、解説・考察していきます。


「政府許可なき情報取得は即アウト」原文の主張とそのインパクト

まずは、最も重要な記事の主張を引用します。

“it will require them to pledge they won’t gather any information — even unclassified — that hasn’t been expressly authorized for release, and will revoke the press credentials of those who do not obey. Under the policy, the Pentagon may revoke press passes for anyone it deems a security threat. Possessing confidential or unauthorized information, under the new rules, would be grounds for a journalist’s press pass to be revoked.”

“However, DoW information must be approved for public release by an appropriate authorizing official before it is released, even if it is unclassified.”

(「報道関係者には、明示的に公開許可を受けた情報以外は、機密扱いでなくとも取得しないと誓約させる。従わなければ取材パスを剥奪する。新方針では、国家安全保障上の脅威と判断されればパスが剥奪され、機密や未許可情報の取得・所持もパス剥奪理由となる」と明記されている。加えて、「DoW(戦争省、国防総省の新名称)の情報は、たとえ非機密であっても、適切な権限ある担当者の公開許可が必要」とされている。)

これらから分かるのは、“漏洩”の有無や機密情報かどうかに関わらず、政府が許可していない情報には一切近づくな、という極めて強硬な姿勢です。


「透明性」と「政府管理」のせめぎ合い - その背景とは?

この強化方針の背景は何でしょうか。

本文でも指摘されているように、「For months, Defense Secretary Pete Hegseth and his staff have been tightening restrictions on Pentagon reporters while limiting military personnel’s direct communication with the press. Like many defense secretaries before him, Hegseth has been deeply irritated by leaks.」とあり、情報漏洩や“リーク”に苛立つ国防長官による締め付けが強調されています。

つまり、近年の機密事項漏洩(リーク)事件に対して根本的な“封じ込め”を図ろうとしているのです。

また、「ペンタゴン情報の大半は何らかの“センシティビティ”(機微性)を持つ」とされる状況下で、たとえば軍のパレード準備のような一般の関心事ですら、「CUI(Controlled Unclassified Information)」として未公開扱いとなる場合がある例も挙げられています。

これにより、「管理できないメディアは一掃し、政府の思うように情報をコントロールしたい」という動機が見え隠れしています。

米国では伝統的に、「透明性」を担保する手段として独立した報道機関の“自由な取材活動”が認められてきました。

ペンタゴンの広報担当者は、「These are basic, common-sense guidelines to protect sensitive information as well as the protection of national security and the safety of all who work at the Pentagon,」と弁明します。

しかし、この“常識的なガイドライン”が、果たして本当に社会の利益と整合するものでしょうか。


「本当の“独立報道”はこのまま消えるのか?」専門家や業界団体の懸念

報道規制への反発は当然のように挙がっています。

コロンビア大ナイト修正第1条(表現の自由)研究所の識者Katie Fallow氏は、

“A reporter who publishes only what the government ‘authorizes’ is doing something other than reporting,”

(「政府が“許可”したものしか報じない記者は、もはや取材ではなく別のことをしている」と)と手厳しく批判しています。

また、全米プレスクラブのステートメントからも、

“If the news about our military must first be approved by the government, then the public is no longer getting independent reporting. It is getting only what officials want them to see. That should alarm every American.”

(「軍事ニュースが政府の事前承認を要するなら、それは独立した報道ではない。国民が目にするのは政府が見せたいものだけ――これにはすべてのアメリカ人が危機感を持つべきだ」)

という深刻な危機感が読み取れます。

このような方針が定着すれば、「報道機関が政府発表の“オウム返し”以上の存在でなくなり、政府監視機能を失うのでは?」という根本的な懸念が生まれます。


さらなる現実的影響:主要報道機関の締め出し、記者クラブの実質縮小

今回の規制は書類上の誓約だけにとどまりません。

既に「ペンタゴン内の恒常的デスクからNBC、ニューヨーク・タイムズ、NPRなどを排除し、新興の右派系メディア(OAN、Newsmax、Breitbartなど)と一部リベラル媒体(HuffPost)をローテに導入」とあります。

これは事実上の“メディア選別”であり、権力機関と親和的なメディアだけを“ご贔屓”する偏向をもたらします。

さらに、「今や記者本人だけでペンタゴン内部を歩くのは禁止、必ず案内付き。通常は開催されていた定例記者会見も激減し、記者会見場さえ使えなくなっている」という事実も、取材環境の著しい悪化を物語っています。

この急速な報道アクセス閉鎖は、取材側に事実上の“忖度”を迫るものとなり、独立報道の価値を根底から揺るがすでしょう。


元々の「米国の報道自由度」と比較して何がどれだけ変わったのか

本来、米国は「政府の監視機能としての報道」「情報公開による透明性」が徹底されてきた社会背景があります。

過去には、政府と記者が緊張関係を持ちつつも、“記者が戦場に同行でき、その目で伝える”文化が根付いてました。

今回のペンタゴン方針は、まさにこの伝統を180度変更するものと言えます。

事実、記事でも「The agreement represents a sharp departure from the practice over decades of military and civilian defense leaders who have felt comfortable openly talking to and even going into war zones with the press.」と指摘されています。

政府の情報統制が常態化すれば、いわゆる「市民の知る権利」は実質的に大きく損なわれ、「都合の悪い事実には国民が一切接近できない社会」が作り出されることになりかねません。


筆者の考察:安全保障と報道自由、どちらを重視するべきか?

今回の方針には、確かに“国家安全保障”上の一定の合理性を見て取ることはできます。

たとえば、「軍事作戦の詳細や人命に関わる機微な情報が不用意に漏れ、敵対者の手に渡るリスク」を憂慮するのは、どの国でも同じです。

しかし、だからといって「情報公開を一元的に政府がコントロールし、将来的な恣意的運用の余地を無制限に広げる」やり方は、民主主義的システムの根本的な危機につながります。

そもそも安全保障と報道の自由は、トレードオフ(片方だけを最重視し他方を犠牲にする)ではなく、「どちらも一定範囲で守るための不断の調整・議論」が必要です。

現在の規制は、現場の報道機関による“自主的な安全配慮”や、情報の詳細の一部を事前報道しない「エンバーゴ」など既存慣行の調整すら受け付けず、一方向的な「封鎖」しかもたらしていません。

仮に「許可された発表以外は一切報道禁止」が恒常化すれば、その帰結は「批判も検証もなされない“政府の広報制度”のみが残る社会」にほかなりません。

長い目で見れば、それはかえって“国民の安全”や“健全な国家運営”を損なう要因となるでしょう。


結論:「知る権利」を守るために必要なのは何か

今、米国の報道自由(=国民の知る権利)はかつてなく重大な転換点を迎えています。

記事ではペンタゴンの記者会見場から記者の顔ぶれが消え、「CURRENTLY BEING UPDATED」とだけ書かれたプリントが貼られている、と象徴的な情景が描写されています。

この“空っぽの記者クラブ”は、米国社会の一つの写像として、私たち読者に重大な問いを突き付けています。

「国家安全保障」と「政府監視機能(報道の自由)」、本当にどちらかしか選べないのでしょうか?

現実には、この2つのバランスをどこでどのようにとるかこそが、民主主義社会の“成熟度”を測るリトマス試験紙となります。

こうした動きが日本や他国に波及する可能性もある中、“政府と報道の健全な距離感”や、“自由な取材活動の意義”について今一度社会全体で議論することが不可欠です。

この問題を「他国の話」として傍観するのではなく、次世代の「透明性」や「説明責任」のあり方を当事者意識で考える――それが私たち読者それぞれへの示唆でしょう。


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