独立開発者が見つけた「本当にやりたいこと」とは?~自由と挑戦の1年を振り返る

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この記事の途中に、以下の記事の引用を含んでいます。
Year of Independence


自由の価値を問い直す──元Robloxエンジニアのリアルな1年

今回ご紹介するのは、元Robloxの著名な技術者が「会社を辞めて独立してからの1年」を率直に綴ったブログ記事「Year of Independence」です。

記事は、開発コミュニティのみならず、「大企業をやめた後のキャリア」に関心のあるすべての人に強い示唆を与えてくれます。

彼はいわゆる「バカンス」や「リフレッシュ」を送るでもなく、膨大な時間を使ってコードを書き、人と語り、未知の領域に手を伸ばします。

その試行錯誤の先で得たものは、派手な成功譚でもキャリア論でもなく、「自分らしい働き方」にまつわる本音の葛藤と手触りなのです。


まさかの「知的失業」宣言?独立後に走ったエンジニアの道

記事冒頭、本人はこう記します。

“When I quit, people told me I should take some time off, relax, unwind, recharge, travel… That would make sense! What I did instead however is a combination of ‘writing a lot of code’ and ‘talking to a lot of people’.”

──普通は「休め」と言われる独立直後に、彼はコーディングと人との交流に明け暮れた、と。

彼に届いたのは、彼の専門領域──ゲーム開発・シミュレーション・低レベルシステム工学──を中心とした多数のオファーや相談でしたが、どこか「快適すぎて、先が見えすぎて面白くない」と感じていたといいます。

その飽和状態を打ち破ったのが、近年著しく進展したLLM(大規模言語モデル)周辺技術への知的な興味でした。


未知の技術に“飛び込む”勇気──LLM推論エンジン開発の舞台裏

特に興味深いのは、オープンソースのLLM推論エンジン「calm」の誕生秘話です。

本文から引用します。

“This project was born out of my desire to learn more but also out of dissatisfaction with the state of the art at the time.”
“Starting a new project in an unfamiliar field is daunting because you need to go from ‘nothing works’ to ‘something works’ before considering efficient implementations…”

彼が感じたのは、「既存のツールは遅い・煩雑・効率悪い」という不満と、「これくらい自分で作れてしまうのでは?」という好奇心。

しかし、未知の分野ではゼロから動くものを作るだけで一大事。それでも、彼は「Andrej Karpathy’s llama2.c」に触発され、1000行のCコードから始めて、4000行にまで拡張。NVIDIAやAppleの最新ハードウェア固有の最適化ノウハウも身につけていきます。

この開発の途中、「モデル自体の蒸留や構造変更でさらに高速化できるのでは」と本気で産業レベルの研究を志しかけるも、「個人ではデータも計算リソースも厳しい」と気付きます。そして、再び「独立」のメリットと難しさに直面します。


「自由」と「社会的影響」のはざまで揺れる葛藤

LLMに熱中する一方で、次第に「そこまでの情熱を注ぎ続けられるテーマなのか」と自問自答します。

“…without an idea that captivates me so much I just have to do it, …losing the complete freedom and independence I’ve been enjoying during the first few months was just… not worth it.”

ここには、興味の赴くままにプロトタイピングする“気楽な楽しさ”と、産業界で汎用的な価値を生み出す“本気の勝負”の間で揺れる等身大の感覚が見てとれます。

商業的な成功、社会的な影響、“みんな”に使われるプラットフォーム構築──これらには膨大なリソース投入や組織内での調整が不可欠です。

その過程で個人の自由や独立性が後退することも、彼にとっては大きなリスクなのです。


誰かのためではなく「自分のため」の開発へ~meshoptimizer復帰の意義

次に彼が再び情熱を注いだのは、自身が長年開発してきたオープンソースの3Dメッシュ最適化ライブラリ「meshoptimizer」やglTFツール群です。

この記事では「Graphics is fun, actually.」との率直な感想とともに、meshoptimizer/gltfpackでの開発の内実も詳細に述べています。

例えばこう述べられます。

“Importantly, the pace and direction of development are unconstrained… if a processing algorithm could be a little faster and I feel like I want to spend some time on this, that’s what I’m going to spend time on… if a particular week is just not a good week for working then I guess code is not being written.”

これは、誰にも指図されず、「今やりたいこと」にフルコミットできる贅沢です。
タスクや計画のすべてが自分次第。

「面白い」と感じた時に没頭し、「やりたくない」時には手を止める自由。
この“気ままさ”が彼にとって最高の価値になっています。


オープンソース開発の現実──お金と貢献、そして企業連携

「独立」はしかし、バラ色の理想郷でもありません。

オープンソースの資金調達や持続性は永遠の課題で、

“I was skeptical of the ‘donation’ based sponsorships … and corporate sponsorship means constantly working to find new companies, fighting legal and accounting in every new sponsor…justifying the value (ugh)…”

と語っています。

幸いにも、meshoptimizerはValveから開発スポンサー支援を打診され、理念とロードマップが一致した「負荷の少ない」形で成り立っている。
ただし「単一スポンサー依存」のリスクへの自覚も明言しています。

また、Godot・Bevy等の有名OSSエンジンへの貢献や、Luauの最適化にも取り組みつつ──この姿勢自体、「プロジェクト単体」ではなく「生態系」全体の健全化に高い意識があることが伺えます。


教育的活動と自己アップデート——Vulkanレンダラー「niagara」再始動

彼はまた、教育的価値や自身の実装力向上のため、YouTubeライブ配信で「niagara」というVulkanベースの3Dレンダラー開発も継続。

“The project now loads glTF scenes, uses bindless texturing, deferred shading, HW raytracing with soft(ish) shadows, with many other things planned for the future, time permitting :)”

近年のリアルタイムグラフィクス技術(レイトレーシング、バインドレス、テンポラル技法…)を“自身の手でキャッチアップし直す”実験環境とし、外部公開も続けています。

コミット量・開発頻度・多様なフィードバック獲得──どれも「組織に頼らず、自力で高難度な創作に挑む」醍醐味と苦労が伺えます。


“やりたいこと”をやる──独立という名の「豪遊」

記事の終盤、彼はこう結びます。

“I think more and more I appreciate the incredible power that freedom and independence give you… ‘I am joining a company’ …less and less likely that you will see an announcement from me in the future. ‘I am starting a company’ is still on the table for now ;)”

「会社に戻る気は薄れた。でもスタートアップを作るのはありかも」と。

なにより大事なのは、

“by combining ‘work can be fun’ and ‘you can just do things’, we arrive at ‘you can just do work that is fun’. Hopefully for many years to come.”

「仕事は楽しいものになり得る。しかも“今やりたいこと”を突き詰めていい――これ以上の贅沢はない」。


専門家が“独立”から読み取るべきもの—意志・情熱・持続性

この記事で浮かび上がるのは、

  • 自分の関心を最優先する「贅沢な自由」
  • 社会や産業界との“ほどよい距離感”の維持
  • 挫折も含めてコントロール可能な「自分主導」のキャリア設計
  • そして、資金・社会的価値・面白さが交差する生身の悩み

です。

ゼロイチ需要や“世界を変える起業家”だけでなく、「自分が理解したい・作りたい・楽しいと思える仕事」にベストを尽くすという生き方も、十分に価値があります。

たとえばOSSや技術解説、教育的コミュニティへの継続貢献も、直接的な収益に結びつかなくとも、「業界の深度」を底上げし続ける意味で不可欠です。

また、この記事が証明するのは、「自分起点でものを創る」人は、業界構造や流行に左右されず健全な批判精神を保てるという事実です。


“自分らしい道”を歩む勇気と楽しさを

ここまで読んで、あなたの「理想の働き方」や「将来の選択肢」は少し広がったのではないでしょうか。

独立は甘くも苦くも、最終的には「自分がどうしたいか」「何にワクワクするか」という、極めて根源的な問いを突きつけてきます。

自分らしいペースで、納得いく価値を生み出す方法に悩むすべての人に、この記事は優しい肩入れをしてくれるはずです。

最後に――「今やりたいこと」に勇気を持って飛び込んでみませんか。
もしかしたら、想像以上に「自分のための楽しい仕事」が待っているかもしれません。


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